デンタルコラム

当院が自費診療をご提案する理由について

こんにちは、院長の奥田裕太です。

先日のお知らせで、

  • 日本の平均寿命が保険医療がスタートした1961年から20歳近く伸びている。
  • これに伴って私たち医療従事者が患者様のお口の健康を守る期間が伸びている。
  • にもかかわらず、保険適用の被せ物や詰め物の素材は、数十年前と同じ金銀パラジウム合金(いわゆる銀歯)のままである。

ということをお話ししました。

実はこうした状況は、被せ物・詰め物に限りません。というのも、内科や外科などの医科とは違い、歯科の「保険診療」は数十年前からほとんど変わっていないのです。

だから歯医者が患者様のお口の健康を守るためには、ある程度自費診療をご提案せざるを得ない、というのが現状です。

以下では医科と歯科における「保険診療」の違いについてご紹介することで、当院が自費診療をご提案する理由について、より深く掘り下げていこうと思います。

目次
  1. 医科と歯科における保険診療の違い
  2. 歯科の保険診療も少しずつ変わってきているが……
  3. まとめ

医科と歯科における保険診療の違い

医科と歯科における保険診療の大きな違いは、医科の方が最新の治療に保険が適用されやすく、歯科の方が適用されにくい傾向がある、という点です。

これには色々と理由があるのだと思うのですが、そのうちの一つとして「歯科の方が選定療養が幅広く認められているから」という点があげられます。

選定療養とは、患者様が自ら選定できる治療という意味です。

例えば虫歯ができた時の詰め物は、保険適用の素材でもできますが、適用外の素材を選ぶこともできます

その場合、適用外の素材の費用だけが10割負担(自費診療)となり、その他の基礎的な治療について3割負担(保険診療)となります。

選定療養の内容は厚生労働省によって、以下のように決められています。

・特別の療養環境(差額ベッド)
・歯科の金合金等
・金属床総義歯
・予約診療
・時間外診療
・大病院の初診
・小児う蝕の指導管理
・大病院の再診
・180日以上の入院
・制限回数を超える医療行為
引用:厚生労働省

歯科は言ってしまえば、一診療科にすぎません。にもかかわらず、10種の選定療養のうち3つが歯科特有の治療になっているのです。

幅広く認められていると言えば、メリットのように思えるかもしれません。しかし広い視野で見ると問題が見えてきます。

例えば、先日のお知らせでも触れている通り、現在の保険適用の詰め物の素材には、多くの問題が見つかっています。

しかし選定療養として患者様が詰め物の素材を選べるようになっているので、最新の素材になかなか保険が適用されにくいのです。

院長 奥田

歯科の病気が医科の病気に比べて、命への直接的なリスクが小さい、と考えられがちなことも、影響がありそうです。

また、医科と歯科の現状は、日本の国民医療費の膨張にも一因があると思われます。

厚生労働省の資料によれば、2018年の国民医療費の合計は43兆円超です。この数字は毎年数%ずつ上昇し、2008年からの10年間で10兆円近く増加しています。

放っておくと国民皆保険制度が崩壊してしまうので、国は様々な対策を講じてきました。

そのうちの一つが、負担割合の拡大です。もともと国民皆保険は、0割負担からスタートした制度でしたが、1984年に1割、1997年に2割、2003年に3割とどんどん負担割合が増えてきました。

近年では75歳以上の高齢者の方のうち、一定以上の収入がある人の負担割合も1割から2割に拡大しています。

年々医療費が上がっていくのにもかかわらず、保険料を払う日本人の人口は減ってきているのですから、何かしらの策を打つ必要があるのです。

例えば私であれば、医科の新しい治療法などに保険を適用し、命に直接関わる分野により多くの医療費を分配します。

一方で、命に直接関わらないように思える分野である歯科(この考え方には色々と言いたいことがありますが)に対しては、基本的な治療に保険を適用しておいて、新しい治療法などには選定療養の枠を多めに設けることで対応するでしょう。

確かに、今の日本の状況を考えれば、医科と歯科の現状にはいたしかたない部分もあります。しかしこれにより、研究などで明らかにされている最新の事実や技術が、保険診療として認められにくくなっているのだとしたら……。

患者様のお口の健康を一生涯守り、クオリティ・オブ・ライフを高めるお手伝いをしたいと考えている一人の歯医者としては、「もっと良い治療があるのに」と遺憾に思わざるを得ないのです。

歯科の保険診療も少しずつ変わってきているが……

確かに、歯科の保険診療にも良い変化は見られます。

例えば、昨年4月から歯周病を発症していない患者様に対しても定期検診ができるようになったことは、一歯医者としてとても嬉しい出来事でした(詳しいお話はこちらのコラムでも書きました)。

というのも、虫歯があったらそれを削る、奥歯のない人には入れ歯を作る、といった対症療法だけでは、患者様のお口の健康を一生涯守るのは難しいからです。

永久歯は一度失うと二度と生えてくることはありません。歯科の治療は内科などの感染症と違って、薬を飲んで安静にしていれば元の体に戻れる病気ではなく、癌や腫瘍の治療のように悪い所を切除し、代用品で補うというものがほとんどです。

残念ながら、今まで歯科の保険診療はこうした「侵襲(体への影響)」が大きな、対症療法がメインだったのです。

しかし、定期的に検査を受けたり、きちんとお口の健康を管理したりすることで、病気になっても初期段階で発見できれば、体に負担のかからない治療で対応することは十分可能なのです。

もちろん、まだまだ予防歯科が当たり前になるには多くの制度改革が必要ですが、昨年4月の制度変更は、そのための大きな一歩になるのではないかと期待しています。

まとめ

歯科の病気も、医科の病気と同様に、予防と早期発見が大切です。その意味では昨年4月の制度変更は喜ぶべきことでしょう。

しかしながら、いまだ歯科における「保険診療」では、きちんと治せない病気がまだまだあります

もちろん対症療法的な治療をすることもできますが、それでは当院が掲げている「患者様のお口の健康を一生涯守る」というモットーを実現するのは至難の技です。

だから当院では、できる限り保険の範囲内でしっかり治療をしたうえで、状況に応じて、自費診療を含めた最善の治療を提案・提供させていただきたいと考えているのです。

院長 奥田

私どもの考え方をご理解いただいたうえで、歯医者と患者様が二人三脚となってお口の健康を守っていければと考えております。よろしくお願いいたします。

診療内容

当院について

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院長紹介

奥田 裕太

1982年生まれ。大阪十三で「おくだ歯科医院」を経営。大切にしているのは「患者様と一緒に悩み、一緒に成長し、笑える、二人三脚の治療」。

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