インプラントに対応している歯科医院は、看板に「インプラントセンター」という肩書きをかかげています。おくだ歯科医院も「歯周病・インプラントセンター」の一つです。
インプラント手術に興味を持った患者様は、「ではどこのインプラントセンターで手術を受けようか」と思うはず。
そこで選ぶ基準になるのが実績ではないでしょうか。
しかし実績を基準にインプラントセンターを選ぶのは、半分正解で半分間違いです。
正解である理由はインプラント手術を成功させるには技術が必要で、その技術は実績を積むなかではじめて身につくものだから。
間違いである理由は、ホームページなどで公表されている数字を鵜呑みにしてはいけないケースがあるからです。
ここでは、インプラントセンターの実績が信頼できるかどうかを見極めるためのポイントについて、お話ししようと思います。
インプラント手術の技術は経験のなかでしか身につかない
麻酔を施し、歯茎を切り開く。インプラントを埋め込んだあと、歯茎を元どおり縫合する。
こうした施術を行うインプラント手術は、立派な外科手術の一つです。
そのためインプラント手術を成功させるためには、歯科医師の確かな技術力が必要です。
この技術力は経験を積み重ねるなかでしか磨くことができません。
- 顎の骨の形
- 歯の形、状態
- 神経の場所
- 上顎洞(目の下の頬にある空洞)の大きさ など
インプラント手術の成否に大きくかかわってくるこれらの要素は、すべて患者様ごとに違います。
その違いにケースバイケースで対応し適切な処置をするためには、経験を積み、歯科医師としての引き出しを増やしておかなければなりません。
したがって、インプラントセンターを選ぶ際はまず実績がどれくらいあるかをチェックするべきなのです。
「多すぎる実績」には注意が必要
当院は「最低5年間以上(できれば10年以上)インプラント治療をしており、年間症例10例以上をこなしている」がインプラントセンター選びの基準になると考えています。
「え、それだけでいいの?」と思った人もいるかもしれません。
たしかに世の中には「年間数千本」といった実績を掲げるインプラントセンターもあります。
しかし多すぎる実績には注意が必要です。
なぜなら「今ある歯をいかにして残すか」という歯科治療の大前提を守って、一人一人の患者様のお口と向き合っていれば、年間数千本もインプラントを埋め込む必要はないはずだからです。
ではなぜ年間数千本もの実績になるのか。
これは多すぎる実績を掲げる歯科医院が、本来抜かなくていい歯や抜くべきではない歯までインプラントにしている可能性があるからです。
正直なところ「インプラントをしないで済む方法」を考えるより、「とりあえずインプラントを埋め込む」のほうが儲かります。
インプラント手術は保険適用外の治療で、歯科医院が自由に価格を設定できるため、保険適用の治療に比べて圧倒的に儲けが大きくなるからです。
でも自分たちの利益を最優先に考えているようでは、患者様のお口の健康は維持できません。
ときにはインプラントという人工物を埋め込むのではなく、患者様自身の歯を残しながら治療していくほうが良い場合もあります。
このように考えると、実績が多いほど良いというわけではないことがお分かりいただけると思います。
だから多すぎる実績を掲げるインプラントセンターには注意が必要なのです。
当院には、他の歯科医院で必要のないインプラントをたくさん埋め込まれて、お口のなかが悲惨な状態になっている患者様も多く来院されます。こうした患者様はまさに被害者だと思います。
実績には歯科医師としての「努力」も含まれる
インプラント手術の技術は今もどんどん進歩しつづけており、より患者様にとって安全で、かつインプラントが長持ちする手術方法が生み出されています。
しかしそれらの技術をすべての歯科医師が知っているわけではありません。
実は歯科医師には免許更新制度がないので、一度免許を取得してしまえば特に勉強をしなくとも歯科医師として働き続けることができます。
またインプラント手術は、インプラントメーカーの簡単な講習を受ければ施術してよいという決まりになっています。
したがって、ただインプラントを埋め込むだけなら特別な勉強や努力は必要ないのです。
しかしそれでは、患者様にとってより良い治療を提供することはできません。だから当院は歯科医師としての「努力」も実績に含めるべきだと考えています。
その努力とはすなわち、学会に所属して第一線で活躍する歯科医師たちと情報を共有したり、学会の認定医資格を取得したりすることです。
歯科系の学会には「アメリカ歯周病学会」「日本歯内療法学会」など様々なものがあり、所属するためには学会への参加だけでなく、定期的な研究発表などの条件をクリアしなければなりません。
具体的な条件は各学会で変わるものの、基本的にはどこの学会でも研究の最前線に身を置く者としての勉強や努力が求められます。
学会の認定医資格を取得するとなると、ただ努力するだけでなく、現場で実績を残す必要も出てきます。
例えば「日本顎咬合学会」の認定医になるためには、満4年以上の実務経験、3年以上の学会員歴のほか、学会実施の試験への合格などが必要です。
こうした努力は「患者様により良い治療を提供したい」という想いがなければできないものです。
だからこそ「学会に所属しているかどうか」「認定医資格を取得しているかどうか」も、年間症例数などの実績と同じように、インプラントセンター選びの基準にして欲しいと思っています。
歯科医院の仕事と並行しながら勉強や研究を進めるので、強い想いがなければ学会に所属し続けるのも難しいんです。
信頼できる実績かどうかを見極めてください
私たち人間は生きていく限り、基本的には口から食べ物を食べる必要があります。インプラント手術はその口の健康を取り戻す手段の一つです。
そのためインプラント手術の結果は、患者様のQOL(クオリティ・オブ・ライフ、人生の質)にダイレクトに影響します。
だから当院は、必要のないインプラント手術をして実績の数ばかりを増やしたり、歯科医師免許にぶら下がって施術したりしていいものではないと思っています。
しかし残念ながら、そういうことをする歯科医師や歯科医院がないわけではありません。
そのため、インプラントセンターを選ぶ際にはその歯科医院の実績が信頼できる実績かどうかを見極めてください。
それがご自分のお口と、ひいては人生を守る自衛策にきっとなるはずです。
プロが考える「歯医者の選び方」まとめでは、当院スタッフの歯医者の選び方を紹介しています。ぜひあわせてご参考ください。