歯というものは一生涯に渡って毎日使うものです。
歯科治療を受ける際はメリットだけでなく、デメリットの部分もきちんと理解したうえで判断する必要があります。
インプラント治療も例外ではありません。
ここではインプラントのメリットとデメリットについて解説するとともに、デメリットを解消するためにどんな歯科医院を選ぶべきかについても説明したいと思います。
インプラントのメリット
インプラント治療は顎の骨を土台にして、人工歯をしっかりと固定して埋め込むことができる技術です。
これにより、インプラント治療には他の治療方法にはない様々なメリットが生まれています。
- 残っている自分の歯を傷つけずに済む
- 骨吸収の進行を遅らせることができる
- 自然な食感で噛めるので、食事をより楽しめる
- 見た目を気にせずに話したり、笑ったりできる
- 左右の噛み合わせのバランスがとれる
以下ではそのうち上記の5つを紹介します。
残っている自分の歯を傷つけずに済む
例えば「ブリッジ」と呼ばれる治療方法は、なくなってしまった歯の両隣の健康な歯を削り、これを「支台歯」として人工歯を固定します。
部分入れ歯の場合も、バネのかかる歯は少し削ることになります。
一方で、インプラントは土台の骨に独立して埋め込まれるので、残っている歯を傷つける必要がありません。
健康な自分の歯は、一度削ってしまえばもう元には戻せませんが、インプラント治療ならそんな心配は無用なのです。
骨吸収の進行を遅らせることができる
人間の骨は刺激を与えられなくなると、もろくなったり、分解されて他の細胞の材料になったりしてしまいます(骨吸収)。
ブリッジや入れ歯は骨とは直接繋がっていないため、食事をしていても噛む力が顎の骨に伝わりません。
すると歯のない部分で骨吸収が起こってしまい、骨が痩せていってしまうのです。
インプラントの場合は骨に直接噛む力が伝わるので、ブリッジや入れ歯の場合に比べて骨を長持ちさせることができます。
長生きをしていつまでも自分の口で食事をしたい人にとって、これは大きなメリットと言えます。
自然な食感で噛めるので、食事をより楽しめる
インプラントは安定感も非常に高く、食べ物を噛むときの食感も、自分の歯で食べた時とほぼ同じです。
部分入れ歯や総入れ歯は安定しないので、どうしても噛む力が弱くなったり、食事中にずれたり、外れたりすることもあります。
せっかくの美味しい料理を「入れ歯がずれたり、外れたりしたら嫌だからゆっくり噛もう」などと考えながら食べるのは、楽しいものではありません。
インプラントならこうした不安に煩わされずに食べることに集中できるので、食事をより楽しむことができます。
見た目を気にせずに話したり、笑ったりできる
部分入れ歯の場合、装着時にどうしてもバネが目立ってしまいます。
そのため大きな口を開けて話したり、笑ったりすることをためらう人もいます。
しかしインプラントにバネはなく、基本的にセラミックなどの自然の歯に近い見た目の素材を使うため、見た目にほとんど違和感がありません。
話すことも、笑うことも、人生を楽しむためには必要不可欠です。そこでストレスを感じずに済むというのは、大きなメリットと言えるでしょう。
左右の噛み合わせのバランスがとれる
体全体で見れば歯は小さな部位ですが、実は体全身のバランスに深く関わっています。
そのため左右の噛む力が違うと、体全体の左右のバランスが崩れ、肩こりや頭痛、顔の歪みなどにもつながります。
インプラントは自然の歯に近い力で噛めるため、左右の噛み合わせのバランスを整えることができます。
インプラント治療は「自分の歯で生きる人生」を守る技術であり、話したり、笑ったり、食べたりといった人生を楽しむうえで大切な活動をサポートする技術でもあるのです。
インプラントのデメリット
こうしたメリットに対し、インプラント治療には次のようなデメリットがあります。
- インプラントがくっつかずに脱落してしまう場合がある
- 外科処置だからこそのリスクがある
- 術後に周辺の骨がなくなってしまう場合がある
- 「インプラント周囲炎」になる場合がある
以下ではこれらについて、一つずつ説明していきます。
インプラントがくっつかずに外れてしまう場合がある
インプラント治療は、人工物と骨を直接結合させる治療です。
そのため患者様の体がインプラントを「異物」と判断し、拒絶した場合、インプラントがくっつかずに外れてしまうことがあります。
インプラントが正しく骨と結合する確率は平均で98〜99%。インプラントの材質や品質、患者様の体質や歯科医師の技術などによって結合の可否は変わってくるものの、少なくとも100%ではありません。
おくだ歯科医院でも数年前に統計をとったところ、埋め込んだインプラント1,284本に対し、骨と 結合しなかったものは9本でした。確率にすると99.3%の成功率ということになります。
外科処置だからこそのリスクがある
インプラント治療は、歯茎を切り開いたり、縫合したり、人工物であるインプラントを埋め込んだりと、立派な外科処置です。
全ての外科処置には想定外のリスクがつきもので、それはインプラント治療も同様です。
例えば想定外の事態が起きて器具で血管や神経を傷つけたり、顎の骨を突き破って頬の下にある「上顎洞」を傷つけてしまったりすると、術中の出血のほか、術後の痛み、腫れ、出血、しびれ、傷の化膿などの合併症を引き起こすおそれがあります。
原因としては治療計画の段階で、骨格や血管、神経などの位置を把握できていないケース、手術室や器具などの消毒が不十分なケース、患者様に正しい歯磨きの指導を行えていないケースが考えられます。
あるいは、単純に歯科医師の技術不足というケースもあります。
術後に周辺の骨がなくなってしまう場合がある
「辺縁骨吸収」と言って、インプラント治療の術後にインプラント周辺の骨がなくなってしまう場合があります。
原因としては、術中の外傷や度重なる再手術、インプラントを深く埋め込みすぎた場合などが挙げられています。
このほか、次に紹介する「インプラント周囲炎」がもととなって、骨がなくなるケースもあります。
「インプラント周囲炎」になる場合がある
もし「インプラントは一生もの。歯磨きもいらない」と考えているのであれば、大きな間違いです。
インプラントは天然の歯に比べて細菌が繁殖しやすく、メンテナンスを怠ると周辺に歯周病菌が増殖し、歯肉炎や歯周病が発症してしまいます。
事実、日本歯周病学会の調査によれば、インプラント治療を受けた患者様の約30%にインプラント周囲粘膜炎(歯肉炎)が発症しており、約10%にインプラント周囲炎(歯周病、歯槽膿漏)が発症していることがわかっています。
インプラント周囲炎の大きな原因の一つは、患者様自身が歯磨きやデンタルフロスによるセルフケアを怠ることですが、残念ながらセルフケアだけでこの病気を予防することはできません。
そのため歯科医院側がリコール(定期検診)システムを確立しておらず、プロケア(歯科医院にて行うケア)を行えていないことも原因と言えます。
リスクを最小化するためには「万全の対策」が必要
これらのデメリットが生じる可能性を引き下げるためには、歯科医院が万全の対策を整えておく必要があります。万全の対策とはすなわち、次の4つを指します。
- 綿密な治療計画
- 計画を実行する技術の研鑽
- 最適な手術環境
- リコール(定期検診)システムの確立
以下ではそれぞれの内容と、これらの対策を施すことで何を防げるのか、おくだ歯科医院ではどのような措置をとっているのかについて説明していきます。
綿密な治療計画
歯を含む骨の状態、歯周ポケットの深さ、生活習慣などを加味したうえで、「生涯を通じたお口の健康」を実現するためにどんな治療が必要で、それにはどれくらいの期間が必要か……これらを決めていくのが治療計画です。
治療計画がしっかりしていれば、術中の「想定外」がなくなるため、前述したような外科的なリスクを低減することができます。
辺縁骨吸収の主な原因である術中の外傷や再手術、「土台となる顎の骨が少なすぎた」「インプラントを深く埋め込みすぎた」といった事態の防止にもつながります。
歯周病を直さないままインプラントを埋め込むとインプラント周囲炎の原因になりますが、治療計画が万全なら、それも起きにくくなります。
的確な治療計画が立てられるかどうかは、歯科医院としての実力と誠実さが問われます。そのため当院では、
- 大量のお口や笑顔の写真
- 歯に合わせた14枚のレントゲン
- (必要な場合は)CTやお口の中の模型の作成
- 実際の診察
これらをもとにスタッフ全員で最適な治療を検討し、治療計画を設計していきます。
計画を実行するための技術の研鑽
どんなに素晴らしい治療計画が作れたとしても、計画を実行できる技術がなければ意味がありません。
おくだ歯科医院では、歯科医師や歯科衛生士は自主的に学会や勉強会に参加しています。
また、歯科助手や受付を含む全スタッフがオリジナルの教育システムに基づいて育成・評価される環境を整えています(詳しくはおくだ歯科医院のスタッフ教育システムについて)。
スタッフの技術が伴っていれば、治療計画の段階でミスを犯したり、術中に手元が狂ってトラブルを起こしたりする可能性が低くなります。
また術後の定期検診は主に歯科衛生士が行いますが、その際に異変を見逃すリスクを引き下げることもできます。
歯科医師にしろ、歯科衛生士にしろ、免許更新制度はありません。
しかし患者様に適切な治療を提供するためには、技術の研鑽は必要不可欠なのです。
最適な手術環境
合併症や感染症のリスクを低くするためには、手術環境を整える必要があります。
執刀する歯科医師や歯科衛生士などが清潔を保つのはもちろん、器具や手術室の滅菌も必要です。
当院では施術の前後にしっかりと時間を確保して、人・器具・手術室の滅菌を確実に行っています。
また適切な治療計画を立てるための設備や、インプラントの脱落を防ぐための設備も重要です。
例えば当院では歯科用デジタルレントゲンや歯科用CTを導入しているほか、インプラントの接着力を高める「インプラント紫外線照射器」もいち早く導入してきました(当院が導入している設備については設備紹介)。
リコール(定期検診)システムの確立
一人一人の患者様に定期検診を行い、異常が見つかれば、早期に適切な治療を行う。これがリコールシステムです。
お口の病気は重症になるまで自覚症状が出ないため、「異変を感じてから歯科医院に来てもらう」というやり方ではどうしても手遅れになってしまいます。
しかし、リコールシステムが確立されていれば、インプラント周囲炎やインプラントの脱落などが起きていても早期に対応できるというわけです。
おくだ歯科医院では治療が終わった後も、患者様一人一人に定期検診プランを提案し、患者様のご協力のもとでリコールシステムを確立しています(当院のリコールシステムについては定期検診の実施)。
こうした対策を施していても、デメリットを100%解消できるわけではありません。
しかし患者様のために、当院では限りなく100%に近づけるよう努力を続けています。
インプラント治療を受けるデメリット、受けないデメリット
ここで解説した4つ以外にも、費用や期間がデメリットになる場合もあります。
インプラント治療は保険外診療の扱いになりますから、保険診療に比べてどうしても費用が高くなります。
また手術前に歯周病をしっかり治していなければインプラント周囲炎のリスクが高まるため、歯周病治療のぶんだけ治療期間も長引くことになります。
このように考えると、インプラントをするデメリットが大きく思えるかもしれません。
しかし当院は「インプラント手術をしないリスク」の方が大きくなる場合もある、と考えています。
例えば左右いずれかの奥歯を虫歯で失うと、反対側の奥歯で食事をする回数が増えます。
するとこの奥歯を虫歯などによって失うリスクは、両方の奥歯がある人と比べて数倍に跳ね上がります。
奥歯を両方失えば、必然的に前歯への負担が増えますから、次は前歯を失う危険性が高まっていきます。
奥歯も前歯も失えば、患者様の生活の質は大きく低下せざるを得ません。
インプラント治療はこうしたリスクを解消し、「自分の歯で生きる人生」を守ることができる技術です。
そのため「デメリットがあるからインプラント治療は受けない」と一概に判断するのではなく、「デメリットを限りなく小さくしたうえで、インプラント治療を受ける方法はないのか」と考えてほしいのです。
まとめ
「デメリットを限りなく小さくしたうえで、インプラント治療を受ける方法」とは、前述したような対策を施している歯科医院を選ぶことです。
逆に歯科医院を「価格が安いから」「短期間で治療してくれるから」という理由で選ぶと、インプラント治療のデメリットは一気に大きくなってしまいます。
インプラント治療を検討する際は、くれぐれもご注意いただければ幸いです。
おくだ歯科医院は、インプラント治療のための万全の体制を整えています。お困りの際はぜひとも一度ご相談ください。
遠方の患者様で通院が難しい場合は、各地域の信頼できる歯科医師を紹介させていただくことも可能です。