みなさん、こんにちは。大阪十三のおくだ歯科医院、院長の奥田裕太です。
4月に書いたコラム、2024年6月の歯科診療報酬改定で、「子供」と「お年寄り」の予防歯科が強化されましたでも紹介したように、今回の改定では重症化予防、口腔機能管理へと国が大きく舵を切りました。従来の、
- 虫歯を削る
- 歯周病になった歯を抜いて、入れ歯に換える
といった、治療が中心の歯科からの脱却が大きく進んだ印象です。
今回のデンタルコラムではそうした歯科診療報酬改定のうち、「ライフステージに応じた口腔機能の管理の推進」(引用:厚生労働省)の対象となっている、「飲み込みにくい」「むせやすい」などの症状についてお話したいと思います。
口腔機能発達不全症と口腔機能低下症
「飲み込みにくい」「むせやすい」などの症状は、通常正常に働くはずのお口の機能(口腔機能)が低下、もしくは未発達な場合に現れます。
このような症状が見られる病気のうち、18歳以下に見られるものを口腔機能発達不全症、高齢者をはじめとする成人に見られるものを口腔機能低下症と呼びます。
以下のような症状が現れている場合は、口腔機能発達不全症もしくは口腔機能低下症の可能性があります。
口腔機能発達不全症の一般的な症状 | 口腔機能低下症の一般的な症状 |
・授乳やご飯を食べるのに時間がかかったり、うまく食べられなかったりする ・口を閉じにくかったり、舌が口の外に出てしまったりする ・噛む力が弱かったり、好き嫌いが多かったりする ・飲み込みがうまくできなかったり、食べ物が気管に入ってしまう場合がある ・言葉がはっきりしなかったり、発音がうまくできなかったりする ・口で呼吸をしていたり、口の周りの筋肉の力が弱かったりする | ・食事の際に、噛む力が弱くなったり、食べこぼしが多くなったりする ・口の中が乾きやすくなったり、味がわかりにくくなったりする ・飲み込む力が弱くなったり、食べ物が気管に入ってしまう可能性が高くなる ・舌や口の周りの筋肉の力が低下する ・言葉の発音がうまくできなくなることがある ・口の中の自浄機能が低下し、口臭が出やすかったり、歯周病になりやすかったりする |
当院では高齢の患者様が多いこともあり、口腔機能低下症の兆候が見られる方が多い傾向があります。
口腔機能低下症を放っておくと……
これまでの歯科診療報酬制度では、口腔機能低下症に対する指導・訓練は、保険診療では認められていませんでした。
なぜなら治療の必要性という観点から言えば、口腔機能低下症には痛みなどの強い症状はなく、慢性的な症状が中心だからです。
しかし口腔機能低下症は放置すると、以下のような状態を引き起こし、結果的に健康寿命を縮めてしまう厄介な病気です。
- 食事がしにくいため、食事量が減り、体力が低下しやすくなる
- 発音しづらく、上手に食事ができないため、人との接触を避けるようになる
- 社会的なつながりが薄れることで、口腔機能を含む身体機能の低下が加速する
- 孤独が原因で、喫煙量・飲酒量などが増え、生活習慣病のリスクが高まる など
このような事態に陥らないためには、早い段階で信頼できる歯科医院で検査を受け、適切な対応をとる必要があります。
口腔機能低下症の検査
口腔機能低下症の検査では、専用の器具などを使いながら以下の7つの項目をチェックしていきます。この7つの検査のうち、3つ以上で基準数値を下回った場合、口腔機能低下症と診断されます。
- 口腔の衛生状態の検査:特に舌の汚れを診査します。
- 口腔の乾燥状態の検査:唾液の量とお口の中の湿度を調べます。
- 咬合力低下の検査:噛む力を調べます。
- 舌口唇運動機能の検査:発音がしっかりできるかを調べます。
- 舌圧の検査:ベロでしっかりと物を潰せているかを調べます
- 咀嚼機能の検査:物をしっかりと噛み砕けているかを調べます。
- 嚥下機能低下の検査:物をしっかりと飲み込めているか検査します。
大阪十三のおくだ歯科医院では、現状でも一部の検査には対応可能です。ですが、今回の歯科診療報酬改定を受け、こうした口腔機能低下症の検査を高い精度で行うための体制を、年内を目標に整えていく予定です。
口腔機能低下症の治療
口腔機能低下症の治療は大きく2つに分けられます。
口腔機能改善のための指導・訓練 | ・専用器具を使った舌圧訓練 ・噛み合わせ運動による噛む力の訓練 ・発音訓練 ・舌回し運動による舌の筋力トレーニング など |
噛み合わせ改善のための治療 | ・ブリッジ ・入れ歯 ・インプラント など |
当院では、口腔機能低下症を初期段階で見つけ出すとともに、これらの指導・訓練、治療を通じてお口の機能回復を目指します。
それが患者様にとっての食べることや友人たちとの会話の楽しみを守り、さらには健康寿命の延長に貢献できるのではないかと考えています。
まとめ
大人の方で、「飲み込みにくい」「むせやすい」などの症状が見られる場合は、口腔機能低下症の可能性があります。
口腔機能低下症は、放っておくとQOL(生活の質)を大きく下げるだけでなく、その他の身体機能の低下につながる恐れのある厄介な病気です。
今回の歯科診療報酬改定により、この病気に対する指導・訓練を保険診療に組み込まれたことで、当院も今まで以上に丁寧に患者様の症状と向き合うことが可能になりました。
口腔機能低下症の症状にお悩みの方は、ぜひ一度、大阪十三のおくだ歯科医院までご相談ください。
きちんとした指導を受け、訓練をすれば、口腔機能の維持・改善は可能です。単に「もう歳だから」で済ませず、信頼のおける歯科医院に相談されることをおすすめします。