デンタルコラム

患者様にとっての「より良い治療」のために———臨床歯周病学会42回年次大会

みなさん、こんにちは。大阪・十三のおくだ歯科医院、院長の奥田裕太です。

6月15日〜16日はお休みをいただき、ご迷惑をおかけしました。この2日間は、当院スタッフ全員で、日本臨床歯周病学会の第42回年次大会に参加してきました。

日本の歯科医師免許、歯科衛生士資格には更新制度がありません。そのため、一度取得してしまえば、その後はいつでもどこでも歯科の仕事ができます。

しかし「いい仕事」ができるかどうかは別です。

歯科医療の技術・知見は日々進歩しており、患者様にとっての「より良い治療」のためには、他の医師や歯科衛生士との情報交換を通じて、医療従事者としての腕と頭をアップデートしていく必要があると私は考えています。

このような意味において、第42回年次大会はとても有意義な時間でした。

今回のデンタルコラムでは、2日間に及ぶ学会でどのようなことを学んできたのかを、簡単にではありますが、シェアしたいと思います。

目次
  1. 歯科衛生士・太田が大活躍しました!
  2. 1日目のハイライトは、歯周病・インプラントの世界的権威による特別講演
  3. 2日目のハイライトは、歯科医師・歯科衛士合同シンポジウム
  4. まとめ

歯科衛生士・太田が大活躍しました!

臨床歯周病学会の年次大会は毎年スタッフ総出で参加する、みんなで楽しみにしている学会です。

去年の年次大会は、スタッフ全員で「日本臨床歯周病学会第41回年次大会」に参加しましたでも書いたように、コロナ禍で長らくインターネットのみでの開催が続いていたなか、久しぶりのオフライン開催が福岡行われました。

充実した学びの時間と、福岡名物に舌鼓を打った夜の懇親会。

数年ぶりのスタッフ全員での移動や宿泊が嬉しく、「みんなとこんなことしてましたね〜」「久しぶり過ぎて体もついていかないね」と笑い話もしていました。

それからはや一年。今回の年次大会は「大阪・関西Perio万博2024年」と題して、中之島にある大阪国際会議場という大きな場所での開催となりました。

最大で同時に4会場を使った、2日間にわたる大ボリュームのイベントです。

院長である私は、どうしても子供の父親参観があり、2日間のうち1日目の午前中は参加ができず、昼からの参加でしたが、この日の昼一番に、当院の歯科衛生士・太田が大活躍してくれました。

太田は、「新時代の歯周基本治療」と題した歯科衛生士向けのシンポジウムで、大阪・堂島の南歯科医院理事長、南昌宏先生とともに座長を務め、質疑応答まで立派にやり遂げたのです。

今回、初めて実行委員に任命いただいた太田でしたが、遅くまで講演内容や当日の打ち合わせなど、何回もミーティングを重ねて準備をしていた甲斐あって、まるで初めてとは思えないほどの名座長ぶりでした。

1日目のハイライトは、歯周病・インプラントの世界的権威による特別講演

全体で26ものプログラムがあった1日目は、太田が座長を務めたシンポジウムを含め、どれも素晴らしいものばかりでした。

「ペリオオルソ」と題した歯科医師向けの講演では、歯周病治療と矯正治療を組み合わせた症例の紹介が、「支部イチ推しセッション①」では、歯周病で失われた組織を取り戻すための再生療法を中心とした症例の紹介が行われました。

また、歯周病と歯内療法(歯の根っこの治療)との関係性を詳細な説明が行われた、「エンドペリオ・インプラント周囲炎」も大変興味深い内容でした。

私の中での1日目のハイライトは、歯周病・インプラントの世界的権威である、Giulio Rasperini先生の特別講演です。

Rasperini先生はミラノ大学・米国ミシガン大学で歯周病学教授として教鞭をとるかたわら、世界中の著名な歯周病学およびインプラント学協会で講師を務める人物です。

長年、歯周再生療法に携わってきたRasperini先生から、その歴史と今後の展開について詳しくご指導いただけた経験は、何ものにも代えがたい時間でした。

何よりも、レジェンドと言ってもいいキャリアであるにもかかわらず、今なお溢れる「より良い治療」への情熱に、私自身、強い刺激を受けました。

2日目のハイライトは、歯科医師・歯科衛士合同シンポジウム

2日目に実施されたプログラムは全体で19。

この日のプログラムはデジタル技術についてのものが目立ち、「歯周病学会でも、ついにここまでデジタルが入ってきたんだな」と感じさせられる1日でした。

歯科の未来 VRセッション」の講演編で行われた2つの講演では、まさにそのことを強く実感しました。

  • 東京・大阪に拠点を置くDental Prediction社の代表でありながら、歯科医師でもある、宇野澤元春先生による、VR(仮想現実)上で様々な治療のシミュレーションを行う技術の現在と未来についての講演。
  • AOI国際病院の口腔外科部長、田島聖士先生による、歯科エックス線画像を用いたAI開発についての講演。

この他、歯科医師向けのシンポジウム「天然歯及びインプラント周囲のテッシュマネージメント(※)」や、歯科医師教育講演② 「インプラント周囲炎」も大変勉強になりました。

また今回は初めての試みで、一般の方にもご参加いただける市民フォーラム「知らないと損!歯周病とからだの病気の意外な関係」も開催されました。

歯科医師の押村憲昭先生と糖尿病専門医の前田泰孝先生のプレゼンテーション、さらにこのお二人に、フリーアナウンサーの森たけしさん、元阪神タイガースの薮選手を加えたメンバーでのパネルディスカッションと、盛りだくさんの内容です。

多くの一般の方に歯周病と糖尿病との関係や、歯周病を放置することで起こる様々な全身への悪影響について、わかりやすく、楽しく、伝えてくれていました。

2日目の個人的なハイライトは、歯科医師・歯科衛生士合同で行われたシンポジウムです。

メインテナンスに移行できる条件」と題された本プログラムでは、京都の四条烏丸歯科クリニックの宮本泰和先生と歯科衛生士の小倉陽子さん、福岡の水上歯科クリニックの水上哲也先生と歯科衛生士の下田裕子さんが登壇されました。

いずれの方の発表も、現場に即した長期的な観点から、歯周病の患者様のメインテナンスや歯周再生療法について論じられたもので、大いに興味をひかれる内容でした。

このプログラムは学会内での注目度も高かったのか、参加者はなんと3,000人超。当院のスタッフも食い入るように聞いていました。

※天然歯やインプラントの周囲にある、歯茎の再生や移植などのこと

まとめ

歯科医療において、現場の重要性は言うまでもありません。

私たち歯科医療従事者にとって、何よりも大切なのは目の前の患者様を救うことであり、日々当院に通ってくださる患者様のお口の健康を、生涯にわたって守り抜くことです。

しかし一方で、今回の学会のように、新しい技術や知見を学んだり、多くの先生方と直接お会いし、交流することで刺激を受けたりすることは、患者様にとってのより良い治療を提供していくために、必要不可欠だと考えています。

時間の都合上、当日拝聴できていない講演などもあるため、会員向けに7月10日~8月20日の期間公開される、オンデマンド視聴をするのが今から楽しみです。

お休みをいただいて患者様にはご迷惑をおかけしましたが、今回学んだことを患者様に還元できるよう、これからも努力していきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

院長 奥田

大阪・十三のおくだ歯科医院では、こうして学んだことを取捨選択し、患者様一人ひとりにとってベストだと思われる治療を提案しています。場合によっては自費診療を積極的におすすめすることもありますが、あらかじめご了承のほどお願いいたします。

診療内容

当院について

デンタルコラム

院長紹介

奥田 裕太

1982年生まれ。大阪十三で「おくだ歯科医院」を経営。大切にしているのは「患者様と一緒に悩み、一緒に成長し、笑える、二人三脚の治療」。

詳しく見る