デンタルコラム

その親知らず、本当に抜かなくてもいいですか?患者様に知っておいて欲しいこと

みなさん、こんにちは。大阪十三のおくだ歯科医院、院長の奥田裕太です。

このデンタルブログをお読みの方の中には、

  • 親知らずに痛みがあるものの、抜歯をしたくない方
  • 歯科医院で親知らずを「抜かなくても大丈夫」と言われたものの、不安を感じている方

なども多いのではないでしょうか。実際、当院の患者様からも「親知らずは抜いたほうがいいですか?」というご質問は少なくありません。

私としては、患者様のお口の状況によって千差万別ではあるものの、親知らずを抜かなくていい場合は少ないと考えています。

今回のデンタルブログでは、私がなぜそう考えるのか、抜かなくていい場合はどんなケースなのかなどについて、簡単に説明したいと思います。

※記事の後半にお口の中の写真を掲載しております。苦手な方やお食事中の方はあらかじめご注意ください。

目次
  1. 「親知らずを抜かなくていい場合」は少ない
    1. そもそも、きれいに生えてくることが少ない
    2. 戦後80年で日本人は顎が小さく、歯が大きくなった
    3. 親知らずの放置は、お口全体のリスクになる
  2. 「20〜30代で、きれいに生えている・歯茎の中に埋まっている」なら抜かなくてもいい
    1. 親知らずを抜かなくていい場合
    2. 親知らずの自家歯牙移植について
  3. まとめ

「親知らずを抜かなくていい場合」は少ない

そもそも、きれいに生えてくることが少ない

現代の日本においては、親知らずを抜かなくていい場合は少ないと私は考えています。特に50代以上の方であれば、積極的に抜歯をおすすめするケースがより多くなります。

なぜなら現代では親知らずがきちんと顎の中に収まって、きれいに生えてくることのほうが少ないからです。

多くの場合が、顎の中に収まらずに横向きに生えてきたり、半分歯茎の中で埋まった状態のままになったりするものです。また、真っ直ぐに生えていても歯ブラシが届かず、きれいに磨けないケースもあります。

戦後80年で日本人は顎が小さく、歯が大きくなった

戦後の80年間で私たち日本人の食生活は大きく変化し、栄養状態が改善するとともに、柔らかい食べ物を中心に食べるようになってきました。

その結果として顎の骨や筋肉が小さくなると同時に、歯が大きくなってきたと考えることができます。

顎が小さくなり、歯が大きくなっているにもかかわらず、多くの人の歯の本数は変化していません(若い世代には親知らずが生えてこない方もいます)。

だから最も奥に生える親知らずがきれいに生えてくることができなくなっている、というわけです。

親知らずの放置は、お口全体のリスクになる

横向きに生えてきたり、半分歯茎の中に埋まったままになったりすると、隣の奥歯と間に食べかすや雑菌が溜まりやすくなって、虫歯や歯周病の温床になります。

生え方によっては、親知らずが隣の奥歯をぐいぐいと圧迫して痛みを感じることもあります。

放置をすれば、

  • 虫歯が悪化して痛みが出る
  • 歯周病が悪化して歯が抜ける
  • お口全体の健康を損なう など

の悪影響を及ぼすリスクが高まるため、当院では抜歯をおすすめすることが多いのです。

こちらのレントゲン写真は、下顎の左右の親知らず(青い丸)を抜歯せずに生活を続けた結果、噛み合わせの関係で上顎の左右の奥歯に負担がかかり(赤い矢印)、右上奥歯は神経を抜いた状態、左上奥歯は抜歯してインプラントを埋め込んだ状態になっていた患者様のお口の中です。

この患者様の場合、失われてしまった上顎の奥歯以外はいたって健康な状態でした。歯磨き等のメンテナンスがきちんとできている証拠です。

そのため、初期の段階で親知らずを抜いていれば、奥歯は左右ともに健康的に使えていたはずだと私は考えています。そうすれば高い費用をかけてインプラントを埋め込む必要もなかったでしょう。

このように無理に親知らずを残すと、お口の健康という面でも、治療費という面でも、デメリットが大きくなってしまう場合があるのです。

「20〜30代で、きれいに生えている・歯茎の中に埋まっている」なら抜かなくてもいい

親知らずを抜かなくていい場合

一方で、年齢が20〜30代であり、かつ専門家から見て親知らずがきれいに生えている、もしくは歯茎の中に完全に埋まっている場合は、抜歯が必要ないと判断することもあります。

なぜなら将来他の歯にトラブルが起きた場合に、親知らずを使った移植手術(自家歯牙移植)が可能になるからです。

虫歯や歯周病、事故による外傷など、私たちの歯は溶けたり、抜けたり、折れたり、割れたりといったトラブルに見舞われる可能性があります。

このような場合でも健康な親知らずが残っていれば、その歯を使った自家歯牙移植を行うことで、インプラントや入れ歯を回避することができるのです。

親知らずの自家歯牙移植について

インプラントの寿命は限られており、当院でも最長で35年ほどの実績しかありません。20〜30代の方がインプラントをした場合に一生涯維持できるかどうかは今のところデータがないのでわからない、というのが現状です。

そのため私は、インプラントを行うのはできる限り50代以降に入ってからとし、20〜30代の方で、かつ健康な親知らずがある方の場合、親知らずを使った自家歯牙移植を治療の第一選択と考えています。

自家歯牙移植には成功率(移植後歯がしっかりと定着する確率)が80%と失敗のリスクがある、移植する親知らずが健康でなければ使えない、40代以降は成功率がさらに下がるなどのデメリットがあります。

しかし、体内に人工物を埋め込まずに済むことや、歯根膜という膜を介して歯と骨を結合することで物を噛んだ感覚がわかりやすいこと、保険診療で3割負担の場合5,000円程度で治療が受けられることなど、メリットもたくさんあります。

こちらの患者様は初診時、大きな虫歯で抜歯せざるを得ない状況でした(赤い丸の部分)。

しかしご年齢が若く、親知らずもきれいに残っていたため、患者様の同意のもと、親知らずを自家歯牙移植することにしました。(青い矢印の方向に移植)。

結果、入れ歯やインプラントを使わずに奥歯をきれいに治療することができました(青い丸の部分)。

このようなケースがあるため、当院では検査の結果メリットの方が大きいと判断した場合は、親知らずを残すというご提案をしています。

院長 奥田

とはいえ、先ほどご説明したように、やはり抜歯をした方がいい患者様が多いのが実際のところです。

まとめ

抜歯は誰しもが怖いものです。しかしたいていの場合、親知らずは抜いた方がいいのが実情です。無理に残すことで隣り合う歯や噛み合う歯を失ったり、連鎖的にお口全体の健康が損なわれたりする可能性があるからです。

当院の患者様の中には、斜めに生えた親知らずを放置して食事を続けた結果、顎関節症になってしまった方もいらっしゃいます(顎関節症についての詳しい内容は歯科医師が教える、顎関節症のセルフチェック方法などをご覧ください)。

一番危険なのは、「放っておいても大丈夫だろう」と自己判断をすること。お口の健康状態をご自身で判断することはできません。将来のお口の健康のために、また余計な医療費をかけないためにも、早い段階で専門家に診てもらうことをおすすめします。

院長 奥田

親知らずを抜くだけなら1本数千円で済みますが、インプラントなどが必要になれば比べ物にならない治療費がかかってしまいます。そうなる前に、信頼のおける歯科医院でお口の状態を診てもらいましょう。

診療内容

当院について

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院長紹介

奥田 裕太

1982年生まれ。大阪十三で「おくだ歯科医院」を経営。大切にしているのは「患者様と一緒に悩み、一緒に成長し、笑える、二人三脚の治療」。

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