一般的な病院(医科)では患者様が異なる病院を受診して「セカンドオピニオン」、すなわち複数の専門家の意見を求めることが珍しくなくなってきています。
しかし歯科医院(歯科)ではそういった認識が浸透していないように思います。なぜか「どこに行っても同じ」「だから近所で十分」というイメージが定着してしまっています。
ところが、歯医者と一口に言っても、知識も技術も経験も千差万別。専門分野も人によって様々です。インプラントの手術が得意な人もいれば、噛み合わせの調整が得意な人もいれば、虫歯の治療が得意な人もいます。
そのため、歯医者という看板を掲げていても、残念ながらわかることとわからないこと、できることとできないことがあるのです。
ではどうやって自分に合う歯医者を選べばいいのでしょうか。歯医者はコンビニよりたくさんあると言われるくらいですから、患者様が自分の基準で選ぶのは至難の技です。
そこで今回はおくだ歯科医院に勤める受付の田中、歯科衛生士の晋山と太田、そして院長であるわたくし奥田裕太が、それぞれ考える歯医者の選び方をまとめました。みなさまの歯医者選びの参考にしていただければ幸いです。
受付・田中が考える選び方
当院の受付のチーフを勤める田中は、歯医者の選び方の基準として歯の治療の技術に加え、以下の3つをあげています。
- 内科の血液検査の結果が理解できる。
- 全身のことを勉強している。
- 医科の先生を紹介でき、医科の先生が紹介してくれる。
「歯の治療と関係ないことばかりじゃないか」と思う方もいるかもしれません。
しかし糖尿病と歯周病の前半、後半でもご説明しているように、お口の健康と糖尿病や心筋梗塞は切っても切れない関係にあることが医科・歯科では常識になりつつあります。
そのため医科は歯科の、歯科は医科の知識を持ち、検査結果や診察などを通じて「これは歯科(医科)で診てもらった方がいい」という判断ができるかどうかが、いまや医療従事者の大切な役割の一つになっているのです。
だからこそ、歯の治療と関係のない知識やつながりを持っていることが、歯医者選びの基準になる、というわけです。
詳しい内容は【2020年9月】歯科医院で働く受付がお勧めする歯医者の選び方をご参照いただければと思います。
糖尿病や心筋梗塞、パーキンソン病や睡眠時無呼吸症候群などに心当たりのある方、または何年も健康診断を受けられていない方に、ぜひ読んでいただきたいコラムです。
歯科衛生士・晋山が考える選び方
当院の歯科衛生士・晋山は歯医者を選ぶ際、まず「自分がどんな歯医者に見てもらいたいか」を考えてみることをおすすめしています。例えば、
- 受けたい治療がある(インプラント、矯正、虫歯など)。
- ウィーンという機械音や痛みが少ないようにして欲しい。
- 清潔感のある環境で治療が受けたい。
- 優しそうな歯医者や、衛生士に治療して欲しい。
- 遠くても、電車で20分以内のところにある歯医者がいい。 など
です。技術の有無だけでなく、「自分が行きたくなるような歯医者はどんなところか?」という基準で選ぶことで、より長く付き合える歯医者を見つけることができるからです。
また、晋山はこの際に「お口の中のカラー写真を日常的に撮っているかどうか」を基準の一つに加えることをご提案しています。
というのも、この基準を満たすためにはカメラなどの高価な設備に投資をしたり、治療記録として残すための院内ルールを整備したり、スタッフへの教育をしたりと、様々な手間がかかるから。
したがって、「お口の中のカラー写真を日常的に撮っている」=「治療に誠実に向き合っている」と考えることができるのです。
晋山がご提案する歯医者の選び方についての詳しい内容は、歯科衛生士が考える「良い歯医者」を見つけるポイントを参照してください。
末長く通院したいと思える歯医者を見つけたい、という患者様にぜひ読んでいただきたいコラムです。
歯科衛生士・太田が考える選び方
当院の歯科衛生士・太田が歯医者の選び方の基準と考えるのは、「基本の治療+α」があるかどうかです。
基本の治療とは、「虫歯を見つけたら、削って詰め物をする」「歯周病を見つけたら歯石を除去する」といった治療のこと。
これに対して+αとは、歯医者や歯科衛生士などからのヒアリングを実施。食事や会話といった日々の生活の中での顎の動き、噛み癖を踏まえたうえで方針を立て、もし患者様に疑問や不安があるようなら、その都度解消していく。
そうした患者様と二人三脚でお口の健康の維持・改善を進めていくような治療です。
根本的な治療にはこの+αが非常に大切で、逆に+αの部分をないがしろにすると、虫歯や歯周病も再発しやすくなります。
事実おくだ歯科医院には「今まで他の歯医者で診てもらっていたが、いつまで経っても治療が終わらない」という患者様が、少なからず来院されています。
「基本の治療+α」について、当院で行っている+αについて詳しく知りたいという方は、良い歯医者の選び方を歯科衛生士の立場から考えますをご参照ください。
かみ合わせ、歯ぎしり・食いしばりで悩んでいる方や、治療を終えたのに症状が改善されない方にぜひ読んでいただきたいコラムです。
院長・奥田が考える選び方
私、奥田裕太が歯科医師の立場からおすすめしたい歯医者の選び方は、次の2つの条件を満たすかどうかです。
- お口の中の疾患が生活習慣病であることを理解し、その理解に基づいた生活習慣の改善のためのアドバイスをしてくれる。
- 定期検診の仕組みを確立しており、再発防止のサポートをしてくれる。
歯医者で治療を行う三大疾患(虫歯・歯周病・歯の破折(歯が割れるなど))の原因は、歯磨き習慣や食習慣などの生活習慣です。いわば糖尿病や高血圧といった、生活習慣病と同じなのです。
そのため根本的な治療をするには、「虫歯になっている部分を削る」「見えている歯石を除去する」「割れている歯を抜く」といった対症療法的な治療だけでなく、病気の原因になっている生活習慣の究明と改善のためのアドバイスが必要不可欠。
しかし、生活習慣の改善は一度や二度の治療・アドバイスで実現できるものではありません。専門家の手で定期的にお口の中の検診をしてもらい、一生涯にわたってサポートを受ける必要があります。
もちろんお口の健康のためには対症療法的な治療も大切です。しかしそれだけでは不十分なのです。だから私は上記の2つが良い歯医者の条件だと考えています。
歯科医師が考える歯医者の選び方についてのより詳しい説明は、歯科医師が考える、良い歯医者の2つの条件をご参照ください。
信頼できる歯医者をしっかりと見極めたいという方に、ぜひ読んでいただきたいコラムです。
インプラント治療を受ける際の選び方
最後に、「歯周病・インプラントセンター」であるおくだ歯科医院の立場から、インプラント治療を受ける際の歯医者の選び方についてのポイントをご紹介します。
- 最低5年間以上(できれば10年以上)インプラント治療をしており、年間症例10例以上をこなしている。
- インプラント治療の実績が多すぎない。
- 執刀医がインプラントや歯周病に関する学会に所属している。
- 執刀医がインプラントや歯周病に関する認定医資格を取得している。
インプラント手術の技術は経験のなかでしか身につきません。そのため実績の有無は非常に重要な判断要素です。
一方で、あまりに実績が多いのも考えもの。私は、歯医者にとって「患者様ができるだけ自分の歯で食べたり噛んだりできること」が大切だと考えているからです。
また学会に所属しているかどうか、認定医資格を取得しているかどうかは、知識量や技術力の証拠になります。実績と合わせてチェックしておきたいポイントです。
インプラントは費用・時間以外に命のリスクもある治療です。慎重に歯医者を選ぶために、ぜひインプラント治療を受ける医院の選び方をご参照ください。
初めてインプラント治療を受ける方はもちろん、「受けたことはあるけれどすぐにインプラントが折れてしまった」という方にも、読んでいただきたいコラムです。
まとめ
3人が考える歯医者選びの基準はそれぞれ違うものの、共通点もあります。すなわち「目の前の病気を治すばかりが、歯医者の仕事ではない」という認識です。
お口の健康は自分1人だけで守ることはできません。例えばお口の中についている歯石を除去するというだけでも、自分の手で完璧にきれいにすることはできません。
私たちのような現場で働く人間でさえ、定期的に誰かに清掃をしてもらわなければお口の健康を保つことはできません。
だからこそ、健康なお口を維持するためには、信頼できる歯医者とできるだけ早く出会い、一生涯にわたって専門的なサポートをしてもらう必要があるのです。
一生自分の歯で、何不自由なく好きなものを食べたい。そう思う方は、ぜひここで紹介した歯医者選びの考え方を参考にしてください。
歯医者は患者様とともにお口の健康を守るパートナーです。慎重にお選びになることをおすすめします。