デンタルコラム

顎関節症でつかうナイトガードとスプリントとの違い

みなさんこんにちは、おくだ歯科医院院長の奥田裕太です。

当院のデンタルコラムでは、今まで歯ぎしりや食いしばりに効果的!ナイトガード のメリットとデメリットとはや、もう迷わない!マウスピースとナイトガードの種類や効果の違いを徹底解説!を通じて、マウスピース全般やナイトガードについて解説してきました。

実はマウスピースには他にも種類があります。そのうちの一つがスプリントです。

おくだ歯科医院にいらっしゃる患者様の中でも、顎関節症で悩む患者様は、ナイトガードとこのスプリントのどちらが自分に適しているのか、ということで迷われるようです。

そこで今回はナイトガードとスプリントの違いについて説明するとともに、顎関節症に対するスプリントの効果や、スプリントなどの治療をせずに顎関節症を放置した場合について、解説したいと思います。

目次
  1. 顎関節症になったら、ナイトガードとスプリントのどちらをつけるべきか?
    1. ナイトガードの目的
    2. スプリントの目的
  2. スプリントをつければ、顎関節症は治るのか?
  3. 顎関節症を放置するとどうなるのか?
    1. 1型(咀嚼筋痛障害、初期)
    2. 2型(顎関節痛障害)
    3. 3型(顎関節円板障害)
    4. 4型(変形性顎関節症)
  4. おくだ歯科医院の顎関節症への対応
  5. まとめ

顎関節症になったら、ナイトガードとスプリントのどちらをつけるべきか?

ナイトガードとスプリントのうち、どちらが顎の違和感や痛みといった顎関節症に適しているのでしょうか。これは歯科医師によって回答がわかれるかもしれませんが、おくだ歯科医院に限って言えば「どちらでも良い」が答えです。

というのも、当院においてはナイトガードもスプリントも、名前と目的が違うだけで、作成方法も材料も、全く同じハードタイプのマウスピースだからです。

費用も同じで、いずれも15,000円程度(保険診療なので、3割負担の場合は5,000円程度)で作ることができます。

ナイトガードの目的

ナイトガードの目的は、睡眠中に歯ぎしり・食いしばりから歯を守ることです。歯ぎしり・食いしばりをすると歯が削れたり、歯に強い力がかかって割れたり、歯周病が進行することがあります。

ナイトガードはこうしたトラブルを回避するために使用します。

スプリントの目的

スプリントの目的は、顎関節症の症状の緩和です。スプリントを装着すると、食事に使う筋肉(咀嚼筋)や顎の関節の緊張をやわらげることができます。

これにより、顎関節症の症状、つまり顎関節の筋肉の張りや痛み、さらには頭痛や肩こりなどの改善が期待できるのです。

院長 奥田

おくだ歯科医院ではこのように、歯ぎしり・食いしばりに対して作成するマウスピースをナイトガード、顎関節症に対して作成するマウスピースをスプリントと呼び分けています。しかし呼び方にはっきりとしたルールがないので、歯科医師によって呼び方が変わる場合があるのです。

スプリントをつければ、顎関節症は治るのか?

では、スプリントを装着すれば、顎関節症はすっかり治ってしまうのでしょうか。答えは「いいえ」です。

なぜなら顎関節症は、以下のような原因が複雑に絡み合って発症するからです。

  • 噛み合わせの悪さ
  • 持続する精神的な緊張
  • 食いしばり、歯ぎしり
  • 関節の弱さ
  • スポーツや楽器演奏、仕事などの生活習慣
  • 寝姿勢 など

そのため、スプリントによって咀嚼筋や顎の関節の緊張を和らげられても、完治するとは限らないのです。

ただし、原因の一つを解消することで、症状が改善する可能性は十分あるので、おくだ歯科医院では顎関節症の患者様にスプリントの作成をおすすめしています。

顎関節症を放置するとどうなるのか?

「スプリントをつければ治る、というわけじゃないのなら、歯医者に行っても行かなくても同じじゃないか」と思う方もいるかもしれません。

実際、顎関節症は顎関節に負担をかけないよう心がけるだけで、自然に治ってしまう場合もあります。そのため症状が改善しているようなら、そのまま様子を見るのも選択肢の一つです。

しかし改善が見られない場合や悪化しているような場合は、放置を続けると以下の順番で症状が進行してしまう危険があるため、早めに歯科医院に相談してください。

1型(咀嚼筋痛障害、初期)

顎関節症の初期(1型)では咀嚼筋に痛みが出ます。食事時に筋に違和感や痛みが出るほか、筋肉が張って口が開けにくくなったり、肩こりや筋肉痛のような筋肉のこわばりが出ることによって顎を動かしにくくなったりします。

2型(顎関節痛障害)

もう少し症状が進んで2型になると痛みだけではなく、顎の関節自体の動きに制限が出てきます。

耳の穴の少し前方にある顎関節自体にも痛みが出だし、口が開けにくいだけではなく、開けたり食事をしたりすると痛みが出るようになります。

3型(顎関節円板障害)

3型(顎関節円盤障害)まで進行すると関節の間にある軟骨が関節の間から飛び出てしまい、それが引っかかることで口が開けづらくなってきます。

またその軟骨を乗り越えて顎が開くのでクリック音がするようになります。こうなると、顎を左右に揺らしながらでなければ、関節が軟骨に引っかかって口が開けられなくなってきます。

4型(変形性顎関節症)

3型まで進行すると、関節の間に軟骨が存在しないため、骨同士が直接当たってしまいます。その結果、関節の骨が削れてしまい、変形を起こします。このように骨の変形を伴う顎関節症を4型(変形性顎関節症)と呼びます。

おくだ歯科医院の顎関節症への対応

顎関節症の症状でお悩みの方がおくだ歯科医院に来院された場合、まずは触診を行い、どの筋に痛みが出ているのかを調べます。

加えて、レントゲンで4型に見られるような顎の骨の変形がないかの確認をするとともに、どのような動きでどれくらい口を開けられるのかを調べます。そうした診察を行ったのち、患者様が現時点で何型なのかを決定するのです。

基本的には当院でスプリントの作成をはじめとする治療を行いますが、4型まで進行しており、かつスプリントを装着しても改善が見られない場合は、MRIや外科処置が必要な可能性があるため、大きな病院を紹介することもあります。

まとめ

初めは単なる違和感でも、放置していると骨が変形を起こしてしまうほどの事態になる。これが顎関節症です。

一般社団法人日本顎関節症学会が2020年に発表したレポートでは、対象者の女性のうち実に約4人に1人に顎関節症の疑いがあるという調査結果が紹介されています(男性は約7人に1人)。

今は症状がないという人でも、決して他人事で考えていい数字ではありません。

4型の顎関節症になると治療の難易度は非常に高くなるだけでなく、痛みをとることはできても、完全にクリック音をなくしたり、変形をすっかり元通りにしたりするのは難しくなります。

そのため、顎に違和感を感じたり、開いた時に痛みを感じたりする場合は、「気のせい」で片付けるのではなく、早めに歯科医院に相談することをおすすめします。

院長 奥田

顎関節症は、なるべく早めの治療が肝心です。遠くて当院には通えないという方も、ご相談いただければお近くの信頼できる歯科医院をご紹介しますので、ぜひお気軽にお電話ください。

診療内容

当院について

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院長紹介

奥田 裕太

1982年生まれ。大阪十三で「おくだ歯科医院」を経営。大切にしているのは「患者様と一緒に悩み、一緒に成長し、笑える、二人三脚の治療」。

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