デンタルコラム

歯茎の痛みや違和感の主な原因と治療方法について

こんにちは、おくだ歯科医院院長の奥田裕太です。

皆さんは健康な歯茎とはどんな状態かご存知でしょうか。もし鏡を見てみて、歯茎がきれいなピンク色をしており、歯の歯の間(歯間乳頭)もツヤとハリのある状態なら健康な歯茎と言えます。

しかし何かが原因で健康が損なわれると、ピンク色が黒ずんできたり、腫れや出血が見られたりと様々な異変が生じます。

最初は単なる違和感でも、放置しておくと大きな病気につながる場合もあります。

今回は「腫れ」「黒ずみ」「痩せ」という3つの代表的な歯茎の異変を取りあげ、それぞれ原因は何で、どんな病気の可能性があり、どういった治療方法があるのかを紹介したいと思います。

目次
  1. 歯茎の「腫れ」の主な原因と治療方法
  2. 歯茎の「黒ずみ」の主な原因と治療方法
  3. 歯茎の「痩せ」の主な原因と治療方法
  4. まとめ

歯茎の「腫れ」の主な原因と治療方法

最も多い歯茎の異変は腫れです。一見して腫れとわかる場合もあれば、全体的に、しかも徐々に腫れていったせいで簡単には気づかないケースもあります。

原因はたいていの場合お口の中のメンテナンス不足。歯磨きを丁寧にしていても、歯科医院で専門的なお掃除をしてもらっていないと歯茎が腫れてくる可能性は十分あります。

なぜ腫れるのかというと、バイ菌がお口の中の食べかすや歯垢を温床にして歯茎に炎症を引き起こすからです。こうした症状は歯肉炎、重症化していれば歯周病(による歯周炎)と呼ばれます。

歯周病は日本人が歯を失う原因となる病気第1位であり、30代以降の3人に2人は罹患しているとも言われる国民病です。

また自覚症状がなく、気づいた頃には重症化しているという「サイレントディジーズ(静かなる疾患)」の一つにも数えられています。

そのため現在歯茎に異常を感じている人は、すでに中程度以上の歯周病の可能性があります。

したがってできるだけ早く、臨床歯周病学会や日本歯周病学会の認定医や専門医が在籍しているような信頼のおける歯科医院の治療を受けることをおすすめします。

また歯周病が悪影響を及ぼすのは、歯やお口に対してだけではありません。

歯周病の原因菌とされる口腔細菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)は、血液中の鉄分を栄養素にして増殖し、ジンジパインという毒素を排出します。

この毒素が全身に回ると、糖尿病や心筋梗塞、アルツハイマー病、妊婦の方になると早産のリスクが上がるとされているのです。

歯茎から出血があるということは、この口腔細菌に餌(血液中の鉄分)を与え続けているということです。

歯茎の腫れに気づいたのであれば、自身の健康を考えて一刻も早い診断・治療を受けていただきたいところです。

院長 奥田

歯周病について詳しくお知りになりたい方は、歯周病の原因と大切な予防歯科や「糖尿病と歯周病」歯科医師が教える2つの病気の深すぎる関係とその原因、プロがおこなう歯石除去などの記事をご覧ください。

歯茎の「黒ずみ」の主な原因と治療方法

「最近歯茎が黒ずんできた」という方もいらっしゃるかもしれません。歯茎の黒ずみにはいくつか原因があります。

一つは単なる着色。喫煙などで歯肉に色がついてしまったケースです。

病気ではないため放置していても問題になりませんが、気になる場合はガムブリーチングなどの治療を行うことで着色を除去することが可能です。

虫歯治療に使った金属が溶け出して染み付くことで歯茎が黒ずむこともあります(メタルタトゥー)。

こちらもすぐに大きな病気の原因になることはありませんが、レーザーで焼いたり、歯茎を移植したりすることで見た目を改善することはできます。

一方で、放置すると取り返しのつかない病気に発展するのが以下の3つのケースです。

症状治療方法
歯茎が痩せて、被せ物との境目が黒色に見えている。歯茎の移植、被せ物のやり直しが必要。
※歯茎の痩せについては後ほど説明します。
歯茎と歯の境目に虫歯が出てきて黒く見えている。虫歯の治療が必要。
歯石がたくさんついているせいで、歯茎が黒く見える。歯石の除去及び歯周病の治療が必要。(詳細は白い歯石と黒い歯石の違いを参照ください)

歯茎の痩せは後ほど説明するように、将来的なQOLに大きく関わってきます。虫歯を放置すれば歯を失うリスクが高まりますし、歯石を放置していれば口臭や歯周病の原因にもなります。

歯茎の黒ずみはこうした危険性のある症状です。「ただの黒ずみなんだから、放っておけば大丈夫」と考えず、一度専門家の目で判断してもらうのが良いでしょう。

歯茎の「痩せ」の主な原因と治療方法

歯茎が痩せてくるというのは、「歯茎が下がってくる」「歯が長くなる」と言い換えても構いません。要するに本来歯茎で隠れている歯の根っこの部分が見えてきている状態です。

歯茎の痩せは知覚過敏や虫歯になりやすいほか、歯が折れたり抜けたりしやすくなります。ただ見た目が悪いだけではないのです。

加えて原因を辿ると、より問題の深刻さがわかります。歯茎の痩せの原因には、

  • 歯周病
  • 矯正治療
  • 強すぎる歯磨き
  • 歯並び、噛み合わせの問題
  • 歯ぎしり、食いしばり など

が挙げられます。意外な原因は舌ピアス。2010年の研究では、因果関係はわからないものの舌ピアスが空いている人は、空いていない人の18倍も歯茎が痩せやすいと報告されています。

歯並びや噛み合わせ、歯ぎしりや食いしばりは歯茎の痩せ以外にもお口の健康に重大な影響を及ぼす可能性があることがわかってきています(詳細は歯並び・歯ぎしりと、歯周病や歯を失うリスクの関係性について)。

この問題を解決するには、原因となっている病気の治療とともに、おくだ歯科医院の専門分野でもある歯周形成外科(※)の技術が必要になるケースが多くなっています。

お困りの方は、ぜひ一度ご相談いただければと思います。仮に当院での治療が難しくとも、信頼のできる歯科医院を紹介させていただきます

※外科手術でもともとの歯茎を取り戻す技術。

まとめ

今回紹介したもの以外にも、歯茎の異変には様々なものがあります。

痛みを伴い、表面が白っぽくなる口内炎、水ぶくれができる口唇ヘルペスや帯状疱疹、ニキビのようなものができる根尖性歯周炎。

白い網状のような模様ができる扁平苔癬(こうくうへんぺいたいせん)のほか、乳頭腫や血管腫、舌癌といった腫瘍ができるケースもあります。

こうした症状がある場合は、歯科医院と口腔外科、腫瘍内科や皮膚科といった医科と連携することで対応する可能性も出てきます。

腫れ、黒ずみ、痩せにしろ、上記のような異変にしろ、放っておいても問題ないかどうかは専門家に判断してもらう必要があります。

心当たりのある方は、できるだけ早い段階で信頼できる歯科医院に診てもらうことをおすすめします。

院長 奥田

お口の中のトラブルは痛みを感じにくいので、ついつい後回しにしがち。でも放置する間に、一生涯のQOLに関わる重大な病気に発展することもあります。この記事を読んだのが良いきっかけだと思って、ぜひとも早めに受診しておきましょう。

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院長紹介

奥田 裕太

1982年生まれ。大阪十三で「おくだ歯科医院」を経営。大切にしているのは「患者様と一緒に悩み、一緒に成長し、笑える、二人三脚の治療」。

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