デンタルコラム

金属アレルギーでお口の中にトラブルがある場合の対処法

こんにちは、おくだ歯科医院院長の奥田裕太です。皆さんの中には、以下のような症状を自覚している方はいないでしょうか。

  • 口の中に常にひりひり感がある。
  • 口内炎ができやすく、一度できるとなかなか治らない。
  • 手や足に水ぶくれ(水疱)ができてかゆみがある。

これらはお口の中の状態が原因で引き起こされる、皮膚の病気である可能性があります。代表的な病気は、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)や扁平苔癬(へんぺいたいせん)などです。

歯科治療で使われる金属に対するアレルギーが原因の一つとされています。

しかし実はこれらの病気には様々な原因があることがわかっており、余計なリスクやコストをかけずに治療を進めるためには、原因を慎重に特定していく必要があります。

そのためには歯科だけでなく、皮膚科との医科歯科連携が求められるケースもあります。以下では、掌蹠膿疱症と扁平苔癬の症状と効率的な治療について、歯科医師の立場から紹介させていただきたいと思います。

目次
  1. 掌蹠膿疱症や扁平苔癬の症状について
  2. 掌蹠膿疱症や扁平苔癬の治療について
  3. まとめ

掌蹠膿疱症や扁平苔癬の症状について

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)は、手のひらや足の裏にウミが溜まった膿疱が数多くできる病気です。症状は季節や体調によっても変動し、周期的に改善と悪化を繰り返します。

最初のうちは水ぶくれができ始め、次第に膿疱へと変化していきます。水ぶくれができ始める際にかゆみが出るほか、鎖骨や胸の中央など関節部分にかゆみを感じるケースもあります。

かかった人のうち、扁桃腺や歯、鼻などで起きている細菌性の慢性炎症、もしくは金属アレルギーが原因の人が2~3割

残りの7〜8割は原因がわからず、対症療法をしながら自然治癒を待つしかない、という病気でもあります(大半の人は自然に治ることが多い)。

扁平苔癬(へんぺいたいせん)は胴体や手首の内側、脚、陰部などに赤色または紫色の小さく隆起した発疹が出る病気で、常にかゆみが伴います。

症状は1年以上続くケースもあり、場合によっては一度治ったと思っても再発することがあります

お口の中に症状が現れると、青白いレース状の模様(ウィッカム線条)ができますが、痛みがないため気づかない患者様も少なくありません。

原因ははっきりとしておらず、金属アレルギーや免疫系に関する薬剤による異常のほか、肝炎をはじめとする肝障害が原因と思われるケースもあるようです。

治療としてはかゆみを抑える対症療法がメインで、あとは原因になりうる薬剤を控える程度の対処法しかないのが現状です。

院長 奥田

いち歯科医師の個人的な見解では、掌蹠膿疱症と扁平苔癬に対する治療方針は現時点では確立されていません。ただ、皮膚科と歯科の医科歯科連携がうまく機能すれば、今よりもっと効率的に患者様の苦しみを取り除けるのではないかと考えています。

掌蹠膿疱症や扁平苔癬の治療について

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)と扁平苔癬(へんぺいたいせん)の治療は、以下の手順で歯科と皮膚科が連携しつつ進めていくことが肝心です。

  1. 金属アレルギーが自己診断なのか、皮膚科専門医による診断なのかをヒアリング。
  2. 同時に実際に何か症状があるのかを確認する。
  3. 自己診断の場合は一度皮膚科専門医を紹介。まずは皮膚科での治療を進める。
  4. 症状の改善が見られない場合、皮膚科にて歯科金属(※)のパッチテストを行う。
  5. 金属アレルギーがあるとわかってもまだ治療には入らず、特に女性の場合はアクセサリーをつけるのをやめてもらう、包丁などよく触れる金属をチタンのものに変えてもらうなどの対策をとる。
  6. 症状の改善が見られない場合、ここで初めて治療に入る。ラバーダムという特殊なゴムを使って患部を隔離し、金属くずが飛ばないように注意をしながら金属の詰め物を除去する。
    ※歯科金属……パラジウムやアマルガムなど、いわゆる銀歯と呼ばれる詰め物。
    ※ラバーダムについては虫歯などの治療で使う「ラバーダム」とは?メリット・デメリットを紹介します。を参照ください。
    ※4〜6の間も皮膚科専門医と連携しながら皮膚科での治療は継続する。

「まどろっこしいなあ。もっと手取り早く終わらせてくれればいいのに」と思う人もいるかもしれません。

確かに、この手順を忠実に守ればどうしても時間がかかります。定期的に通院してもらう必要もあれば、別途皮膚科に行く手間も時間もかかります。

しかし掌蹠膿疱症と扁平苔癬の治療を行き当たりばったりで進めていくと、患者様に不要なリスクやコストを背負わせてしまう場合があるのです。

歯科金属除去のリスク金属の詰め物を除去するためには、どうしても金属を削る必要がある。この時の金属カスがお口の中に飛び散ると、それが原因でアレルギー反応を起こすリスクがある。また詰め物の金属が水銀を多く含むアマルガムだった場合、適切な処置をしなければ水銀中毒になるリスクもある。
除去したあとのコスト除去したあと、詰め物の材料にセラミックを選択した場合、保険が使えない材料なので治療費が高くなる(保険が使える非金属の材料もある)。
金属アレルギーのパッチテストの負担歯科金属のパッチテストは患者様の負担が大きい。
・背中一面に金属のテープを貼って数日過ごす。
・汗をかいてはいけないので、夏場は入院することもある。
・事前検査、テープ貼付、テープ貼付数日後の検査、テープを剥がしたあとの検査と、1週間に4回程度通院が必要なケースもある。

このような事情があるため、安易に金属の除去をしたり、パッチテストをしたりするわけにはいきません。

しかも手順を守って治療を進めなければ、原因を効率的に特定していくことができないため、もっと無駄な時間や労力、費用がかかる可能性があります。

だからこそ先ほどのような手順で治療を進めることで、

  • 本当に金属アレルギーが原因で掌蹠膿疱症や扁平苔癬になっているのか
  • 金属アレルギーが原因ならどの金属がアレルギーのもとになっているのか

慎重に一つずつチェックしていかなければならないのです。

まとめ

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)と扁平苔癬(へんぺいたいせん)は、仮に症状が出ていても簡単に原因がわかる病気ではありません。

もし患者様自身に金属アレルギーの自覚があって、「いつものアレルギーが出ているんだ」と考えたとしても、そもそも金属アレルギーでないケースもあります。

そこに誤解があるのであれば、リスクやコストをかけて詰め物の金属を除去しても問題は解決できません。

無駄なリスクやコストをかけないためには、最初から皮膚科との連携ができている歯科医院に行くか、もしくは先に皮膚科に相談し、適切な順番で治療を進めていくことが必要なのです。

院長 奥田

皮膚科を選ぶ際は目安として、「皮膚科専門医」がいる病院で、かつできれば金属アレルギーのパッチテストに対応してくれる病院をおすすめします。看板に単に皮膚科と書いてあっても、「皮膚科もできるが、専門は内科」という病院もあるためです。よろしければ参考にしてください。

診療内容

当院について

デンタルコラム

院長紹介

奥田 裕太

1982年生まれ。大阪十三で「おくだ歯科医院」を経営。大切にしているのは「患者様と一緒に悩み、一緒に成長し、笑える、二人三脚の治療」。

詳しく見る