デンタルコラム

虫歯などの治療で使う「ラバーダム」とは?メリット・デメリットを紹介します。

こんにちは、おくだ歯科医院院長の奥田裕太です。

今回取り上げるラバーダムとは、虫歯や歯の神経や根の治療を行う際に使用する処置のこと。緑色のゴム製のシートを使用し、治療する歯とそれ以外のお口の中を隔離する治療方法です。

テレビドラマなどで外科の手術の時に、術野(手術する部位)以外をドレープという緑の布で多い、その後茶色の液体で消毒するシーンをご覧になった人もいるかもしれません。

それと同じ処置を歯で行うことで、術野と細菌が10億匹いるともいわれる唾液が接触して感染症を起こさないようにするのです。

おくだ歯科医院では虫歯や根管治療(歯の神経や根の治療)をする際には、できるだけこの処置を行うようにしています。しかし当院で治療を受けたことのない人の中には「そんなのしてもらったことないけど……」と思う人も多いはず。

そこで以下ではラバーダムのメリット・デメリットを解説するとともに、なぜ知らない人が多いのかについてご説明します。

目次
  1. ラバーダムのメリット・デメリットとは?
  2. 「日本では普及していない」という現状
  3. ラバーダムはなぜ普及しないのか?
    1. ラバーダムをしてもしなくても感染のリスクは大して変わらないと思っている患者様が多いから
    2. 歯医者にとってラバーダムはめんどくさいし、お金にもならないから
  4. まとめ

ラバーダムのメリット・デメリットとは?

お口の中はバイキンまみれです、一説にはお口の中とお尻の細菌数は同じぐらいとの研究も出ています。トイレやドブ川で洗濯をしてきれいになるでしょうか。誰でも答えはわかると思います。

ラバーダムを使用するのは、いわばドブ川状態のお口の中と治療する歯をゴム製のシートで隔離し、虫歯などによって感染を起こしてしまった部位の細菌を除去、もしくは問題が起こらない量にまで消毒をするためなのです。

また、術者(歯医者本人や衛生士など)の唾液や血液に触れるリスクも減らせるという点も、ラバーダムのメリットです。

一方でラバーダムのデメリットは、「人を選ぶ」ということです。第一にお口にゴムをはるのでラテックスアレルギーの人には使用できません。第二にお口で息が出来ないので鼻呼吸が出来ない人も使用できません。

とはいえ、こうしたケースを除けば、感染症対策としては有効な技術だと思います。

「日本では普及していない」という現状

ところが、日本ではラバーダムによる治療は普及していません。かなり古いデータで恐縮ですが、2003年に行われた調査によれば一般歯科医院でラバーダムを使用しているのは、全国でたった5.4%でした。

しかも日本歯内療法学会(根の治療の勉強をする学会)に所属する歯医者でも、「必ず使用する」と回答したのは25.4%しかいなかったのです。一方、当時の米国の歯科医院でのラバーダム使用率は92%とされています。

一方で、初めて神経を取る歯の成功率は日本で60%付近、低いものでは50%を切る研究もあるのに対し、アメリカでは94%に上るという研究もあります。

これらの数字だけを見て議論をするには無理がありますが、それでも「ラバーダムには効果があるのに普及していない」という印象がなんとなく浮かんでくるのではないでしょうか。

上記の調査から18年も経った今ではもう少し数字が改善していることを祈るばかりですが、私個人の体感としてはさほど状況は変わっていないように思います。

虫歯や根管治療にはマイクロスコープも有効ですが、こちらの普及率も1割程度とされています。両方使用している歯科医院は何%あるんだろうと心配になるほど。これが今の日本の歯科業界の現状なのです。

ラバーダムはなぜ普及しないのか?

ではなぜこのような有効な技術が普及しないのでしょうか?私が考える理由は2つです。

①ラバーダムをしてもしなくても感染のリスクは大して変わらないと思っている患者様が多いから。
②歯医者にとってラバーダムはめんどくさいし、お金にもならないから。

以下でそれぞれ見ていきましょう。

ラバーダムをしてもしなくても感染のリスクは大して変わらないと思っている患者様が多いから

感染症になった瞬間は、症状もなければ痛くもかゆくもありません。数年後に歯の根っこの先に膿がたまり痛みが出て歯医者に行き、そのとき感染したことが初めてわかります

細菌は目に見えませんので、歯の中に菌が入ったかどうかはその時点ではわからないのです。

またその歯科医院が定期検診を行なっていない場合、数年後痛くなった時に他の歯科医院に患者様が行ってしまう可能性が高くなります。そうなると感染したかどうかさえわからないので、ラバーダムの効果が検証できないという現実もあります。

しかし事実として、ラバーダムをせずに根っこの治療を行うと感染のリスクが上がることがわかっており、そのリスクは2倍前後と言われています。

歯医者にとってラバーダムはめんどくさいし、お金にもならないから

「めんどくさいし、お金にもならない」などと言うと、医療従事者として問題があるかもしれませんが、正直なところこれらは事実としか言うほかありません。

まずはお金のお話。医療には保険点数というものがあり、虫歯の治療をすれば何点、歯を抜けば何点といった形で、厚生労働省が医療行為に対して病院側に支払われる報酬を決めています。

ではラバーダムには何点が付くのでしょうか。答えは0点です

厚生労働省では「ラバーダムは医療行為ではない」という理解なのか、ラバーダムをすることによる診療報酬は現在ないのです。

では「めんどくさい」の方はどうでしょうか。ラバーダムを行うには、以下の5つのステップが必要です。

①歯の周りに麻酔を行う。
②専用のクリップのようなものを装着する。
③ゴムを装着して、歯と口を隔離する。
④その後消毒を行う。
⑤ここまで行なったうえで、ようやく治療を開始する。

慣れるまではけっこうな時間と手間がかかるので、治療時間も確保しなければなりません。にもかかわらずお金にはならないので、経営を圧迫する可能性もあります。

こうしたことが原因で、今の日本ではどうしてもラバーダムは普及しにくいのです。

まとめ

近年は、日本でも歯の根っこの治療を専門とする先生も増え、ラバーダムのことを知っている患者様も増えてきました

ところが、当院で歯の根っこに症状を抱えている患者様に「ゴムみたいなものを貼って治療を受けましたか?」と聞くとほとんどの患者さんが「そんなものは知らない」とおっしゃいます。

しかしながら今回説明した通り、ラバーダムには十分なメリットがあります。そのため当院ではラテックスアレルギーの方や鼻で呼吸するのが難しい方など、どうしても使用できないケース以外では、基本的にラバーダムを使用しています。

院長 奥田

水曜日には根っこの治療を専門に行ってくれる先生にも来ていただくようにしておりますので、根っこの症状でお困りの方は、水曜日の予約を取らせていただくことも可能です。

診療内容

当院について

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院長紹介

奥田 裕太

1982年生まれ。大阪十三で「おくだ歯科医院」を経営。大切にしているのは「患者様と一緒に悩み、一緒に成長し、笑える、二人三脚の治療」。

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