こんにちは、おくだ歯科医院院長の奥田裕太です。
心理学者のアルフレッド・アドラーによると、人の悩みの9割は人間関係についてのものだそうです。
この人間関係を円滑にする方法の一つが笑顔。好印象を与える笑顔は他人だけでなく、自分の心も元気にしてくれます。
しかしデンタルブログでもしばしば取り上げている歯ぎしりを続けていると、この笑顔に悪影響が出てくるのです。
今回は歯ぎしりと笑顔の関係について説明するとともに、当院の治療により理想的な笑顔を取り戻した患者様の症例をご紹介します。
なお、今回のデンタルブログではお口の中の写真や手術時の写真など、人によってはショッキングな内容もあるため、お食事中の方や苦手な方は十分ご注意ください。
歯ぎしりと笑顔の印象は密接につながっている
歯ぎしりをするときの噛む力は自分の体重の2〜5倍。小柄な女性でも100kg以上の力が顎や歯に加わることになります。放置していれば少しずつ歯が削れていき、短くなっていきます。
歯ぎしりが様々な健康問題を引き起こすことは、デンタルコラムでも様々な角度で紹介してきましたが、歯が短くなると笑顔にも悪影響が出ます。
なぜなら、笑顔の印象は笑った時に見える歯の面積によって大きく変わるからです。
例えば上の画像の左右の歯は全く同じものですが、左は歯だけでなく歯茎までしっかり見えています(ガミースマイル)。
一方右の画像は歯茎が見えておらず、ちょうど良い笑顔だと感じる人が多いのではないでしょうか(アベレージスマイル)。
また逆ガミースマイルと言って、歯がほとんど見えない笑顔も自分や他人に与える印象に悪影響を与えます。
逆ガミースマイルの主な原因は二つ。一つは顔まわりの筋肉の老化や肌のたるみによって唇がしっかりと挙げられなくなるから。もう一つは歯ぎしりなどによって歯が短くなり、前歯の見える面積が減ってしまうからです。
20代の人が笑うと前歯が4mmぐらい見えるのに対して、60代では1〜2mm程度しか見えないと言われている研究もあります。そのため逆ガミースマイルは、元気のない、老けた印象を与えてしまうのです。
歯が短くなる原因は歯ぎしり以外にも、酸っぱいものや仕事で酸を扱うような人に起こりやすい酸蝕症が挙げられます。
解決策1:歯の長さを変える
歯が短くなったことで失われてしまった素敵な笑顔を取り戻すにはどうすればいいのか。方法は大きく3つあります。
- 歯の長さを変える。
- 歯茎の位置を変える。
- 1と2の両方を行う。
以下では、1の方法で逆ガミースマイルを治療した症例をご紹介します。
この患者様は、虫歯や食いしばりで写真のように前歯が短くなってしまっていました。
そのため笑っても全く前歯が見えず、どうしても老けた印象を与えてしまいます。アベレージスマイルに近づけるためには、笑った時にもっと歯が見えるようにする必要があります。
そこで当院では、今ある歯に被せ物を取り付けて噛み合わせをかさましする方法を選びました。歯を長くすれば、笑った時に見える歯の面積を増やせるからです。
しかしむやみにかさましをすると、逆に噛み合わせが悪くなり、顎関節症や虫歯・歯周病、口臭などを引き起こしてしまうので、治療は慎重に進めなければなりません。
まずは模型上でシミュレーション。次にシミュレーションをもとに作成したマウスピースを使って、かさましした状態で生活ができるかをチェックします。
さらにマウスピースの代わりに仮歯を入れて、再度生活に支障が出ないかを確認。最後にようやく実際の被せ物を作成して取り付けていくのです。
こうして笑った時に見える歯の面積を増やすことで、笑顔を若返らせることができるのです。
解決策2:歯茎の位置を変える
次に紹介する患者様は、先ほどの患者様よりもさらに歯が短くなっており、歯の長さを変えただけで理想的な笑顔にするのは難しい状況でした。
そのため当院では、3つの方法のうちの3、すなわち「歯の長さを変える」と「歯茎の位置を変える」の両方を行うことにしました。
手順としては、先ほどと同じ順番で慎重にかみあわせをかさましした後、手術をして歯茎の位置を引き下げていきます。
この状態から先ほどの手順でかみあわせをかさまししたところ、状態はかなり改善しましたが、まだアベレージスマイルにはなりませんでした。
そこで再度仮歯を外し、手術をして歯茎を引き下げることで前歯の長さをさらに長くします。
以下の画像は手術の画像です。苦手な方はクリックまたはタップされないようお気をつけください。
お口の健康状態や生まれつきの骨格などによって、できる治療とできない治療もありますが、素敵な笑顔は歯科治療によって取り戻せるのです。
まとめ
確かに、現代の歯科医療を持ってすれば、若々しい笑顔や自然な笑顔を取り戻すことはできます。
しかし今回紹介したような大掛かりな治療が必要になると、治療費がかさむだけでなく、治療できる歯科医院も限られてくるため、手間も時間もかかります。
対して、もっと早めの段階で歯科医院に通っていれば、もっと安く、もっと簡単な処置で対応することができます。だからこそ、予防が大切なのです。
ビジネス誌『PRESIDENT』が120人の60代男性に行なったアンケートによれば、健康分野で40代のうちからメンテナンスしておけばよかった部位の第1位は「歯」(2018年1月号)。
人生100年時代と言われる昨今、人生のうちで歯を使う期間も伸びていきます。10年後、20年後、30年後に後悔しないためにも、今のうちから信頼できる歯科医のもとで定期検診を受け、予防に力を入れることをおすすめします。
今の医療はなってしまった病気を治す治療(キュア)よりも、病気になる前に対処する予防(ケア)が主流になりつつあります。QOL(人生の質)を維持するために、できるだけ早いうちからお口の健康のケアをしておきましょう。