デンタルコラム

歯周病菌の数を歯科医院でコントロールする必要性について

こんにちは、おくだ歯科医院院長の奥田裕太です。

当院では歯周病の患者様に対し、数ヶ月に一度定期検診を行いながら、歯石除去を中心とした歯周病菌の数をコントロールするための処置を行なっています。

患者様の中には「いつまで通い続けなければならないのか?」「そもそも通う必要があるんだろうか?」と考えている方もいるかもしれません。

しかし、歯周病の進行スピードには個人差があります。加えて歯周病菌を完全に0にすることはできません。そのため菌の数をコントロールするには、患者様ごとに適した間隔で、定期的に歯科医院に通ってもらう必要があるのです。

今回はこうした歯周病の性質について、歯科医療が積み重ねてきた過去の研究成果をもとに解説していきます。

目次
  1. 歯周病の進行には個人差がある
  2. 一度定着した歯周病菌は完全に駆除することはできない
  3. まとめ

歯周病の進行には個人差がある

まだ日本では、定期的に歯科医院に通う習慣がない人もたくさんいます。皆さんの周りにも、歯医者に通っていないにもかかわらず、きれいなままの歯を維持している人がいるかもしれません。

だからと言って、全ての人が歯医者にかからずにお口の健康を維持できるかというと、そんなことはありません。なぜなら歯周病の進行には個人差があるからです。

スリランカスタディーと呼ばれる有名な研究があります。概要は以下の通りです。

  • 1970〜1985年の15年間を費やして行われた、大規模な研究。
  • 研究対象はスリランカの茶畑で働く480人の男性労働者で、年齢は14〜46歳。
  • 対象者は歯を磨く習慣がなく、地域には歯科医師はいない。
  • また対象者たちは起床、就寝時間、食事内容等、ほぼ同じ環境下で生活していた。

このうち、81%の人は比較的ゆっくりと歯周病が進行。11%の人は歯周病になってすらいませんでした。

対して残り9%の人は急速に病状が進行し、20代で歯を失い始め、40代には全ての歯が抜けてしまっていました。

つまり驚くべきことに、全く歯を磨かず、同じ時間に寝起きし、同じものを食べる生活を送っていても、歯周病の進行具合には大きな個人差があったということです。

「あの人が歯医者に行かずにきれいな歯をしているんだから、自分も行かなくていい」という話にはならないのです。

加えて、Bernadette医師が行った、10年後に歯を失うリスクが高くなる習慣の研究によれば、喫煙している人はしていない人よりも2.38倍、歯垢などの磨き残しが多い人はそうでない人よりも1.79倍歯を失うリスクが高いと報告されています。

これだけでも「そんなに違うのか」と思うかもしれませんが、歯科医院で定期的なクリーニングを行っていない人は行っている人に比べて、なんと4.57倍も歯を失うリスクが高いということが明らかになっています。

Bernadette医師の研究からも、歯科医院での定期的なクリーニングが、一番の歯周病対策になることがわかります。

一度定着した歯周病菌は完全に駆除することはできない

「歯石をとってもらったりすれば、歯周病は治るのでは?」と思う人もいるかもしれません。

確かに歯科治療によって病状を回復させることは可能です。しかしそれは、歯周病菌がお口の中から完全にいなくなる、ということではありません。

なぜなら、一度定着した歯周病菌は完全に駆除することはできないからです。

今度は、大阪大学の歯学部長や、同学の口腔科学フロンティアセンター長も歴任された天野敦雄先生の研究を紹介しましょう。

天野先生の研究によれば、歯周病菌は10代から30代のうちに口の中に定着し、その後は生涯完全にいなくなることはなく、治療をしても、抗生物質を投与して菌を駆除する従来の抗菌療法を行なっても、最終的には復活してしまうことがわかりました。

スリランカスタディー以降の研究により、歯周病が急速に進行する可能性が高い菌がいるかどうかなどはわかるようになりましたが、お口の中の歯周病菌を0にする方法は今のところ見つかっていないのです。

0になっていなければ、歯周病菌はお口の中のエサを食べてまた増えていきます。数が増えれば影響力も大きくなりますから、放置していれば歯周病は悪化していきます。

だから、歯周病が発症しないように菌の数を管理して、菌とうまく共存できる環境を作っていくしかない、というわけです。

院長 奥田

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まとめ

歯周病にはこうした性質があるため、患者様ごとの進行スピードに応じた間隔で、定期検診を行い、菌の数をコントロールする必要があります。

お口の中の健康は、QOL(クオリティ・オブ・ライフ=人生の質)だけでなく、最近では全身の健康にも大きく関わっていることがわかってきています。

歯医者通いが面倒に感じることもあるかもしれませんが、大切な自分の体を健康に保つためのメンテナンスだと理解していただければ幸いです。

院長 奥田

正しい歯磨きの仕方や正しい歯周病への知識を身につけながら、我々と二人三脚でお口の健康を維持していきましょう。

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当院について

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院長紹介

奥田 裕太

1982年生まれ。大阪十三で「おくだ歯科医院」を経営。大切にしているのは「患者様と一緒に悩み、一緒に成長し、笑える、二人三脚の治療」。

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