デンタルコラム

歯医者が教える「歯ぎしり・食いしばり」についての正しい対処法

歯ぎしりと食いしばり対策のマウスピース

こんにちは、おくだ歯科医院院長の奥田裕太です。

「家族から歯ぎしりがうるさいと文句を言われている」
「家族の歯ぎしりがうるさくて、夜眠れない」

睡眠中の歯ぎしり・食いしばりは8〜16%の人がしていると言われています。あまりの大きな音に、家族同士の言い争いのタネになることもしばしば……。

そのため治したい、もしくは治して欲しいと思っている人も多いのではないでしょうか。

確かに歯ぎしり・食いしばりは歯や顎の病気だけでなく、全身の病気につながることもあるため、放置しておくのは良くありません。

しかし一方で、完全に歯ぎしり・食いしばりがなくなると、別の問題が発生する可能性もあるのです。

ここでは歯ぎしり・食いしばりの原因について、私の見解を述べるとともに、歯ぎしり・食いしばりをなくしてしまうことの問題と、おすすめの対処法について解説します。

目次
  1. 歯ぎしり・食いしばりは、無意識的なストレス解消の可能性あり
  2. 無理に治すと、別の問題が発生するかも……
    1. 過度のストレスは人の体に悪影響をもたらす
    2. ストレスを緩和するための人体の仕組み
    3. 「歯ぎしり・食いしばりを治す=アロスタシスを停止させる」かもしれない
  3. 睡眠中の歯ぎしり・食いしばりは「ナイトガード」で緩和するのが○
    1. だからといって放っておくと大変なことになる
    2. 歯ぎしり・食いしばりの治療は「治さず、緩和する」がポイント
  4. まとめ

歯ぎしり・食いしばりは、無意識的なストレス解消の可能性あり

歯ぎしり・食いしばりの主な原因とされているのは、以下の4つです。

ストレス圧倒的大多数がこのタイプ。
習慣スポーツ選手などで、瞬発的に力を出すような職業に就いている人の場合、食いしばりが習慣化してしまっているケース。
噛み合わせ・骨格咬み合わせの異常や顎の変位、金属製の詰め物があっていないなどが原因で、歯ぎしり・食いしばりが起きるケース。
子ども特有のもの永久歯と乳歯の入れ替え時期におこる不快感などが原因で、歯ぎしり・食いしばりが起きるケース。

表にもあるように、4つの中でも圧倒的に多いのが、ストレスが原因での歯ぎしり・食いしばりです。

そのため、本当の意味で歯ぎしり・食いしばりを治すには、日頃のストレスを取り除く必要があります。

しかし実際問題として、毎日のストレスから完全に自由になるのは不可能です。

となると、ストレスの問題はひとまず置いておいて、歯ぎしり・食いしばりを治そうという話になります。

ところが、考えなしに歯ぎしり・食いしばりを治そうとすると、別の大きな問題が発生するかもしれないのです。

無理に治すと、別の問題が発生するかも……

過度のストレスは人の体に悪影響をもたらす

ご存知の方も多いかもしれませんが、過度のストレスは人の体に大きな悪影響をもたらすとされています。

気管支喘息や高血圧症、胃潰瘍や糖尿病、蕁麻疹や突発性難聴、うつ病など、ストレスが直接的な原因とされている病気はたくさんあります。

こうした病気が引き起こされる仕組みを、思いきって簡略化すると、下図のように説明することができます。

これだけを見ると、やはり「大元の原因であるストレスをなくさなきゃダメ」と考えるかもしれません。

でも人間の体は良くできていて、ストレスによって体の調子が悪くなった時のために、ストレスを緩和するための仕組みももっているのです。

ストレスを緩和するための人体の仕組み

血圧や血糖値などを正常に保つ人体の仕組みを「ホメオスタシス」と呼びます。

過度なストレスがかかり続けると、これが故障するわけですが、故障したホメオスタシスを修理してくれるのが「アロスタシス」と呼ばれる仕組みです。

アロスタシスは、ストレスが原因で起きるホメオスタシスの乱れを、あえてエネルギーを使うことで安定させる役割を持っています。

ストレスが溜まったとき、思わず怒鳴りたくなったり、ゴミ箱を蹴飛ばしたくなったり、大声で泣きたくなったりしますよね。あれはアロスタシスの一種と言うことができます。

「歯ぎしり・食いしばりを治す=アロスタシスを停止させる」かもしれない

ここからは私の個人的見解ですが、私は歯ぎしり・食いしばりも、このアロスタシスの一種なのではないかと考えています。

「口」という器官は様々な役割を果たしています。食べ物を噛み砕く、食べ物を飲み込む、喋る……どれも重要な機能です。

しかし現代では滅多に使われなくなった機能ですが、「攻撃する」というのも口の立派な役割の一つです。

格闘技にはいくつかの禁止技がありますが、金的、目潰し(サミング)とともに「噛みつき」が挙げられているのは、口が強力な武器であることを証明しています。

このように考えると、歯ぎしり・食いしばりは、いわば「口という武器を使うことでエネルギーを解放する」という行為なのではないかと言えます。

したがって、歯ぎしり・食いしばりを治すということは、もしかするとその人のアロスタシスを停止させることにつながるかもしれないのです。

アロスタシスが停止し、故障したホメオスタシスが修理されなくなれば、その人はストレスをうまく処理できません。

結果、前述したようなストレスが原因の病気にかかってしまう可能性も高まります。

これが歯ぎしり・食いしばりを治すことで生じる、別の問題です。

睡眠中の歯ぎしり・食いしばりは「ナイトガード」で緩和するのが○

歯ぎしり・食いしばりに水平に削れてしまった歯

だからといって放っておくと大変なことになる

とはいえ、「だから歯ぎしり・食いしばりは放置しておいていい」という話にはなりません。なぜなら歯ぎしり・食いしばりも、多くの病気の原因になるからです。

下表は歯ぎしり・食いしばりが続いた結果、障害が起きる可能性のある部位と症状をまとめたものです。

障害が起きる部位具体的な症状
歯の磨耗、歯の破折、歯がしみる、噛むと痛いなど
歯周組織歯肉炎、歯周疾患(歯周炎=歯槽膿漏)
顎関節顎関節痛、開口障害、カックン音など
全身顔面痛、頭痛、肩こり、腕のしびれ、腰痛など
その他舌痛症(舌に痛みが出る病気)、むちうち症状、倦怠感など

歯ぎしり・食いしばりの際の噛む力は、自分の体重の2倍〜5倍とされています。

つまり女性でも100kg以上の力が毎日歯や顎にかかるのです。歯や顎が悪くなるのは当然と言えるでしょう。

歯ぎしり・食いしばりの治療は「治さず、緩和する」がポイント

ではどうすればいいのか。おくだ歯科医院では、歯ぎしり・食いしばりの治療は「治さず、緩和する」がポイントだと考えています。

つまりは歯ぎしり・食いしばり自体は治さずに、それによって生じる歯や顎へのダメージを軽減するのです。

上の写真の「ナイトガード」は睡眠時専用のマウスピースで、これを装着して眠ることで、早顎に加わる負担を軽減するとともに、歯ぎしりの不快な音を防止することができます。

「なんだか寝づらそう」と思うかもしれません。でも慣れれば大丈夫です。

実際、おくだ歯科医院も必要な患者様にはナイトガードの作成をご提案していますが、皆様「慣れてしまえば気にならない」とおっしゃっています。

また各種保険を使って作ることができるので、費用も4,000〜5,000円程度で済みます。睡眠中の歯ぎしり・食いしばりでお悩みの方やそのご家族は、ぜひご検討ください。

院長 奥田

おくだ歯科医院でもナイトガードをお作りしています。私自身、20歳の頃から毎日使用していますし、前院長の父を含め、家族全員が当たり前のようにナイトガードをつけて眠っていますよ。

まとめ

私の見解では歯ぎしり・食いしばりは、人間がストレスをコントロールするための一つの方法です。むやみに治すのは得策ではありません。

そのためおくだ歯科医院では、ナイトガードによって歯ぎしり・食いしばりの悪影響を緩和するという方法をおすすめしています。

もし家族で歯ぎしりをしている人がいるのなら、「うるさいなあ」と思うのではなく、「ストレスを抱えながら頑張っているんだ」と考えて、次の日の朝に優しい言葉をかけるとともに、歯医者に行ってみるよう勧めてあげてください。

優しい言葉をかけてもらえば、抱えているストレスが少しは軽くなるはず。

歯医者でナイトガードを作れば顎や歯の負担は減りますし、大きな音を立てずに睡眠中の歯ぎしり・食いしばりによるストレス解消もできます。

家族みんなが気持ちよく眠れるようになり、朝も笑顔で挨拶できるようになりますから、さらにストレスは減っていきます。

現代社会において、ストレスから完全に逃げることはできません。それならナイトガードという正しい方法を知って、ストレスとうまく付き合うほうが賢いやり方なのではないでしょうか。

院長 奥田

正のスパイラルを作り出して、ストレス社会を生き抜いていきましょう!

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当院について

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院長紹介

奥田 裕太

1982年生まれ。大阪十三で「おくだ歯科医院」を経営。大切にしているのは「患者様と一緒に悩み、一緒に成長し、笑える、二人三脚の治療」。

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