デンタルコラム

歯医者で作るマウスピースの価格はどう決まるのか?

こんにちは、おくだ歯科医院院長の奥田裕太です。皆さんの中には、次のような疑問を抱いている人もいるのではないでしょうか。

歯ぎしりや食いしばりには夜間用マウスピースが良いって聞いたけど、いくらぐらいするんだろう?

歯医者で夜間用マウスピースをつけた方がいいと言われたけど、本当に必要なの?

当院に通っていただいている大半の患者様には、歯ぎしり・食いしばり対策として夜間用マウスピースを使用いただいています。

なぜなら夜間用マウスピースはお口の中だけでなく、心身の健康トラブルをも防いでくれると考えているからです。

とはいえ、新しいことや知らないことには不安を覚えるのが当たり前。

そこで今回は患者様が夜間用マウスピースに対して抱いている不安や疑問をできるだけ解消するべく、価格や使用上の注意点を紹介するとともに、私が考える現代日本における夜間用マウスピースの重要性について解説したいと思います。

目次
  1. 夜間用マウスピースの価格は保険適用で5,000〜10,000円
  2. 夜間用マウスピースを使用するうえでの注意点
  3. 切っても切れない関係にある、ストレス社会と夜間用マウスピース
  4. まとめ

夜間用マウスピースの価格は保険適用で5,000〜10,000円

歯科医院で作る夜間用マウスピースは、顎の筋肉の触診や関節の状態から顎関節症の症状が認められれば、基本的に保険が適用されます。

その場合、患者様の負担額は5,000円程度で収まります。

しかし現時点で顎関節症の症状が認められない場合は、あくまで予防としての夜間用マウスピースになりますので、負担額が10,000円弱になってしまいます。

患者様によって、もしくは歯科医院によって夜間用マウスピースの価格に違いが生まれるのは、「なぜ夜間用マウスピースを作成するのか」によって保険が適用されるか、されないかが変わるからなのです。

院長 奥田

スポーツ用のマウスピースは保険適用外になるため、10,000円以上かかることが多くなっています。

金額だけを見れば、安くない買い物です。「そんなにお金をかけて、いったいどんな効果があるの?」と感じる人もいるかもしれません。

歯ぎしり・食いしばりの時に歯や顎にかかる力は数百kgとも言われます。それが就寝中の数時間、しかも毎日続いているとしたら、歯や顎が無事ではすまないことが理解できるはず。

事実、治療の現場でも歯ぎしり・食いしばりと歯周病や歯の破折(折れたり、割れたりすること)との関係性を感じることが多い他、頭痛や肩こり、腰痛などとの関係性も明らかになりつつあります。

「自分は大丈夫」と思われている方も少なくありませんが、歯ぎしり・食いしばりは自覚するのが難しい症状です。

そのためおくだ歯科医院では、まずは夜間用マウスピースを作成・使用していただくようにしています。

歯ぎしり・食いしばりの有無を確かめる専用の検査もできるのですが、正確な結果が得られにくい傾向があるため、当院では「夜間用マウスピースを一度使ってみて、削れていたら歯ぎしり・食いしばり有り削れていなければ歯ぎしり・食いしばり無し」という形で判断をしているのです。

どんなことでも最初は面倒だと感じるもの。しかし夜間用マウスピースをつけるだけで前述したような様々なトラブルが予防できるのであれば、比較的お手軽な方法ではないかと私たちは考えています。

夜間用マウスピースを使用するうえでの注意点

夜間用マウスピースは使用するうえでいくつか注意点があります。

まずは日々の使用方法です。

口の中に入れるものなので、使用していない日中はきちんと消毒しておきたいところ。ただし熱に弱い素材で作るため、煮沸消毒は厳禁です。変形して使えなくなってしまいます。

そのため毎日の消毒は、入れ歯用洗浄剤を使用してください。朝起きて、水でゆすいだら、マグカップなどに入れて水を注ぎ、入れ歯用洗浄剤を放り込めば完了です。

TVCMをしているような商品でも構いませんが、ドラッグストアのオリジナル商品が価格もお手頃なのでおすすめです。

また、着用したままの飲食は基本的におすすめしていません。

水を飲むくらいなら構いませんが、歯と夜間用マウスピースの間に飲み物・食べ物が残ってしまうと、そこで雑菌が繁殖しやすくなるからです。

次に、作成した歯科医院で定期的なメンテナンスをしてもらうことも大切です。夜間用マウスピースは作成時に患者様の噛み合わせにフィットするように調整を行います。

しかし使用していくと、毎日の歯ぎしり・食いしばりによって削れていき、徐々に噛み合わせにフィットしなくなっていきます。すると朝起きた時に顎が痛くなったり、疲れを感じるようになったりします。

だから、定期的に歯科医院でフィッティングを調整してもらう必要があるのです。

また、そうやって使用時やメンテナンス時に夜間用マウスピースを削っていくと、平均2年ほどで穴が空いてしまいます。

そうなれば作り替えのタイミング。再度新しい夜間用マウスピースを作っていただく必要があります。

最後の注意点は、別の器具との併用についてです。アイマスクやヘッドフォン程度であれば何の問題もありません。

しかし、SAS(睡眠時無呼吸症候群)における医科歯科連携の重要性で紹介したSASの治療のうち、マスクを着用するCPAP(シーパップ)という治療法との併用は可能ですが、専用のマウスピースを着用するOA(Oral Appliance)という治療法との併用はできません。

院長 奥田

以前夜間用マウスピースを試してみたけど、使っているうちに痛くなってきてやめてしまったという人は、調整がうまくいっていなかった可能性があります。当院では噛み合わせのチェックも入念に実施しておりますので、ぜひ一度ご相談ください。

切っても切れない関係にある、ストレス社会と夜間用マウスピース

私は、大半の歯ぎしり・食いしばりは内因性ストレスの解放ではないかと考えています(詳しくは先ほども挙げた歯医者が教える「歯ぎしり・食いしばり」についての正しい対処法で説明しています)。

要は日中の仕事やプライベートで蓄積したストレスを、歯ぎしり・食いしばりという形で眠っている間に解放し、心身のバランスを保っているのではないかという考えです。

「自殺大国」と呼ばれて久しい日本の自殺者数は、長い目で見れば減少傾向にあるものの、毎年2万人を超えています。

とりわけ若年層の自殺率は世界的にみても非常に高く、2020年版自殺対策白書によれば、15歳〜39歳の死因の第一位が自殺で、40代でも癌に次ぐ2位を記録しています。

歯ぎしり・食いしばりが内因性ストレスの解放になっているとすれば、歯ぎしり・食いしばりは現代日本においての生存戦略の一つとさえ言えるのかもしれません。

歯周病や歯の破折、頭痛や肩こり、腰痛などの原因になっているのなら、歯ぎしり・食いしばりはしない方がいい。そう考える人もいるでしょう。

しかしもし、歯ぎしり・食いしばりがなくなり、ストレスを解放できない人が増えてしまったとしたら……。最悪の事態につながる可能性は十分あります。

だからこそ私たちは、歯ぎしり・食いしばりを受け入れたうえで、そこから生まれる健康上のトラブルを防止する必要があるのです。そのための重要な手段こそが、夜間用マウスピースだと私は考えています。

5,000円〜10,000円という費用が高く感じる人もいるかもしれませんが、平均2年で作り替えるとしても、1年あたりで2,500円〜5,000円、1ヶ月あたりで208円〜416円、1日あたりで6.8円〜13.6円です。

これで自分のお口の健康を守りつつ、心身のストレスをうまく調整できるのだと考えれば、費用対効果はかなり高いと言えるのではないでしょうか。

まとめ

「歯ぎしりや食いしばりが問題なら、それ自体をなくせばいいのでは?」と考える人もいるかもしれません。

しかしストレス社会の現代日本においては、歯ぎしり・食いしばりがもたらしているストレス解消の効果も無視できないのではないかと私は考えています。

だからこそ政府も夜間用マウスピースの重要性を認識し、健康保険の適用範囲内に設定しているのかもしれません。

「面倒そう」「価格が高いように感じる」と思っていた人も、ぜひこの機会に夜間用マウスピースの使用を検討してみてはいかがでしょうか。

院長 奥田

ストレス社会と歯ぎしり・食いしばり、両方と適切に付き合っていくためにも夜間用マウスピースの使用をおすすめします。

診療内容

当院について

デンタルコラム

院長紹介

奥田 裕太

1982年生まれ。大阪十三で「おくだ歯科医院」を経営。大切にしているのは「患者様と一緒に悩み、一緒に成長し、笑える、二人三脚の治療」。

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