デンタルコラム

「麻酔を打つことのできる歯科衛生士」を目指して

みなさんこんにちは、おくだ歯科医院院長の奥田裕太です。

先日、当院の歯科衛生士を伴って、一般社団法人日本歯科医学振興機構(JDA)が主催する「臨床歯科麻酔管理指導医」、「臨床歯科麻酔認定歯科衛生士」という資格の講習会に行ってきました。

今回は、この2つの資格についてのお話をきっかけに、当院が取り組んでいる「麻酔を打つことができる歯科衛生士」の育成についてご紹介できればと思います。

目次
  1. 臨床歯科麻酔管理指導医・臨床歯科麻酔認定歯科衛生士とは?
  2. 歯科衛生士が麻酔を打っていいのか?
  3. 2006年11月6日「こうべ市歯科センター」の場合
  4. 「麻酔を打つことのできる歯科衛生士」を目指して
  5. まとめ

臨床歯科麻酔管理指導医・臨床歯科麻酔認定歯科衛生士とは?

臨床歯科麻酔管理指導医と臨床歯科麻酔認定歯科衛生士は、JDAが認定講習・認定試験を実施する民間資格です。

歯科麻酔学の専門家による講習・試験を通じて、歯科医師は歯科衛生士が実際に患者様に麻酔が打てるようになるまでの実習計画の立案方法や習熟度の判定方法などを、歯科衛生士は正しい法律の理解と基礎的な知識・技術などを学びます。

講習会のあとには認定試験が実施され、合格するとそれぞれ臨床歯科麻酔管理指導医、臨床歯科麻酔認定歯科衛生士としてJDAに認定登録されます。

歯科衛生士が麻酔を打っていいのか?

少し法律に詳しい方であれば、「歯科衛生士が麻酔を打っていいのか?」という疑問を抱くかもしれません。

しかし歯科衛生士法や厚生労働省の過去の通達などをひもとくと、ある一定の条件を満たせば、歯科衛生士が歯科診療の補助としての麻酔を打つことは認められているのです。

例えば歯科衛生士法では、まず歯科衛生士を厚生労働大臣の免許を受けて歯科医師の指導に基づいて歯石除去やフッ素などの薬物の塗布をする者として定義づけています。

一方で、「歯科医師の指示のもとで行われる歯科診療の補助(と歯科保健指導)」も、歯科衛生士に認めているのです。

では「歯科医師の指示」とはどのようなものなのでしょうか。厚生労働省が公表している資料によれば、歯科医師の指示と認められるのは以下の条件を満たしたものとされています。

①対応可能な患者の範囲が明確にされていること
②対応可能な病態の変化が明確にされていること
③指示を受ける看護師が理解し得る程度の指示内容(判断の規準、処置・検査・薬剤の使用の内容等)が示されていること
④対応可能な範囲を逸脱した場合に、早急に医師に連絡を取り、その指示が受けられる体制が整えられていること
引用:医行為分類の枠組み(修正案
※歯科の場合は看護師を歯科衛生士、医師を歯科医師と読み替えてください。

わかりやすく言い換えるとすれば、歯科医師が患者様の状態を理解し、能力のある歯科衛生士に具体的な指示を与えて、トラブルが生じた場合のマニュアルを周知徹底しておく、といったところでしょうか。

しかしこれでは具体的にどういうことなのか理解するのは難しいと思いますので、実際に起きた事例をもとに、「歯科医師の指示のもとで行われる歯科診療の補助」について解説していきましょう。

2006年11月6日「こうべ市歯科センター」の場合

2006年11月6日、神戸市が開設している「こうべ市歯科センター」で、麻酔を含む注射を使った採血や薬の投与を歯科衛生士が行なっていることがニュースになりました。

ことの発端は同年5月に厚生労働省に寄せられた「歯科衛生士が採血をしている」という情報でした。

神戸市歯科医師会と厚生労働省が調査に入ったところ、30代の女性歯科衛生士が次のような行為をしていたことが明らかになります。

  • 全身麻酔にかかっている患者様から採血
  • 点滴の液体に抗生剤を混ぜ、注入する速度を調整
  • 全身麻酔前の鎮静剤を投与 など

しかしさらに調査を進めると、この歯科衛生士は約10年の経験を持つ方で、センター開設時から勤務していることがわかりました。

また採血の経験はすでに約2年にもなり、2006年3月〜9月の期間はセンターに看護師が1人もいなかったこともあって採血・投薬の両方をこなしていたということも判明します。

以上のことから厚生労働省歯科保健課は、

  1. 歯科医師の指示の下で行っている
  2. 十分な知識と経験、技能がある
  3. 患者の不利益になっていない

として今回のケースは法律に触れていないと判断したのです。

「麻酔を打つことのできる歯科衛生士」を目指して

厚生労働省歯科保健課があげた条件を満たしていれば、歯科衛生士でも麻酔を打ったり、採血をしたりすることが可能になります。

今回、私がスタッフとともに臨床歯科麻酔管理指導医・臨床歯科麻酔認定歯科衛生士の講習会に行ったのも、歯科医院として新たなスキルを身につけるためです。

しかしながら前述したように、臨床歯科麻酔管理指導医・臨床歯科麻酔認定歯科衛生士の資格は国家資格ではありません

そのため資格を取得したからと言って、患者様に麻酔を打つことを公に認められたわけではないのです。

あくまで資格の取得は出発点。大切なのは、資格の取得を機に手にした基礎知識をもとに歯科医師・歯科衛生士がタッグを組み、胸を張って「麻酔を打つことのできる歯科衛生士」を名乗ることのできる実力を身につけることです。

そのため、当院では今後「麻酔を打つことのできる歯科衛生士」の育成を目指します。

技術的なトレーニングとマニュアル作成を行い、JDAの試験に合格した歯科衛生士にのみ、麻酔を含む歯科医師の指示による注射が実践できるような教育・研修を実行していく予定です。

まとめ

当院では、歯科医師はもちろんのこと、歯科衛生士をはじめとするスタッフ全員が、日々知識と技術そして経験の習得のために全力で励んでいます。

今回ご紹介した臨床歯科麻酔管理指導医と臨床歯科麻酔認定歯科衛生士は、そのほんの一部に過ぎません。

患者様により高品質な医療をお届けするために、引き続きスタッフ一同研鑽して参りますので、今後ともよろしくお願いいたします。

院長 奥田

日々進歩していく歯科医療を患者様に提供するためには、スタッフ全員が常に勉強し続ける必要があります。「麻酔を打つことのできる歯科衛生士」の育成もそのための目標の一つなのです。

診療内容

当院について

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院長紹介

奥田 裕太

1982年生まれ。大阪十三で「おくだ歯科医院」を経営。大切にしているのは「患者様と一緒に悩み、一緒に成長し、笑える、二人三脚の治療」。

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