デンタルコラム

SAS(睡眠時無呼吸症候群)における医科歯科連携の重要性

こんにちは、おくだ歯科医院院長の奥田裕太です。

皆さんは「SAS(Sleep-Apnea-Syndrome)」、すなわち睡眠時無呼吸症候群という病気をご存知でしょうか。2004年、2008年の研究では日本人のうち男性の9%、女性の3%がかかっていると言われる病気です(人口数で言えば約750万人)。

近年この病気の早期発見や治療には、医科歯科連携が重要だと言われるようになりました。そこで今回は、睡眠時無呼吸症候群(以下、SAS)と医科歯科連携の関係性について、ご紹介したいと思います。

目次
  1. SAS(睡眠時無呼吸症候群)とはどんな病気なのか?
  2. SAS(睡眠時無呼吸症候群)において医科歯科連携が重要な理由
  3. まとめ

SAS(睡眠時無呼吸症候群)とはどんな病気なのか?

SASは睡眠中に何度も呼吸が停止したり、浅くなったりすることで、体の低酸素状態が発生し、その結果として日常生活に様々な障害を引き起こす病気です。

具体的な症状としてはいびき、夜間の頻尿、日中の眠気や起床時の頭痛などが挙げられます。

発症に伴って引き起こされる合併症としては、高血圧、脳卒中、心筋梗塞などが代表的で、実際こうした合併症を起こして突然死するSAS患者の方も少なくありません。

またSASによる日中の眠気は作業効率の低下などの個人的な問題にとどまらず、重大な交通事故などに発展するケースもあります。

例えば2003年2月26日にJR山陽新幹線岡山駅で判明した、運転士の居眠り運転は、一歩間違えれば歴史に残るような大事故に発展していたでしょう。

2005年11月には名神高速道路でSASによって居眠り運転となったトラックが衝突事故を起こし、7人が死亡する凄惨な事故につながっています。

SASになりやすい人の特徴としてよくあげられるのは、以下の4点です。

  • タバコがやめられない。
  • お酒が好きで、寝る前のお酒が習慣化している。
  • 太り気味。暴飲暴食してしまうことがある。
  • 高血圧、糖尿病、高脂血症などの既往がある。

肥満の人の8割近く、メタボリックシンドロームの人の6割近く、高血圧の人、糖尿病の人の4割近くが合併症としてSASを発症していると報告している研究もあります。

そのため、こうした疾患を持っていて、きちんと睡眠をとっているのに眠い、ベッドパートナーにいびきを指摘されたり、呼吸が止まっていたと言われたりしている場合は、SASを発症している可能性が高いと言えます。

SAS(睡眠時無呼吸症候群)において医科歯科連携が重要な理由

SASは患者数の多い病気ですが、一方で潜在患者数(病気にはかかっているが、病院にかかっていない人の数)の多い病気でもあります。その原因は、自覚しにくさにあります。

いびきを指摘されても「ただのいびきだろう」と考えたり、日中居眠りをしても「疲れているんだな」と考えたりするからです。一人暮らしで誰かと一緒に寝ることがなければ、そもそもいびきに気づくこともないでしょう。

だからこそ、できるだけ多くの目で診断をする必要があります。解決策の一つとなるのが、医科歯科連携です

というのも、歯科医院での治療中に以下のような状態がある場合は、SASの可能性があるとされているからです。

  • 口の中に水を貯めておくことができない。
  • 舌が大きすぎて口の中が見にくい。
  • 舌の力が強く、歯科医師などが思い切り抑えないと治療ができない。 など

ただ、歯科医院でSASのきちんとした診断は下せません。だから医科と連携をとって、本当にSASかどうかを見極めてもらう必要があるのです。

また、治療時にも医科歯科連携が必要になる場面があります。SASの一般的な治療方法は、生活習慣の改善以外に大きく2つあります。

一つはCPAP(シーパップ)と呼ばれる治療です。Continuous Positive Airway Pressureの頭文字で、日本語では経鼻的持続陽圧呼吸療法と呼ばれます。

原理は非常にシンプルで、寝ている間に無呼吸になるのを防ぐために、鼻に装着したマスクに空気を送り込むというもの。この治療については、医科で対応してもらうことができます

もう一つはOA(Oral Appliance)と呼ばれる治療です。これは下顎の位置を前下方に動かした位置で固定するマウスピースを装着して寝てもらうというものです。

要は顎をしゃくれさせた状態で固定するのです。こうすることで気道が広がり、睡眠時の無呼吸を防げるというわけです。試しに顎をしゃくれさせたまま、いびきをかこうとしてみてください。おそらくできないはずです。

このOA療法はマウスピースを作成する必要があるため、歯科でしか受けることができません。したがって診断の時とは逆の連携、医科から歯科への連携が必要になるのです。

実際、SASの疑いのある患者様を歯科から医科にお送りしたあと、医科で診断を受けた患者様をOA療法のために再度歯科でお預かりするというケースもあります。だからこそ医科歯科連携が重要視されてきているのです。

院長 奥田

当院でもSASの疑いがある患者様は、信頼できる医科やOA療法を専門とする先生への紹介を行なっています。

まとめ

「最近、日中に知らない間に眠っていることがある」
「うちの旦那(嫁)のいびきがうるさい。もしかしたらSASなのかも?」

SASは命に関わる病気です。心当たりがある方は、かかりつけの歯科医師や医師、もしくは最寄りの睡眠時無呼吸外来まで一度相談してみてください。

院長 奥田

「ただのいびき」「疲れているだけ」などと安易に考えず、気になる症状があればすぐ専門家にご相談ください。

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院長紹介

奥田 裕太

1982年生まれ。大阪十三で「おくだ歯科医院」を経営。大切にしているのは「患者様と一緒に悩み、一緒に成長し、笑える、二人三脚の治療」。

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