デンタルコラム

「歯科の未来の波」デジタル技術を活用した歯科治療について

みなさん、こんにちは。おくだ歯科医院院長の奥田裕太です。

4月27日と28日に、ハワイ大学マノア校で開催されたOcean-Pacific-Restorative-of-Esthetic-Dentistry(ORE)という学会に参加してきました。

今回の本学会のテーマは「歯科の未来の波」。私はこのテーマに基づいて、現在おくだ歯科医院で取り組んでいる歯科治療のDX化(※)について講演をさせていただきました。

以下ではこの講演でお話しした内容を中心に、未来の歯科治療について、私の考えを簡単にお話しできればと思います。

※……デジタルトランスフォーメーション化。 デジタル技術を使用して、新たな価値を作り出し、ビジネスや市場の要求を満たすプロセスを指します。

目次
  1. デジタル技術を使用した効率的な歯科治療
  2. 「治療の質」と「患者様の満足度」は比例しない?
  3. デジタル技術導入のきっかけとなったDr.コーチマンの講演会
  4. これからの歯科治療について
  5. まとめ

デジタル技術を使用した効率的な歯科治療

OREの講演では、当院が6年以上取り組んできたDX化についてお話をさせていただきました。

具体的にはIOS(イントラオーラルスキャナー)を用いて、コンピューター上でお口の中の型取り(専門用語では「印象」と言います)を行う技術と、同じくコンピューター上で術後の笑顔をシミュレーションできるDSD(デジタル・スマイル・デザイン)というソフトを使用し、患者様と治療のゴールを共有しておく技術についてのお話です。

おくだ歯科医院ではこれらの技術を使用することで、従来よりも高品質かつ短期間で治療を進められるようになりました。

しかし一方で、6年以上実際に使用したからこそ、デジタル技術のみでは十分な治療ができないというケースにも直面してきました。そのような場合には、最新のデジタル技術と従来のアナログ技術を組み合わせて対応してきました。

講演ではこういったケースについても、具体的な症例を取り上げて紹介し、これからの歯科治療について私なりの考えをお話しさせていただきました。

「治療の質」と「患者様の満足度」は比例しない?

約6年前におくだ歯科医院がDX化に取り組み始めたのは、患者様へのアンケートがきっかけでした。

当院では定期的に患者様にアンケートにご協力いただき、院内の環境や治療結果などに関する満足度などをお聞きしています。

ポジティブな評価をいただくことが多い一方で、「治療結果に満足はしているが、治療期間が長かった」「高齢の自分に、3年を超える治療は辛いものがあった」といったお叱りの言葉をいただくこともありました。

当院のモットーは「患者様に絶対後悔させない治療」です。そのため、病気の原因を徹底的に治し、最低でも治療後10年間は再発しない丁寧な治療を追求しています。

しかし従来の技術では、治療の質を高めようとするほど治療期間は長くなります。結果、治療の質と患者様の満足度が比例しないという状態になってしまっていたのです。

デジタル技術導入のきっかけとなったDr.コーチマンの講演会

どうすればいいのかと悩んでいた時に参加したのが、私が所属しているJIADS(The Japan Institute for Advanced Dental Studies)という学会が主催する、Dr.クリスチャン・コーチマンの講演会でした。

Dr.コーチマンはブラジルの歯科医師で、DSDをはじめとする数多くの新しい歯科治療を考案した方です。この講演会に参加して初めてIOSやDSDについて詳しく知った時は、まさに目から鱗が落ちるような思いでした。

「これを使えば、よりスピーディに治療が進められるだけでなく、治療のゴールを患者様ときちんと共有しながら治療ができる!」

そう思った私は、講演会の翌月にはIOSやDSDの導入準備を始めたり、JIADSのDGP(Digital Global Prosthodontics)コースを受講したりして、院内のDX化を進めていったのです。

これからの歯科治療について

OREの講演でもお話しさせていただいたことですが、歯科治療においては、今後もDX化が加速し続ける一方で、人が人を治療する以上、従来のアナログ技術がなくなることはないと私は考えています。

とりわけ、車の自動運転でさえなかなか許可がおりない日本では、デジタル技術の普及にはどうしても時間がかかってしまいます。事実日本の保険制度ではIOSは保険診療外の技術です。

しかし同時に日本の働く世代の人口はどんどん減少していますから、女性の社会参加・高齢者の雇用継続と同じく、デジタル技術による自動化は避けられない問題です。

これは歯科医師の人数が減少傾向にある歯科界でも同じです。そのためおくだ歯科医院では今後も引き続き、デジタル技術とアナログ技術の最適な組み合わせ方を追求していきたいと考えています。

まとめ

OREでの講演は、慣れない海外での発表だったということもあってたいへん緊張しましたが、終わった後にたくさんの先生方からお褒めのお言葉をいただき、ほっとしました。

また、いろいろなご質問を通じて、今後歯科治療のDX化をさらに進めていくにあたってのヒントもいただくこともできました。

前述した通り、これからの歯科治療においては、デジタル技術はますます発達し、普及していきます。同時に、人の手によるアナログな治療の重要性・必要性は、今後も残り続けるはずです。

私はこのデジタルとアナログの「ちょうどよい落とし所」を追求し、高い品質を維持しながら、しっかりと患者様にもご満足いただける治療を提供していきたいと考えています。

今後とも精進を続けてまいりますので、引き続きおくだ歯科医院をよろしくお願いいたします。

院長 奥田

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院長紹介

奥田 裕太

1982年生まれ。大阪十三で「おくだ歯科医院」を経営。大切にしているのは「患者様と一緒に悩み、一緒に成長し、笑える、二人三脚の治療」。

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