みなさん、こんにちは。おくだ歯科医院院長の奥田裕太です。
起床時やマスクを着けた時、口臭が気になるということはありませんか?口臭と体の病気には深い関係がありますでも説明した通り、口臭には治療が必要なものと不要なものがあります。
治療が不要な口臭とは、ネギやニンニクなど食べ物由来の口臭、そして自分の口臭はひどいのだと思い込んでしまう心理的口臭です。
一方、消化器や呼吸器、糖尿病といった全身疾患が原因の口臭は当然ながら、歯周病や虫歯が原因の口臭も、治療が必要な口臭です。
今回はこのうち、歯周病や虫歯が原因の口臭について深掘りして説明したいと思います。
こんな口臭がしたら要注意
もし家族や友人などのお口、もしくは自分のお口から以下のような口臭がした場合は、注意が必要です。
- 卵の腐ったような臭い
- 玉ねぎが腐ったような臭い
- 生ゴミやキャベツが腐ったような臭い
卵の腐ったような臭いと玉ねぎが腐ったような臭いは歯周病が原因で発生する硫化水素とメチルメルカプタンという物質のせい。
生ゴミやキャベツが腐ったような臭いの原因は、単純に磨き残した食べカスが口の中で腐っている場合と、虫歯が進行した結果、歯の神経が腐って膿が出てしまっている場合とが考えられます。
いずれにせよ、歯周病・虫歯がかなり進行した状態なので、できるだけ早く歯科医院を受診することをおすすめします。
口臭対策グッズ・食生活・歯磨きで改善はできるのか?
日本人の中には「できることなら歯医者に行きたくない」という人が少なくありません。そのため口臭を指摘されたり、自覚したりしても、なんとかして自分で解決したいと考える人も多いでしょう。
しかし先ほど挙げたような口臭がある場合、一般的な口臭対策グッズ・食生活・歯磨きで改善するのは難しいのが現実です。
口臭対策グッズ
口臭対策としてマウスウォッシュやデンタルリンスを使う人も一定数います。
しかしこれらはあくまで歯や歯茎の表面にいる雑菌を消毒するためのもの。歯周病や虫歯のリスクを高める歯石がある状態で使っても、歯石の中にいる雑菌はそのままです。
そのため、使ってすぐは口臭が改善したような気がしても、またすぐに元通りになります。
食生活
食生活の改善は、やり方によっては歯周病や虫歯の予防になったり、直接口臭の改善に役立ったりすることがあります。
しかし、そもそもの原因である歯周病と虫歯を治療しなければ口臭は出続けるため、どれだけ食生活を変えても状況は変わりません。
歯磨き
正しい歯磨きは、歯周病や虫歯の予防に非常に効果的です。
私見では、歯周病や虫歯が進行する人は、歯ブラシやデンタルフロスを使用する習慣がない場合が多いので、正しい歯磨きを身につけることは、お口の健康にとっては大きな前進です。
ですが、すでに歯周病や虫歯になっている場合、どれだけ歯磨きを頑張っても、それだけでは完治させたり、症状を改善させたりすることはできません。そのため、これらが原因の口臭もやはり改善できないのです。
歯周病・虫歯による口臭を放置した場合
「なんとかして自分で解決したい」と歯医者に行くのを先延ばしにしている間、歯周病・虫歯による口臭は放置され続けることになります。
この場合、その人の歯と歯周組織(歯茎、骨)のうち、どちらが菌に弱いかどうかによって、2つの未来が待っています。
歯の方が弱い場合
歯の方が弱い場合、歯の間や窪みなど、磨き残しが多い部分から歯が溶けてしまい、虫歯を発症します。溶けて窪んだ部分はさらに磨きにくくなるため、磨き残しがどんどん蓄積していきます。
食べカスなどが36℃、湿度100%のお口の中に何日も放置されていると考えるだけでも、どんな口臭がするのか、想像がつくのではないでしょうか。
しかも磨き残しが蓄積するほど虫歯は進行します。歯の中にある神経にまで到達すると、その神経をも蝕み、腐らせていきます。
結果、患部から出る膿が生ゴミやキャベツが腐ったような臭いを発生させ、かなりきつい口臭を放つようになるのです。
歯周組織(歯茎、骨)の方が弱い場合
歯周組織の方が弱い場合は、歯を支える歯茎や骨の方が炎症を起こし、歯周病(歯肉炎、歯槽膿漏)を発症します。
症状が進行すると、骨や歯茎が痩せてしまい、骨と歯周組織の間に隙間(歯周ポケット)ができ、歯周病菌が繁殖していきます。
歯周病菌のほとんどは嫌気性菌といって、酸素を好みません。歯周病が進行し、歯周ポケットが深くなるほど、ポケット内の酸素が減っていくため、菌はどんどん元気になります。
さらに炎症を起こした歯周組織は出血しますが、嫌気性菌は血液中の鉄分を養分として、卵や玉ねぎが腐ったような臭いの原因であるメチルメルカプタン、ジメルサルファイドを作り出します。
これらの物質には毒性があるため、歯周病はさらに進行します。
結果、歯周病が進行すればするほど、口臭もますます強くなり、ついには他人とのコミュニケーションにも問題が出てくるほどになってしまうのです。
口臭外来での口臭分析や歯周病のセルフチェックの方法
人間は刺激に慣れる生き物です。そのためどんなに自分の口臭がきつくても、それが日常的になれば慣れてしまい、気づくことが難しくなります。
そこで以下では、口臭外来での口臭分析と歯周病のセルフチェックという、客観的に自分の口臭と向き合うための2つの方法を紹介します。
口臭外来での口臭分析
口臭分析とは
患者様の口臭の原因を特定するために、様々な方法で行われる検査を口臭分析と言います。のことを指します。原因を特定することで適切な治療を行えると同時に、口臭の自覚のない人の早期発見早期治療にもつながる、とされています。
口臭分析の方法
口臭分析には一般的に以下のような方法があります。
- ガスクロマトグラフィー法
- 電子鼻法
- 感覚評価法
1と2が専用の機器を使った方法で、3が歯科医師や歯科衛生士の嗅覚で口臭を評価する方法です。口臭外来のある歯科医院やクリニックでは、これらの方法を組み合わせることで、より正確な診断を行うこともあります。
歯周病のセルフチェック
臨床歯周病学会のホームページには、以下のチェックリストを使った歯周病のセルフチェックリストが紹介されています。
全体
1.口臭を指摘された・自分で気になる
2.朝起きたら口の中がネバネバする
3.歯みがき後に、毛先に血がついたり、すすいだ水に血が混じることがある
歯肉の症状
4.歯肉が赤く腫れてきた
5.歯肉が下がり、歯が長くなった気がする
6.歯肉を押すと血や膿が出る
歯の症状
7.歯と歯の間に物が詰まりやすい
8.歯が浮いたような気がする
9.歯並びが変わった気がする
10.歯が揺れている気がする
判定
・チェックが1~3個の場合
歯周病の可能性があるため、軽度のうちに 治療を受けましょう。
・チェックが4~5個以上の場合
中等度以上に歯周病が進行している可能性 があります。早期に歯周病の治療を受けま しょう。
・チェックがない場合
チェックがない場合でも無症状で歯周病が進行することがあるため1年に1回は歯科検診を受けましょう。
おくだ歯科医院の口臭治療
当院では口臭外来で行うような口臭分析は基本的に行いませんが、診察時の検査の中で歯周病や虫歯だけでなく、全身疾患や心理的な影響も考慮に入れて、治療方針を決定していきます。
その際に歯周病や虫歯が原因であると特定できた場合は、歯周病を本気で治したいあなたへで説明しているような手順で、それらの治療に専念します。
口臭が出るほどの歯周病や虫歯の治療は大掛かりになる場合もあるため、時間も労力もかかりますし、時には痛みも伴いますが、患者様の将来のために二人三脚でお口の健康と向き合っていければと思います。
まとめ
- 卵の腐ったような臭い
- 玉ねぎが腐ったような臭い
- 生ゴミやキャベツが腐ったような臭い
こうした臭いがする方が周りにいれば、その人の歯周病・虫歯はかなり進行していると考えられます。なかなか口臭を指摘するのは勇気がいりますが、相手のことを思うのなら歯科医院での治療を受けるよう伝えてあげてください。
また、もしこれを読んでいる方で、周囲の人に口臭を指摘されたことがある場合は、「気のせい」だと誤魔化さず、素直に歯科医院を受診することをおすすめします。
この種の口臭は、放置していても自然に治ることはありません。むしろ悪化し、自分の歯を失ったり、治療費用が高くなったりするばかりです。歯周病・虫歯の治療は早期発見早期治療が鍵。ぜひ一度おくだ歯科医院にご相談ください。