デンタルコラム

虫歯の治療における保険診療と自費診療の違い

こんにちは、おくだ歯科医院院長の奥田裕太です。

当院では患者様のお口の健康状態を診たうえで、積極的に自費診療をご提案することがあります。それがなぜかという理由は、おくだ歯科医院から重要なお知らせや、当院が自費診療をご提案する理由についてでも解説させていただきました。

しかし自費診療というと、「メリットは見た目が良くなる程度」と考える方も多いのではないでしょうか。

確かに見た目が良くなるということは、笑ったり、お話ししたりする際に非常に大きなメリットです。ただし、私は見た目の改善をあくまで補助的なメリットだと考えています。

今回は虫歯の治療を例にとって、保険診療と自費診療の違いについて、より具体的にご説明します。

目次
  1. 保険診療と自費診療では「表面」が違う
  2. 保険診療と自費診療では「隙間」が違う
    1. 型取りの精度
    2. 歯科技工士の技量
    3. 拡大率
  3. まとめ

保険診療と自費診療では「表面」が違う

虫歯の治療では患部を削ったり、抜いたりしたあと、その部分に詰め物や被せ物を入れます。このとき、保険診療ではパラジウムやプラスチックといった素材を使い、自費診療ではセラミック(=陶器)を使います。

両者の大きな違いは表面です。というのも、パラジウムやプラスチックは表面が比較的粗く、セラミックの方が比較的滑らかなのです。

たったそれだけかと思うかもしれません。しかし長期的に見ると、この違いが非常に大きな差を生みます。

大人の口の中には、300〜700種類の細菌が生息しており、歯を良く磨く人で1,000〜2,000億個、あまり磨かない人で4,000〜6,000億個、ほとんど磨かない人で1兆個が住みついていると言われます。

実はこれ、お尻の細菌の数と大差がありません。プラーク(歯垢)1gに含まれる細菌の数は、便1kgと釣り合う、とも言われます。

端的に言えば、どんなに清潔に保とうとしても、お口の中は湿度約100%、温度は約36℃の細菌にとっての天国なのです。

このような状況下で、表面に凹凸が多いパラジウムやプラスチックを使うと、どうしても細菌が繁殖しやすくなり、結果として虫歯が再発するリスクも高まります

一方で、凹凸が少ないセラミックなら、比較的虫歯の再発リスクを低減できるのです。

主婦の方ならわかるかと思いますが、陶器のコップよりも、金属やプラスティックのコップの方が素材の劣化(汚れ、着色など)が早い傾向があります。詰め物・被せ物の素材も同じです。

保険診療の場合自費診療の場合
表面が比較的粗いパラジウムやプラスチックを使うため、細菌が繁殖しやすく、虫歯の再発リスクが高い。表面に凸凹の少ないセラミックを使うことで、虫歯の再発リスクを引き下げることができる。

また近年は、パラジウムなどの金属が長期間口の中にあることで、金属アレルギーを引き起こす可能性も指摘されており、海外では歯科でパラジウムを使った治療を行うことはすでに禁止され始めています。

色や見た目だけでなく、衛生面(プラークがつきにくい)や健康面(アレルギーなどのリスクが低い)を考えても、自費診療のセラミックの方がメリットは大きい

だから当院は虫歯治療において積極的に自費診療をご提案するのです。

保険診療と自費診療では「隙間」が違う

私たちが虫歯治療において自費診療をおすすめするのには、もう一つ大きな理由があります。それは保険診療と自費診療では隙間が全く違うのです。

詰め物や被せ物は、そのままでは外れてしまうので、接着剤のようなものを歯と詰め物・被せ物の隙間に入れて固定します。

しかし接着剤はどうしても経年劣化してしまいます。このとき、歯と詰め物・被せ物の隙間が大きいと、そこに虫歯菌が侵入し、虫歯の再発につながります。

先ほども書いたように、お口の中には無数の細菌が存在します。唾液が入るだけのスペースがあれば、虫歯にとっては十分なのです。

したがって虫歯の治療においては、歯と詰め物・被せ物の隙間をいかに狭くするかが重要になります。わかりやすく言えば、自費診療の方がこの隙間を狭くできるので、当院では虫歯治療において自費診療をおすすめするのです。

歯と詰め物・被せ物の隙間をできるだけ狭くするために必要なのは、大きく3つ。

  1. 型取りの精度
  2. 歯科技工士の技量
  3. 拡大率

それぞれについて、保険診療と自費診療の違いを見ていきましょう。

型取りの精度

保険診療の場合自費診療の場合
型取りには寒天を使う。寒天は乾燥に弱く、1分で変形する。48時間変形を起こさないシリコン製の材料で型取りする。すべてをコンピュータ上でデザインする場合もある。
型取りの後、膨張しやすい素材である石膏を使い、模型を作る。コンピュータを使う場合は、3Dプリンタなどの最新機器を使用して、模型を作成する。

保険診療では、詰め物・被せ物の作成過程で使う素材自体が、非常に変化しやすいものを使用します。

変化しやすいということは、誤差が生まれやすいということです。結果、歯と詰め物・被せ物の隙間も広くなりやすいのです。

一方で自費診療では変化しにくい素材を使って作成したり、場合によっては(全く変化しない)コンピュータのデータ上で処理したりすることで、誤差が出ないように作成されます。だからこそ、ミクロン単位で隙間を狭くできるのです。

歯科技工士の技量

どんなに模型が精巧に作られていても、詰め物・被せ物を形にする人=歯科技工士の技量が伴わなければ、最終的な隙間は大きくなってしまいます。

同じ歯科技工士でも技術の差はピンからキリまであります。

歯科医師の免許を持っていても、1年目の新人歯科医師と、様々な修羅場をくぐり抜けた30年目のベテラン歯科医師の技術力が全く違うのと同じです。

また作成する費用も大きく違います。500円のものをスピード重視で10個作って5,000円稼ぐ人もいれば、5,000円のものを手間暇かけて1つ作って5,000円稼ぐ人もいます。

歯と詰め物・被せ物の隙間を小さくするには、手間暇かけて1つ作る人に作成を依頼したいところ。

しかし保険診療の詰め物・被せ物は値段が国のルールで決められているため、その歯科技工士の方に依頼をした時点で歯科医院側は赤字になってしまいます。

当院が自費診療をご提案するのには、こうした腕の良い歯科技工士の方に詰め物・被せ物を作ってもらうためでもあるのです。

拡大率

保険診療の場合自費診療の場合
詰め物・被せ物の仕上げをする際、裸眼で行う。詰め物・被せ物の仕上げをする際、14〜20倍に拡大できるマイクロスコープを使用する。

どれだけ詰め物・被せ物の精度が高くても、仕上げをするのは歯科医師です。しかし裸眼で高精度の仕上げをするのには限界があります

人間の目では見えないレベルの隙間でも、唾液やその中の細菌は入り込めるからです。そのためより正確に仕上げをするためには、14〜20倍のマイクロスコープで拡大しながら治療をする必要があります。

もちろん保険診療でも、拡大率の高いマイクロスコープを使うことはできます。

しかし適切な設備投資をしようと思うと、どうしてもコストがかかるため、自費診療をメインにせざるを得ないというのが実情なのです。

まとめ

虫歯の治療をする際、自費診療であればセラミックが使えるので、確かに見た目はより自然になります。しかしそれだけが自費診療のメリットではありません。

おくだ歯科医院が自費診療をおすすめするのも、見た目のメリットよりも、長期的な虫歯の再発リスクが下げられるという点を重要視しているからなのです。

院長 奥田

お口の健康に真剣に向き合いたいと考えるのであれば、ぜひ自費診療をご検討いただければと思います。

診療内容

当院について

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院長紹介

奥田 裕太

1982年生まれ。大阪十三で「おくだ歯科医院」を経営。大切にしているのは「患者様と一緒に悩み、一緒に成長し、笑える、二人三脚の治療」。

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