みなさんこんにちは。おくだ歯科医院、院長の奥田裕太です。
最近自分の口臭がなんとなく気になる。
恋人(もしくは友人)の口臭が気になるけど、なかなか言い出せない。
そんな人も多いのではないでしょうか。もし自分の口臭に自覚があるのなら、まず歯医者に行くことをおすすめします。
また口臭が気になる人が周りにいるのなら、勇気を出して伝えてあげて、歯医者に行くよう助言してあげてください。
なぜなら多くの場合、口臭は自分で気がつけないうえ、お口はもちろん、体の病気とも深い関係にあるからです。
今回は口臭の原因について詳しく解説するとともに、お口の臭いと体の病気の深い関係についても解説します。
治さなくてもいい口臭、治すべき口臭
口臭と一口に言っても、治さなくても問題ない口臭と、放っておくと健康や人生に悪影響を及ぼす口臭があります。
まずは自分や、恋人や友人などの大切な人の口臭が、どちらに分類されるのかを知っておきましょう。
治さなくてもいい口臭
- 朝起きたときの口臭が気になる。
- 仕事でトラブルが起きてストレス状態が続くと、口の臭いがきつくなる。
- 生理中(もしくは妊娠してから)、口の臭いがきつくなる。
口臭が気になるのが上記のようなタイミングの場合、それは治さなくてもいい口臭の可能性が高いと言えます。
こうした口臭は生理的口臭と言って、誰にでもある臭いで、歯磨きや食事などの生活習慣の改善で良くなるからです。
またニンニクやネギ、キムチやお酒、タバコなど飲食物や嗜好品による口臭も、一時的なものですから、時間が経てば消えていくので、治療の必要はありません。
あるいは、以下のような場合も歯医者での治療は不要です。
- 周りからは何も言われていないが、自分の口臭が他人に不快感を与えている気がする。
- ひとりでいるときより、誰かといるときの方が口臭が気になる。
- 既に歯医者や耳鼻科に行ったが「異常がない」と言われた。
これは心理的口臭と言われるもので、自分の口臭はひどいのだと思い込んでしまっている状態です。そのため歯医者で治療を受ける必要はありません。
ただ、症状によってはカウンセリングや心療内科等、別の分野の専門家の力を借りた方が良いケースもあります。
治すべき口臭
- 卵が腐ったような臭いがする。
- 生臭い、魚や野菜が腐ったような臭いがする。
- 生ゴミのような臭いがする。
生理的口臭のような一時的なものではなく、慢性的に上記のような臭いが口からしている場合は、何かしらのお口の病気を抱えている可能性があるため、歯医者の受診をおすすめします。
歯科医院では医師が直接嗅いで口臭を判断する官能試験のほか、ガスクロマトグラフィーという手法を使って、お口の中からどれだけの臭い物質が出ているかを分析することができます。
この検査で基準値を超える臭い物質が見つかれば、口臭があると判断されます。
ただ、これらの口臭は歯医者にきちんと通いさえすれば、すぐに治すことができます。
口臭の原因が虫歯なら虫歯の治療をする、歯周病なら歯周病の治療をする。
場合によっては歯を抜かなければならないケースもありますが、いずれにせよ、正しい治療をすれば自ずと口臭もなくなります。
逆に言えば、放っておけば口臭がひどくなるだけでなく、健康な歯を失ったり、それが原因で好きなものを食べられなくなったり、治療費が余計にかかってしまったりと、損ばかりが増えていきます。
ですから、自分の口臭が気になる人は早いうちに歯医者に行って欲しいですし、大切な人の口臭が気になるならきちんと伝えて、歯医者に行くよう促してあげて欲しいのです。
お口の臭いと体の病気の深い関係
しかし、口臭の中でも、人体に影響はあるけれど私たち歯医者ではどうにもできない、というものもあります。
- 少し甘さを感じるような口臭がある。
- 玉ねぎが腐ったような口臭がある。
- 肉が腐ったような口臭がある。
- 酸っぱい口臭がある。
- アンモニア臭がする。
- そのほか、独特な臭いがする。
というのも、こうした臭いが口からしている場合は、お口以外の体の病気にかかっている可能性があるからです。
参考までに、下表にお口の臭いと体の病気の関係についてまとめてみました。
臭いの種類 | 罹患の可能性がある病気 |
甘い臭い | 副鼻腔炎(蓄膿症)や咽頭炎、喉頭炎など |
玉ねぎが腐ったような臭い | 大腸癌など |
肉が腐ったような臭い | 肺癌や肺腫瘍、胃癌、食道癌など |
酸っぱい臭い | 糖尿病 |
アンモニア臭 | 肝硬変、肝臓癌 |
例えば、糖尿病が進行すると体内の糖をエネルギーに変換できなくなるため、その代わりに脂肪を分解してエネルギーに変換するようになります。
脂肪を分解するとケトン体という物質が必要になるのですが、このケトン体の主成分「アセトン」には独特の酸っぱい臭いがあります。
結果、糖尿病の傾向がある方からは、酸っぱい口臭がするというわけです。このように、お口の臭いと体の病気には密接な関係があるのです。
副鼻腔炎(蓄膿症)や咽頭炎、喉頭炎などの疑いがあるなら耳鼻咽喉科、肺癌や肺腫瘍、胃癌、食道癌などの可能性があるなら循環器内科、消化器内科、腫瘍内科、といった具合に、受診するべき診療科は病気ごとに変わってきます。
「じゃあ歯医者に行っても意味がないのではないか?」と思うかもしれません。
もちろん歯医者でこれらの病気を治すことはできないのですが、検査等の結果から病気の可能性を判断し、患者様に提携する病院やクリニックを紹介することはできます。
またご自身で受診されるよう促したりと、治療のためのサポートをすることも可能です。
事実、近年は医科(内科や外科)と歯科が連携し、患者様の総合的な健康をお守りする医科歯科連携が国主導で進んでいるため、歯科医院によっては様々な医科と連携しているところもあります。
だからこそ口臭が気になるなら、まずは歯科医院に行って欲しいのです。
まとめ
自分の口が臭いということを認めるのは難しいかもしれませんし、親しい間柄でも口臭を指摘するのは気が引けます。
しかしここまで見てきたように、口臭はお口の健康のバロメータでもあり、体の健康のバロメータでもあります。
確かに、口臭の90%は口の中に原因があると言われます。しかし裏を返せば残りの10%は重篤な全身疾患の可能性があるわけです。
だから「たかが口の臭い」とあなどらず、気になっているのならまずは一度相談して欲しいですし、大切な人には愛を持って伝えて歯医者に行くよう促して欲しいのです。
口臭には専門家の診断が必要です。ガムやブレスケアなどでお茶を濁すのではなく、歯科医院に相談してください。