デンタルコラム

歯医者が伝えたい天然の歯の大切なお話【後編】

歯

みなさん、こんにちは。大阪・十三のおくだ歯科医院、院長の奥田裕太です。

天然の歯は貴重なもの。歯科医師はみな、「患者様には可能な限り天然の歯で生活して欲しい」と願っています。

なぜ私たちがこんなことを考えるのかについては、歯医者が伝えたい『天然の歯』の大切なお話【前編】でお話ししました。

しかし一方で、歯科医院では治療すれば残せそうな歯や健康な歯に対して、「未来のお口の健康のために抜く」という決断をすることがあります。

歯医者が伝えたい天然の歯の大切なお話【後編】では、これがいったいどういうことなのかについて、「歯並びを整えるため」「適切なタイミングでインプラントを埋め込むため」という2つの視点からお話ししたいと思います。

目次
  1. 歯科医師が天然の歯を抜く2つの理由
    1. 理由1:歯並びを整えるため
    2. 理由2:適切なタイミング(年齢)でインプラントを埋め込むため
  2. まとめ

歯科医師が天然の歯を抜く2つの理由

理由1:歯並びを整えるため

お子様の場合

矯正治療を受けられた患者様や、お子様の矯正治療に付き添われている親御様であれば、「健康な歯を抜く」ということのイメージがつきやすいかもしれません。

歯並びが悪くなる原因の一つは、顎と歯のサイズが合っていないことにあります。

歯に対して顎が小さすぎると、「叢生(そうせい)」といって、いわゆる「八重歯」のように、顎に納まらなかった歯が外に飛び出して生える場合があります。

こうなると解決する方法2つだけ。顎を広げて並べ直すか、歯の数を減らして並べ直すかです。どうしても本が本棚に収まらないなら、本棚を買い直すか、本を手放すかしかないのと同じです。

成長期のお子様であれば、顎に専用の装置を入れて成長を促進し、顎を広げることが可能ですが、成長期を終えているお子様の場合はこの方法がとれません。

こうなると虫歯にも歯周病にもなっていない歯を抜いて数を減らすしかない、というわけです。

笑顔の子供

抜かずになんとかできませんか?健康な歯を抜くなんて……

親御様からは、こうした質問がよく投げかけられます。その時は例えば次のようにお答えしています。

「顎のスペースが足りていない状態で矯正をすると、上下の噛み合わせがコントロールできず、きちんとした噛み合わせを作れない可能性が高くなります。

ですが、矯正治療の本来の目的は、一部の歯に負担をかけることなく全ての歯が均等にあたり、しっかりと食事を取れる噛み合わせに構築し直すことです。

そのためには、歯の数を減らして、正常な発育を促す必要があります。もちろん無理にとは言いませんが……どういたしますか?」

親御様にとって大切なのはお子様の将来の幸せです。そのためお子様の未来のために、今歯を抜く必要があるのだとご理解いただければ、私たちの提案にご納得いただくことができる、と信じています。

大人の方の場合

当院では、大人の方の場合でも、未来のために健康な歯を抜くべきだと判断するケースがあります。

例えば、ある歯が噛み合わせを乱していたり、適切ではない位置に生えていたりして、インプラントを埋め込む際に邪魔になるようなケースです。

あるいは親知らずのように、横向きに生えていたり、傾いて生えていたりする歯です。その歯自体が健康であっても、

  • 隣り合う歯の虫歯や歯周病の原因になる
  • 上(もしくは下)の歯に当たって悪影響を与える

といった可能性が高い場合は、抜歯をすることがあります。

院長 奥田

大人でも子供でも、歯を抜くというのは不安なものです。しかし実際に抜いてみれば「意外とあっという間だった」という患者様も少なくありません。怖がらず、安心して当院にお任せください。

理由2:適切なタイミング(年齢)でインプラントを埋め込むため

また「年齢」を理由に、治療すれば残せそうな歯を抜くケースもあります。

例えば40代の方が虫歯や歯周病になったとしましょう。現段階でその歯は、治療をすれば10年持つとします。

もちろん年齢だけではなく、その時の健康状態や全身疾患の有無も考慮する必要はありますが、このようなケースでは「歯を残す」という判断をする可能性が高いと言えます。

なぜなら、50代の時点で歯が壊れ、インプラントが必要になったとしても、何の問題もなく治療ができる可能性が高いからです。

一方で、70代の患者様が同じ状況になった場合、当院では「歯を抜く」という判断をする可能性が高くなります。

なぜなら10年後、80代になってからインプラント治療をするのは、さまざまな理由でリスクが高いからです。

であれば70代の時点で抜歯をし、インプラントを埋め込む方が結果的に患者様のQOLの維持向上につながる可能性が高いのです。

まとめ

1本の歯を見て、その歯をどうするかを考える治療方法を「一歯単位の治療」と呼びます。「Aという歯は健康なのだから、抜く必要がない」と考えるのが、この治療方法の発想です。

対して、現在だけでなく、将来の患者様のお口全体を考えて、1本の歯をどうするかを考える治療方法を「一口腔単位の治療」と呼びます。今回お話しした2つの視点、すなわち、

  • 歯並びを整えるために健康な歯を抜く
  • 適切なタイミングでインプラントを埋め込むために、治療すれば残せる歯を抜く

と考えるのは、この治療方法の発想です。

大阪・十三のおくだ歯科医院では、常にこの「一口腔単位の治療」の考え方に基づいて患者様のお口と向き合っています。

もちろんどのように治療するかを最終的に判断するのは、あくまで患者様です。

【前編】・【後編】でお話しした内容を丁寧に説明したうえで、患者様が「残したい」「抜いてしまいたい」と希望された場合は、ご希望通りの治療を検討することもあります。

しかし患者様の意思を尊重することが、必ずしも患者様のお口のためになるとは限りません

そのため当院では、私たちの治療方針をご納得いただけるまで何度も説明を重ねることもあります。

「融通が効かない」と感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、それだけ真摯に患者様のお口の健康と向き合っているのだとご理解いただければ幸いです。

院長 奥田

何より大切なのは、患者様にできるだけ長く笑顔で、幸せに日々を過ごしていただくこと。当院はそのために、徹底的に考え抜いた治療をご提案しています。

診療内容

当院について

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院長紹介

奥田 裕太

1982年生まれ。大阪十三で「おくだ歯科医院」を経営。大切にしているのは「患者様と一緒に悩み、一緒に成長し、笑える、二人三脚の治療」。

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