こんにちは、大阪・十三のおくだ歯科医院院長の奥田裕太です。
歯科医療の技術や知見は常に進化を続けています。そのため、これからの歯科医療を語るに当たっては様々な切り口があります。
今回はそのうち「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と「歯の健康教育」という2つのキーワードについて、私が1月に機会をいただいた講演活動を振り返りながらお話ししたいと思います。
歯科医療の「DX(デジタルトランスフォーメーション)」

DXとは、デジタル技術を活用して仕事の手順やお客様(歯科医院なら患者様)の体験や組織の文化などを根本から変革し、新しい価値を作り出すことを指します。
金融業や保険業、小売業などで浸透している考え方ですが、歯科医療の世界でも、このDXの波が確実に押し寄せています。
例えば、診療記録のデジタル化、AIによる診断支援、オンラインを活用した情報共有など、様々な変革が進んでいます。実際、当院でも次のような技術を導入して、DXを進めてきました。
- インプラント手術のためのシミュレーションソフトやナビゲーションシステム
- お口の中の形状をデジタルデータとしてスキャンする光学印象
- 自動精算機とインターネットを使用した予約システム・オンライン診察券 など
これらにより当院の業務の生産性は飛躍的に向上。患者様の治療によりじっくりと向き合えるようになりました。

1月は富田林歯科医師会とJIADSのDGPコース(私が講師を務める歯科医師向け講座)にて、こうしたDXの知見を共有する機会をいただきました。
富田林歯科医師会での講演
富田林歯科医師会では1月13日の新年会の席にて、90分間の講演をさせていただきました。多くの経験豊富な先生方の前で、当院で取り組んでいる歯科医療のDXについてお話ししました。
日本では今後、高齢化に伴う人手不足が加速していくと考えられています。
そのため、すでにコンビニやレストランでは、高齢者の再雇用や外国人雇用、セルフレジやモバイルオーダーなどの自動化により、人手不足に対応するのが当たり前の世の中になっています。
この流れは、近い将来必ず医療現場にもやってきます。事実、パーソル総合研究所「労働市場の未来推計2030」によれば、2030年には医療・福祉業界で187万人の人手不足が生まれると言われています。
こうした状況を打開するべく、歯科医療のDXは一般の患者様はもちろん、歯科医師でさえ驚くほど進化しています。
例えば、4年前にドイツのケルンで開催された国際デンタルショー(IDS)では、AIを活用した診断・治療計画システムや、オンライン上の医療情報共有システムが多数発表されていました。
倫理面や安全面での課題はありますが、近い将来、歯科医療においてもAIやオンラインシステムによる自動化が進むと予想されます。
もちろん、人を治療する以上、歯科医師の手技や専門知識は今後も不可欠です。しかし、新しいテクノロジーをうまく活用しながら、より良い医療を提供する方法を模索する時代が来ていることは間違いありません。
先生方からは「そこまでDXを推し進める必要があるのか?」といった質問も含め、様々なディスカッションがあり、私自身も多くを学ぶ機会となりました。
歯科医師会の重鎮の先生方の前でお話しするのは緊張しましたが、貴重な経験となりました。
JIADSのDGPコースでの講演
1月18日・19日には、東京銀座でJIADS(The Japan Institute for Advanced Dental Studies)のDGPコース(Digital Global Prosthodontics)で講師を務めました。
このコースは、シアトルスタディクラブのボードメンバーである須田剛義先生と筒井純也先生、JIADS講師の瀧野裕行先生の監修のもと開催されている合計6日間のプログラムです。
私は口腔内スキャナー(IOS)の導入方法や実践的な使い方、デジタル技術を活用した治療効率化について講義を担当しました。
IOSとは、従来の印象材(お口の中の型をとる材料)を使用せずに、口の中を3Dデジタルデータとして記録できる機器です。
患者様の口の中にスキャナーを入れて動かすだけで、精密な3Dデータを瞬時に取得することができます。
患者様にとっては印象材による不快感がなく、私たち医療者側にとっても作業時間の短縮や精度の向上というメリットがあります。
というのも、IOSを通じて取得したデータはオンライン上で歯科技工所と共有できるため、より精密な補綴物(被せ物や詰め物)の製作が可能になります。
また、患者様もご自身の口腔内の状態を3D画像で確認できるため、治療計画の説明もイメージしやすくなります。
さらには、過去のデータと比較することで、時間の経過に伴う変化も把握しやすくなるなど、診療の質を高める効果もあります。
この他、歯周病治療や審美治療におけるデジタル技術の活用法についても解説しました。
受講生には経験豊富な先生方も多く、当コースで講師として登壇する際は責任の重さを感じますが、同時に教えることが自分自身の復習にもなり、成長につながると実感しています。
若い世代向けの「歯の健康教育」〜高校生を対象とした講演会〜

生涯にわたって健康な口腔を維持するために必要な知識と習慣を伝えること、これが「歯の健康教育」です。特に若い世代への教育は、将来の歯科疾患予防において非常に重要な役割を果たします。
なぜなら、虫歯や歯周病は糖尿病や高血圧と同じ生活習慣病の仲間だからです。
子供の頃に身につけた正しい食習慣が将来の生活習慣病のリスクを低下させるのと同じように、若いうちから正しい歯のケア方法を身につけることで、将来の虫歯や歯周病リスクを大幅に減らすことができるのです。
また、若い世代に歯科医療の重要性を伝えることは、未来の歯科医療を支える人材育成にもつながります。
いずれ来る人手不足に備えるという意味でも、若い世代向けの「歯の健康教育」は非常に重要な役割を担っているのです。
こうした考えのもと、1月25日に地域の高校生向けに歯の健康教育を行ってきました。
当院の歯科衛生士である晋山と太田を中心に、歯の大切さや歯周病・虫歯予防、女性の身体と歯の関係、間食の適切な取り方などについて講話を実施しました。
生徒さんは熱心に聞いてくれただけでなく、質疑応答の時間にも積極的に質問をしてくれ、おくだ歯科医院チーム一同、感無量の思いでした。

これから成長していく若い世代に歯の健康の大切さを伝えることができたのは嬉しい限りです。
また、この活動をきっかけに「歯科衛生士ってかっこいい!」「自分もなってみたい!」と思ってくれる生徒さんがいれば、さらに嬉しく思います。
まとめ
おくだ歯科医院では、最新のデジタル技術と確かな手技を組み合わせた質の高い歯科医療を提供するため、常に学び続けています。
お口の健康について気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

1月は土曜日にお休みを頂いてご迷惑をおかけしましたが、様々な講演活動を通じて得た知識や技術は、すべて患者様の治療に活かしてまいります。今後ともおくだ歯科医院をよろしくお願いいたします。