デンタルコラム

「奥歯がない人」に歯医者に来て欲しい理由

みなさん、こんにちは。おくだ歯科医院院長の奥田裕太です。

「虫歯を放っておくと歯を抜かないといけなくなるので、早めに歯医者にいきましょう」
「歯周病を放置すると歯が溶けてしまうので、悪化する前に歯医者にいきましょう」

当院を含め、歯科医院のブログなどでは繰り返し言われていることです。では歯科医院に行かず、虫歯や歯周病を放置し続けるとどうなるのでしょうか。

今回は現在奥歯がない、あるいは奥歯を失って入れ歯を使っている人が、歯科医院に行かずにいるとどうなるのかについて、ご説明しようと思います。

ご本人はもちろんのこと、ご家族に奥歯を失った人や歯並びが悪い人がいる方にも、ぜひご一読いただければ幸いです。

※お口の中の写真などが掲載されているため、苦手な方やお食事中の方はあらかじめご注意ください。

目次
  1. 「1本の奥歯」が招く、お口の健康被害とは?
    1. インプラント治療により、残された歯を守ることができた症例
  2. こんな歯並びの人は「黄色信号」です
  3. まとめ

「1本の奥歯」が招く、お口の健康被害とは?

奥歯を1本失っても「他にも歯はあるんだから、たかが1本、気にしなくていいだろう」と思っている人は少なくありません。しかし、実はこの1本が重大なお口の健康被害を招くことがわかっています。

例えば下顎、右側の奥歯を1本失ったとしましょう。これを放っておくと、以下のような流れでお口全体に健康被害が広がっていってしまいます。

  1. 噛み合う相手がなくなった上顎、右側の奥歯が、相手を探して移動し始める。
  2. 上顎、右側の奥歯の移動により、お口全体の噛み合わせが狂い始める。
  3. 入れ歯を入れていても天然の歯に比べて噛みにくいので、左側中心で食事をするようになる。
  4. 左右の筋肉、関節のバランスが崩れていく。
  5. 下顎、左側の奥歯に負担が集中し、歯が揺れてきたり、割れてしまったりして反対の奥歯を失ってしまう。奥歯で食事をすることができなくなる。
  6. 奥歯で噛めないので、前歯を中心に食事をするようになる。
  7. 上顎の前歯に負担が集中し、同じように歯を失う。
  8. 上の奥歯と下の前歯だけが残り、食べ物をきちんと噛むことができなくなる。

このように説明をしても「自分は大丈夫」と思いたい人もいるかもしれません。

しかしこの流れは、何十年とかけて歯科界が研究を重ねてきた結果、明らかになったもの。奥歯が抜けただけで、その他に何も問題が起きないまま健康を維持し続けられる人は稀です。

単なる噛める・噛めないといった機能面以外にも、様々な問題が起きます。

  • 歯周病、虫歯、のリスク上昇。
  • 糖尿病、高血圧などの生活習慣病リスクの上昇。
  • 顔の形の変化、老けて見られる。
  • 認知症リスクの上昇、体に力を入れにくくなる、肩こり・腰痛リスクの上昇 など

「どうして歯の問題が生活習慣病につながるの?」と思うかもしれません。

しかしきちんと食べ物を噛めなくなれば、ご飯や麺類といった柔らかな炭水化物を好んで食べるようになります。すると血糖値のコントロールができなくなるので、糖尿病のリスクが上がります。

また、食べ物は噛むことで味が濃くなります。逆にちゃんと噛めなければ、同じ食べ物でも薄味に感じるようになります。すると濃い味付けを好むようになり、塩分の摂取量が増加。結果として高血圧のリスクが高まるのです。

ところが、⑧まで進行してしまうと、そこから噛み合わせを安定させるのは至難の業。最悪の場合、残っている上顎の奥歯をあえて抜くことで、噛み合わせのずれを治すこともあります。

これを避けるためには、しっかりと噛める奥歯を作る必要があります。おくだ歯科医院ではインプラント治療をおすすめしていますが、若い方の場合は別の歯の移植を検討するケースもあります。

院長 奥田

すでに奥歯を失っている人は、できるだけ早い段階で適切な治療を受けることをおすすめします。

インプラント治療により、残された歯を守ることができた症例

こちらの患者様は、32歳で下顎、右側の奥歯を失いました。しかし、その際にインプラント治療を選択してくださったおかげで、60歳を迎える現在も、他の奥歯を失わずに過ごされています。

治療終了時の状態(34歳)。
定期検診以降後25年の状態(60歳)。手前の歯が割れてインプラントを1本追加していますが、その他の歯は25年間残すことができました。

もしこの時インプラント治療をしていなければ、この患者様の下顎、左側の奥歯は早い段階で抜歯になっていたはずです。適切な噛み合わせを維持することの重要性を痛感する症例です。

治療概要
下顎、右側の奥歯を失った状態で来院。虫歯、歯周病の治療を行ったのち、患者様の合意のもと、2本のインプラントを埋入しました。定期検診に移行したのち、手前の歯が破折したため、インプラントを1本追加。その後は1本の歯を失うこともなく、現在(60歳)に至ります。
主なリスクと副作用
・インプラントがくっつかずに脱落してしまう場合がある。
・出血、痛み、腫れ、出血、しびれ、化膿などの合併症を引き起こすおそれがある。
・術後に周辺の骨がなくなってしまう場合がある。
・インプラント周囲炎になる場合がある
インプラント治療には上記のリスクや副作用が出る可能性があります。

詳しいメリットとデメリットについては、インプラント治療のメリットとデメリットをご確認ください。
治療期間
2年間
費用
150万円
院長 奥田

この患者様がお口の健康を維持できているのは、インプラントだけのおかげではありません。25年以上、きちんと定期検診に来てくださっている、というのも大きな理由です。インプラントの定期検診の重要性については、インプラントの定期検診は専門の歯科医院へをご覧ください。

こんな歯並びの人は「黄色信号」です

「1本の奥歯」が健康をおびやかすきっかけになることはお分かりいただけたと思います。しかし実は、以下のような歯並びの人も黄色信号だということが、長年の研究で明らかになっています。

アングル2級・上の歯が前に出ている人(いわゆる 「出っ歯」)。
・前歯が噛んでいない(「開口」と言います)とさらにリスクが上昇。
アングル3級 ・下の顎が前に出ている人(いわゆる 「受け口」)。
・前歯が噛んでいない(「開口」と言います)とさらにリスクが上昇。

※わかりやすさのため、とても簡単に説明しています。

前歯が噛んでいない状態。

80歳で20本の歯が残っており、健康に食事ができている人のうち、アングル3級の方と開口の方の割合はともに1%以下です。つまり統計的に見ると、歯並びに問題があると80歳を超えた時に楽しく食事をするのは難しいのです。

院長 奥田

「歯が抜けているわけじゃないから大丈夫」ではないんです。表を参考に自分の歯並びをチェックしてみて、当てはまるようであれば早めに専門の歯科医院で診てもらうことをおすすめします。

まとめ

自分が奥歯をなくした人や、歯並びが悪いという人はもちろん、家族や友人、恋人にそういった人がいるのであれば、「歯医者に行った方がいいんじゃない?」と声をかけてあげてください。

残念ながら、歯科医院というのはなかなか自分から行こうとは思えない場所です。だからこそ、周りからの後押しが必要です。

おくだ歯科医院では、お口の健康状態に応じて信頼できる歯科医院のご紹介も行っています。まずはお電話にてご予約いただき、当院の検査を受けにいらしてください。

院長 奥田

長く健康でいるためには、歯科医院でのお口のメンテナンスが不可欠です。自分だけでなく、大切な人の健康を守るためにも、ぜひ一度ご来院ください。

診療内容

当院について

デンタルコラム

院長紹介

奥田 裕太

1982年生まれ。大阪十三で「おくだ歯科医院」を経営。大切にしているのは「患者様と一緒に悩み、一緒に成長し、笑える、二人三脚の治療」。

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