みなさん、こんにちは。大阪・十三のおくだ歯科医院、院長の奥田裕太です。
みなさんにとって、「歯科衛生士」とはどんな存在でしょうか?
歯石をとってくれる人?
それとも歯医者に行くと「ちゃんと磨けてないですよ」と怒る人?
あるいは歯科医師のお手伝いをしている人?
私のような歯周病の治療を専門とする歯科医師にとって、歯科衛生士とは「歯周病治療に必要不可欠なプロフェッショナル」です。
去る6月20日(土)・21日(日)の2日間、私と当院の歯科衛生士6名(全員)で北海道の札幌コンベンションセンターで開催された「第44回日本臨床歯周病学会年次大会」に参加してまいりました。
今回のブログでは、お口の健康を維持するうえでの歯科衛生士の知識・技術・経験の重要性と、当院の歯科衛生士が院長である私とと共に学会に参加する理由をお伝えしたいと思います。
お口の健康維持と歯科衛生士の関係

厚生労働省の調査によると、日本人成人の約7~8割がかかっているとされる歯周病(またはその予備軍である歯肉炎)。
その治療において、歯科衛生士が中心的役割を果たすことは、国内外の膨大な研究・統計によって明らかにされています。
理由は大きく4つです。
理由1:歯周病を根本から治す「メインの治療者」だから
歯周病治療の基本は、原因である歯石や歯垢(プラーク)を物理的に削り落とすこと。
この最も重要で時間がかかり、かつ技術と経験が必要な治療を、最前線で専門的に行うのが歯科衛生士です。
器具を緻密に操り、歯ぐきの奥深くの見えない場所にこびりついた汚れまで徹底的に取り除くことで、軽度〜中等度の歯周病であれば、外科手術をすることなく、衛生士の手による丁寧な掃除だけで十分に症状を改善させることが可能です。
理由2:再発を防ぐ「正しい磨き方」の教育係だから
いくら病院で歯を綺麗にしても、毎日のハミガキが間違っていれば数日で口内はプラークだらけに戻ってしまいます。
歯科衛生士はこのような事態を防ぐための、患者さま一人ひとりの歯並びやくせに合わせた「正しい磨き方」の指導員でもあります。
単にやり方を伝えるだけではありません。患者さまが「これなら毎日続けられる/続けたい」と思えるよう、モチベーションを高めるプロでもあります。
衛生士の指導があって初めて、一生モノのセルフケアが身につくのです。
理由3:良好な状態をキープする「伴走者」だから
治療が終わった後の綺麗な状態を10年、20年と長持ちさせるには、定期的なメインテナンス(検診とプロの掃除)が絶対に欠かせません。
歯科衛生士は、いわばお口の専属トレーナー。毎回同じ衛生士が担当することで、歯ぐきのわずかな変化やトラブルの兆候にいち早く気づくことができます。
当院でも、歯科医師とタッグを組み、患者さまと二人三脚で生涯にわたって大切な歯を失わないためのサポートを続けています。
理由4:お口から「全身の健康」を守る門番だから
近年の研究で、歯周病の菌や炎症は、血管を通じて心臓病や脳卒中、糖尿病などの全身疾患を悪化させることが分かっています。
歯科衛生士が口内の細菌をコントロールし、歯ぐきの腫れや出血を抑えることは、実は体全体の病気のリスクを下げることと同じなのです。
事実、衛生士のケアによって糖尿病の血糖値の数値が改善したというデータもあるほど。口の健康を通じて、あなたの健康を守る最前線にいるのが衛生士なのです。
だから歯科衛生士には知識、技術、経験が不可欠

こうした重要な役割を担う仕事だからこそ、歯科衛生士には歯科医師に負けず劣らず、知識、技術、経験が求められます。
なぜなら、これらの差が以下のような違いを生むからです。
見落としを防ぐ予測力
歯周病は痛みがないまま進行する「サイレントキラー(静かなる暗殺者)」。そのため、歯科衛生士によるプラークの見落としは、患者さまの病状の進行に直結しかねません。
知識と経験が豊富な衛生士は、歯ぐきのわずかな色や形、患者さまの生活習慣や持病(糖尿病など)から歯周病リスクを予測し、どこにプラークが隠れているかを高精度で予測することができます。
痛みの少なさと「汚れの除去率」
歯周病の患者さまの歯石は、歯ぐきの奥深くのデリケートな場所に付着するため、除去するときにどうしても痛みやしみを感じやすくなります。
しかし高い技術を持つ衛生士は、痛みを最小限に抑えながら組織を傷つけずに汚れだけをしっかりと削り落とします。
一方で技術が未熟だと、そもそも歯ぐきの深いところまでアプローチできなかったり、痛みが強い割に汚れが残りがちだったりと、再発の可能性が高まるおそれがあります。
患者さまを動かす「対話力」
歯周病は糖尿病などと同じ生活習慣病です。そのため痛みや出血といった症状を抑えるだけの治療(対症療法)では根本的な解決にはなりません。
患者さまご自身の協力が必要不可欠です。
しかし仕事やプライベートの都合で、歯科医師・衛生士から言われたケアを実践できない方も少なくありません。
多くの症例を見てきた衛生士はそういった患者さまとも向き合ってきているため、例えば「なぜ上手に磨けないのか」の背景(忙しさや手の動かし方のくせ)に寄り添い、無理なく続くセルフケアの提案ができるのです。
当院の歯科衛生士が”“全員”、学会に参加する理由
当院が目指すのは「患者さまに絶対に後悔させない治療」。
ここまでお伝えしてきたように、その実現のためには歯科医師はもちろん、歯科衛生士の知識、技術、経験のアップデートが欠かせません。
だからこそ当院では、歯科衛生士全員が日本臨床歯周病学会に所属し、学会が開催される時には、歯科医師とともに参加しているのです。
第44回日本臨床歯周病学会 年次大会

今回参加した「第44回日本臨床歯周病学会年次大会」は、歯周病治療に関する専門的な知識や技術を学ぶ大きな学会です。
会場は札幌コンベンションセンター。大会テーマは「ペリオコタン* 〜人生100年時代の治療戦略〜」でした。
※ペリオ:ペリオドンタイト(Periodontitis)。歯周病のこと。
※コタン:アイヌ語で「集落」「村」「人々が暮らす場所」を意味する言葉
人生100年時代と言われる今、歯周病治療に求められる役割も広がっています。
単に歯ぐきの炎症を抑えるだけではなく、患者さまが年齢を重ねても食事を楽しみ、会話を楽しみ、笑顔で過ごせるように支えていくこと。
そのために、歯をできるだけ長く守る治療やメインテナンスの重要性が、ますます高まっています。
学会では、歯科衛生士向けのセッションも非常に充実しており、当院スタッフたちも積極的に参加しました。
内容は糖尿病などの全身疾患と歯周病の関わりや、ご高齢の患者さまの生活の質(QOL)を支えるケアの方法、さらには、最新のデジタル機器を用いた分かりやすいブラッシング指導の工夫など。
毎日の診療にすぐ活かせる実践的な内容も多く、スタッフそれぞれが新しい知識を吸収していく姿を、院長として大変頼もしく感じた2日間となりました。
また、広島すとう歯科・歯周病クリニックの副院長であり、日本臨床歯周病学会の指導歯科衛生士でもある高山景子さんが、「人生100年時代の非外科的歯周治療を再考する」というテーマで講演されたセッションでは、当院の衛生士・太田が立派に座長を務めてくれました。

もちろん私自身も、歯周病によって失われた組織の回復を目指す歯周組織再生療法や、デジタル機器を活用したより安全で精度の高い治療法、歯をできるだけ残すための治療戦略など、たくさんの知見を学ばせていただきました。
チームワークも深まった2日間

2日間の出張のメインは当然「学び」ですが、今回得た成果はそれだけではありません。
学会の前日、金曜日の午後から、スタッフとともに北海道へ。その日の夜は、スタッフみんなで食事をし、札幌の街を少し歩く時間もありました。
美味しい海鮮料理をいただき、時計台やテレビ塔などを見ながらともに過ごす、普段の診療室とは少し違う時間。
互いの普段は見られない顔を見ることで、チームワークをより深めることができました。
また、土曜日に行われた懇親会では、全国から集まった多くの先生方とお話しすることもできました。
久しぶりにお会いする先生方との近況報告に加え、それぞれの地域での取り組みや、新しい治療に関する考え方など、ここでも普段の診療室の中だけでは得られない刺激をたくさんいただきました。
まとめ
今回、休診によりご不便をおかけした患者さまには、改めて心よりお詫び申し上げます。
当院が休診をしてまで学会に参加するのは、そこで得た知識や技術を、患者さまへのご説明、歯周病治療、メインテナンス、日々のケアのサポートをより充実したものへ、アップデートしていきたいと考えているからです。
そのためには歯科医師はもちろんのこと、歯周病治療の最前線を担う歯科衛生士も知識・技術・経験のすべてをアップデートし続ける必要があります。
だからこそ、私たちはチーム全員で積極的に学び続けているのです。

今回の学会で学んだことは、患者さまに還元してまいりますので、お口のことで気になることや、不安なことがございましたら、どうぞ遠慮なくご相談ください。



