皆さん、こんにちは。大阪十三のおくだ歯科医院、院長の奥田裕太です。
「ガミースマイル」という言葉をご存知でしょうか。
あまり聞き慣れないという方もいるかもしれませんが、笑った時に上の歯茎が4mm以上見え、見た目の問題(審美的不調和)を引き起こしている状態を指します。
3月の1日(土)と2日(日)に開催されたJIADSのDGPコースの第3回は、このガミースマイルの改善に非常に重要な内容が盛りだくさん。
具体的には、ガミースマイルの治療におけるデジタル技術を使用する有用性や、コースの監修者でありJIADSの理事長でもある瀧野裕行先生による講義、ビジネスマネージメントのレクチャーなどです。
私自身は講師としての参加となりましたが、大変学びの多い2日間となりました。
今回のデンタルブログでは、原因や主な治療法を紹介しながら、ガミースマイルとデジタル技術の関係についてお話しできればと思います。
※JIADS…The Japan Institute for Advanced Dental Studies。「歯科治療向上のための最高の研究機関」。
※DGPコース…Digital Global Prosthodonticsコース。「デジタル時代を見据えた補綴治療を学ぶ6日間」と題された、JIADSの研修コースです。
ガミースマイルになる、2つの原因
ガミースマイルには様々な原因が考えられますが、大きく分けると次の2つに分類できます。
- ① 歯が短くて歯茎が見えすぎている
- ② 唇が動きすぎて(上がりすぎて)歯茎が見えている
歯が短くて歯茎が見えすぎている
①は歯が短くなることで、歯茎に比べて目に見える面積が小さくなり、結果的に歯茎が目立つ状態になるケースです。
なぜこんなことになるのでしょうか。主な原因は2つあります。
ひとつは前歯が削れて短くなっているケース。
日中にストレスを感じた時や睡眠中に歯ぎしりをし続けている人や、歯周病や虫歯、事故などが原因で奥歯を失い、噛む力が適切に分散されなくなった人に見られるパターンです。
もうひとつは「萌出(ほうしゅつ)異常」と呼ばれるケースです。これは本来あるべき位置・タイミングで歯が正しく生えてこない状態のこと。
歯が正しい大きさまで成長しきらず、歯茎に多く覆われたままになっている場合や、本来の位置とは違う場所に生えてくる場合など、様々なケースがあります。
遺伝、顎骨の成長バランス、乳歯の脱落や外傷などの要因が複雑に絡み合って生じます。
唇が動きすぎて(上がりすぎて)歯茎が見えている
②は唇の動きが過剰になることで、笑ったときに歯茎が必要以上に露出してしまうケースです。
こちらにも主な原因はいくつかありますが、もっとも多いのは、上唇を引き上げる筋肉(上唇挙筋や口角挙筋など)の働きが強すぎるケース。
笑ったときにこの筋肉が通常よりも大きく動くと、上唇が上がりすぎてしまい、歯や歯茎が大きく露出します。いわば「表情筋のバランスの乱れ」と言える状態です。
また、上顎の骨の成長によって歯茎自体が前方・下方に突出し、笑ったときにより多くの歯茎が見えるという骨格的な要因もあります。
このように、唇の動きのクセや筋肉の使い方だけでなく、顔全体の骨格バランスが関係していることもあるため、的確な診断と対策が必要です。
ボトックス?外科手術?ガミースマイルの主な治療法

①と②、どちらの原因にも対応できるのが「クラウンレングスニング」という治療法です。
歯冠長延長術とも呼ばれる術式で、歯茎や歯の土台になっている骨を削ることで、歯が露出している部分を長くする外科的手術です。
目に見える歯の面積が大きくなるので、歯が短くなっているケースに対応できますし、唇が上がりすぎて歯茎の見える面積が大きい場合にもカバーが可能で、自然な笑顔に回復させることができます。
②が原因となっている場合には、動きすぎている筋肉の働きを抑えることで、笑顔の回復を行うこともあります。
具体的には、上唇挙筋や口角挙筋などにボトックス注射をしたり、お口の内側を切開して筋肉を縫い止め、動きを抑制したりといった方法があります。
ボトックスは「ボツリヌス毒素A型」と呼ばれる一種の神経毒で、神経と筋肉の通信を一時的にシャットダウンすることで筋肉の動きを止めることができる薬剤です。
効果は注射から3〜5日後に現れ始め、持続期間は約3〜6ヶ月間程度とされています。
デジタル時代の“後悔しない治療法”とは?

JIADSのDGPコースでは、DSD(デジタルスマイルデザイン)というシミュレーションソフトを使用します。
このソフトのコンセプトは、「患者様の笑顔をコンピューター上でデザインをすることで、歯科医師―患者様の間で治療のゴールを設定し、最短距離で効率よく治療を進めていくこと」。
患者様の顔写真やCTスキャンを取り込み、デジタル上で理想的な歯や笑顔をデザインでき、顔の比率、唇の動き、歯の形状などを総合的に分析し、その人に最適な歯のデザインを作成できます。
DSDの登場は、歯科医師と患者様が治療前に「治療のゴール」を目で見てわかる形で最終的な見た目を共有することを可能にしました。まさに「後悔しない治療法」です。
ガミースマイルは「病気」ではありません。人よりも歯茎が目立つからといって、直接的な問題にはつながらないからです。
そのため治療の際には「患者様が治療の結果について、どう感じられるか?」がポイントになります。
仮に歯科医師が「十分改善した」と考えていても、患者様がそう感じていなければ治療は「失敗」なのです。
しかしDSDを使えば、先ほど紹介したような治療を通じて、最終的にどんな笑顔になるかが治療を始める前にわかります。
そのため私はガミースマイル治療において、DSDは非常に重要なツールになると考えています。

ガミースマイルの治療を受ける際は、「DSDを導入しているかどうか」を歯科医院選びの条件のひとつにすることをおすすめします。
加速し続ける歯科界のデジタル化

DSDに限らず、歯科界のデジタル化はこの10年弱で急速に進められてきました。
JIADSのDGPコースはもともと、
- 須田剛義先生…米国の補綴専門医の資格を持つ、大阪梅田・SUDA DENTAL CLINICの院長
- 筒井純也先生…米国インプラント専門医で、ニューヨーク大への留学経験を持つ大阪つつい歯科・矯正歯科の院長
のお二人が「デジタル時代を見据えた補綴治療を学ぶ場が少ない」という問題意識から、JIADS理事長であり、京都市右京区・タキノ歯科医院の院長である瀧野裕行先生の監修のもとで立ち上げたコースでした。
第1期は8年前。私自身もアメリカで先駆的に色々なことを身につけておられたお二人から学ぼうと参加しました。
第1期終了から7年が経ち、CTなどデジタル画像ソフトは当然のこと、DSDの他にも、
- 型取りのための「光学印象」
- 手術の際のシミュレーションやアシストを行うガイドシステムやナビゲーションシステム など
治療の現場にデジタル技術は欠かせないものとなりました。
アポイントソフトや電子カルテ、電子診察券など、治療以外の場面でもデジタル化は加速し続けています。
こうした最先端のデジタル技術を紹介・検討し、臨床の現場に落とし込むことで、より多くの患者様が「後悔しない治療」が受けられる世の中にしたい。
その一心で、DGPコースの講師陣はもちろん受講生の先生方も、毎回全力で研修に臨んでいます。
まとめ

JIADSのDGPコースの第3回の講義やディスカッションを通じて、ガミースマイルの治療とDSDの相性の良さが浮き彫りになりました。
講師陣の間でも「第4回以降でもこの内容を掘り下げても良いのではないか」という話が出ているほどです。
ガミースマイルが歯を失ったり、命を落としたりするような病気の直接的な原因となることは滅多にありません。
しかし一方で、笑顔に自信をなくし、人前で気持ちよく笑えなかったり、引っ込み思案になったりと、ご本人にとっては人生を左右するような問題になっている場合は少なくありません。
ガミースマイルでお悩みの方は、ぜひ一度大阪十三のおくだ歯科医院までご相談いただければと思います。

今後もDGPコースでは受講生の先生方に最新の技術や情報を共有することで歯科界の底上げを行い、患者様の健康に少しでも寄与できればと考えています。予約が取りにくいなか、土曜日にお休みを頂き患者様にはご迷惑をおかけしましたが、ご理解いただけましたら幸いです。