デンタルコラム

「インプラントに頼るのは65歳以降」の理由———FDP 7月度例会で発表してきました

みなさん、こんにちは。大阪・十三のおくだ歯科医院院長、奥田裕太です。

当院では、できる限り「インプラントに頼るのは65歳以降」と考えています。

なぜなら、治療費を最小限に抑えつつ、患者さまのQOLをより高く、長く維持するためには、「65歳」という年齢が一つの目安となるからです。

今回のデンタルコラムでは、7月20日の土曜日に私が参加し、発表の機会をいただいた「FDP clinical study group to promote dental care for patients」(以下、FDP)の例会の様子をご紹介します。

同時に私が発表のテーマに選んだ、歯科治療とライフステージ(年代)の深い関係についてもお話しします。

目次
  1. FDPとは?
  2. 「病気ではなく、人を診ること」の大切さ
    1. ライフステージによって変わる、治療計画
  3. 「インプラントに頼るのは65歳以降」の理由
    1. インプラントは「第二の永久歯」ではない
    2. 「歯を残すためにはどうすればいいか?」を問うことが先決
  4. まとめ

FDPとは?

FDPは、数ある歯科医師のスタディクラブ(研究会)の一つで、私の大学の大先輩であり、大阪・松原のいけおか歯科医院の院長を務める池岡岳先生が会長を務める団体です。

派閥、年齢といった壁を取り除き、フラットな関係性の中で会員同士が情報交換・相互理解を行うことで歯科医師としての視野を広げ、本当に患者さまのためになる近代歯科学の知識・技術の習得を目標に掲げています。

例会は毎月行われており、7月20日土曜日は大阪・中央区のTB-SQUARE osakaにて開催されました。

その日の発表者は3人。私のほかは、大阪・箕面のよしだ歯科の田中克樹先生、和歌山・岩出の岡歯科医院の乾慎太郎先生です。

2人はいずれも歯科医師になって10年未満の若手の先生でしたが、田中先生は被せ物をする際の土台となる歯(支台歯)の適切な形成方法について、乾先生は噛み合わせの治療計画を立てる際に骨格の診断を活用する方法について、興味深い発表をされていました。

「病気ではなく、人を診ること」の大切さ

そんな中、私の発表テーマは「ライフステージを考慮した治療計画について」でした。

「この病気に対して、どの治療が最も適しているか?」
「この病気に対して、どんな処置を施せば治療が上手くいくのか?」

いずれも大切な考え方ではありますが、同時にこれらは若手の先生方が陥りがちな思考でもあります。私自身、歯科医師になってすぐの頃は、「病気をどう治すか」ばかりを考えていました。

しかし、病気ばかり診て、患者さまの年齢や生活、歯科治療歴などを把握していなければ、最適な治療というものは見えてきません。

ライフステージによって変わる、治療計画

例えば、歯並びが悪い患者さまの場合でも、20代の方であれば矯正治療を行っておいた方がその後の人生において問題は起こりにくくなると思います。

ところが、80代の方の場合、歯並びが悪くとも、その年齢まで問題なく生活ができてきたのであれば、今になって辛く、痛みの伴う矯正治療を行う必要はないですよね。

病気ではなく、人を診ること。発表テーマを「ライフステージを考慮した治療計画」としたのは、年齢や生活、歯科治療歴など、患者さま一人ひとりをきちんと診て治療計画を立てることの大切さを伝えたかったからです。

患者さまのライフステージが青年期なのか、中年期なのか、それとも老年期なのかによって治療計画は変わってこなければならないのです。

「インプラントに頼るのは65歳以降」の理由

インプラントは「第二の永久歯」ではない

ここで冒頭の「インプラントに頼るのは65歳以降」という話に戻ります。

インプラント治療においても、やはり病気だけではなく、人を診ることが重要です。

日本は昨今、「超高齢化社会」「人生100年時代」が声高に叫ばれています。このような時代にあって、6歳から生えてくる永久歯を一生涯守り続けるのは、昔に比べて格段に難しくなっています

「歯が生える薬」などというものも研究されていますが、今のところ2回目の永久歯が生えてくる未来はまだ期待できそうにありません。

インプラントは「第二の永久歯」と呼ばれることもあります。しかし現状、インプラントの経過症例は、長くて40年程度。今のところ、50年、60年と維持できる保証はどこにもありません。

このように考えると、インプラントに頼るのは再治療リスクが抑えられる65歳以降、という結論になるのです(外傷による歯の喪失など、どうしようもない場合は別です)。

そうすれば、手術によるリスクも減らせますし、治療費が必要以上に膨らむことも防げます。

「歯を残すためにはどうすればいいか?」を問うことが先決

歯科医師にとって、歯を抜いてインプラントに置き換える技術を磨くことは大切です。しかし同時に、歯を残すための技術を磨くことも、同じくらい大切です。

あくまで治療計画は、「歯を残すためにはどうすればいいか?」を問うことが先決です。

どうしても歯を残すことができない、あるいは歯を残すメリットがないと判断した時にようやく、歯を抜くという選択をするべきである。私はそのように考えています。

院長 奥田

患者さま側も「歯が抜けても、インプラントを入れれば大丈夫」と考えるのではなく、「65歳以降になるまでは、できるだけ自分の歯(天然歯)を守る」という前提で、治療やメンテナンスと向き合っていただければ幸いです。

まとめ

今回の発表を通じ、FDPの先生方に治療方針についてお伝えできたことは、自分にとってとても有益な時間でした。

このような機会をくださった会長の池岡岳先生、座長の田中浩太先生には、この場を借りて感謝申し上げます。

現在歯科界は、多くの先生が天然歯を残すための方法を模索しています。

ただし、今のところ魔法のように歯を再生させる治療方法は見つかっておらず、患者さまご自身の協力がなければ、2つとして同じものがない天然歯を守ることはできません。

だからこそ、患者さまにおかれましては、日々の歯磨きだけでなく、信頼できる歯科医院で定期検診を受け、プロの手によるメンテナンスと病気の早期発見・早期治療に取り組んでいただければと思います。

院長 奥田

当院のデンタルコラムではプロが考える「歯医者の選び方」まとめと題して、歯科医院選びのポイントを紹介しています。長年歯科医院に行っていないという方はもちろん、長く通い続けている歯科医院があるという方も、ぜひ参考にしてください。

診療内容

当院について

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院長紹介

奥田 裕太

1982年生まれ。大阪十三で「おくだ歯科医院」を経営。大切にしているのは「患者様と一緒に悩み、一緒に成長し、笑える、二人三脚の治療」。

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