デンタルコラム

歯医者が伝えたい、お子様を持つ人に知っておいて欲しいこと

歯医者と少女

「親がなくとも子は育つ」とも言いますが、それでもやはり子供にとって親の影響力はとても大きいものです。

事実、これまでの栄養学の研究により、子供の肥満の原因には遺伝体質のほか、親の体型や母親の食習慣や育て方、家族の生活習慣が大きな影響力を持つことが明らかになっています。

経験上、お口の健康も同じです。親がきちんと自分のお口のケアをするとともに、子供にも正しいお口のケアを教えてあげることが、将来の子供のQOLに大きく関わってくるのです。

そこで今回は、0〜6歳の幼年期、6〜12歳の児童期、10〜20代の思春期・青年期のお子様を持つ親御さんが、ぜひとも知っておいて欲しいことをお伝えしたいと思います。

目次
  1. 0〜6歳の幼年期は「お口の中を作っていく大切な時期」
    1. 親自身がきちんとお口のケアをすること
    2. 子供に対して、できるかぎりのケアをすること
    3. 歯医者に慣れさせること
  2. 6〜12歳の児童期は「噛み合わせの異常が出現しやすい時期」
  3. 10〜20代の思春期・青年期は「親・歯医者によるお口の管理が難しくなる時期」
  4. まとめ

0〜6歳の幼年期は「お口の中を作っていく大切な時期」

0歳児

0〜6歳の幼年期は「お口の中を作っていく大切な時期」です。

幼年期、特に歯がないような時期は、お口のケアなんて必要ないと考えている人も多いかもしれませんが、実はそれは間違いです。

なぜなら幼年期は、

  • 親などから虫歯菌が感染し、定着する。
  • 口の中の常在菌の構成が完成する。
  • 一本も歯がない状態から、乳歯が生えそろい、顎が発達していく。

という時期だからです。そのため親の口の中が虫歯だらけだったり、お菓子やジュースを日常的に食べたり飲んだりしているにもかかわらず、夜にきちんとした歯磨きができていなかったりすれば、あっという間に虫歯になってしまいます

幼年期の虫歯を防ぐには、大きく以下の3つの方法があります。

親自身がきちんとお口のケアをすること

歯医者に通って虫歯・歯周病のケアをしてお口を清潔に保ちましょう。

「回し飲み」「お箸の共有」などが虫歯菌感染の原因になることはよく知られていますが、適切な虫歯・歯周病のケアをしていないまま接する方がよほど危険。

また、そうした自身の治療を通じて、子供にお口のケアを教えるための知識を身につけていきましょう。

子供に対して、できるかぎりのケアをすること

生後すぐから寝る前にガーゼなどで口の中を拭ってあげることで、清潔を保つとともに「口の中に物が入ること」に慣れさせましょう。

また、大人との回し飲みなど虫歯菌感染の原因になることをしないことや、歯ブラシの習慣をつけさせることも大切です。

歯医者に慣れさせること

歯医者でのメンテナンスは、お口の健康を守り続けるために一生涯必要なことです。

虫歯になってから行くだけでは「歯医者=怖いところ」というイメージが定着し、大人になってから行かなくなりがち。痛みの少ないメンテナンスなどに、早いうちから通わせておくことが大切です。

お口のケアの習慣や歯医者に通う習慣を身につけるのに、早すぎるということはありません。むしろ遅れれば遅れるほど、お口の健康が損なわれる可能性は高まっていきます

早いうちに、親自身はもちろん家族みんなで正しい習慣を身につけておくことをおすすめします。

6〜12歳の児童期は「噛み合わせの異常が出現しやすい時期」

10歳くらいの少年

6〜12歳の児童期は「噛み合わせの異常が出現しやすい時期」です。なぜなら、入試が永久歯へと生え変わり、噛み合わせが安定するとともに、顎が大きく発育していく時期だからです。

でもこれは、あくまで発育がうまくいけばのお話。噛み合わせが悪く、顎の発育がうまくいかなった場合は、成人したときに受け口や開咬(前歯が噛んでいない状態)といった噛み合わせの異常が出てきてしまう可能性が高くなります。

統計によると、受け口、開咬、出っ歯、過蓋咬合(噛み合わせが深い)などの症状がある人たちは、老年期になると軒並み歯が少なくなっていることがわかっています。

まだ幼いお子様が老年期を迎えたところを想像するのは難しいかもしれませんが、今のお口の健康は確実に数十年後につながっているのです。だから、児童期からお口の状況をしっかりとチェックしておく必要があるわけです。

とはいえ、噛み合わせの良し悪しや、顎の発育が正常かどうかというのは、なかなか判断しにくいもの。そんな時はお子様に以下のような症状がないかを、チェックしてみてください。

  • 口をポカンと開けていることが多い。
  • いびきをかく癖がある。
  • 猫背で姿勢が悪い。
  • 食べているときにクチャクチャと音を立てる癖がある。

これらに該当する場合は専門家の指導のもとで、嚥下(飲み込み)訓練や舌の機能訓練(舌を置く位置や運動の訓練)、場合によっては「第1期矯正」と呼ばれる顎の骨の拡大や発育促進・抑制を行う必要がある可能性があります。

早期発見・早期治療」はガンでよく使われるスローガンですが、お口の健康にも言えること。しかもお口の健康は生活習慣と直結していますから、この時期から将来を考えてプロ=歯医者のチェックを受けておく必要があります。

10〜20代の思春期・青年期は「親・歯医者によるお口の管理が難しくなる時期」

10代半ばの少年少女。

10〜20代の思春期・青年期は「親・歯医者によるお口の管理が難しくなる時期」です。なぜかというと、反抗期などを通じて「自分」が目覚めたり、部活動など生活習慣にも大きな変化が起きたりする時期だからです。

実際この時期になると「口の中を見られるのが恥ずかしい」と歯医者に行かなくなったり、部活動で飲むスポーツドリンクや夜更かしによる歯磨き不足、間食の増加などが原因で、それまで健康だった子供のお口の中に、途端に虫歯が増え始めるケースが多いものです。

一方で、思春期〜青年期は永久歯が生えそろいますし、まだ顎も成長していく年齢なので、いわゆるワイヤーとブラケットを使った「第2期矯正」が行える時期でもあります。

つまり、異常さえ発見できれば、歯並びや噛み合わせを改善することによって生涯を通して歯に困る期間、歯の治療にかかる費用を大幅に減らすことが可能なのです。

ではどうすれば、お子様のお口の異常を早期に発見できるのでしょうか。

方法の一つは、親子間のコミュニケーションが難しくなるまでに、きちんとお口の健康に関する習慣を身につけさせておくことです。

すでに反抗期などでコミュニケーションが難しくなっている場合は、地道にお口の健康の重要性を説明していくしかありませんが、そこで大切なのは親自身が歯医者に通い、お口のケアについての知識や実体験を持っておくことです。

例えば、虫歯を放置したせいで症状が進行し、歯の神経を取り除かなければならないケースがあります。しかし歯の神経を取り除くと、10年後にその歯が割れてしまうリスクが大きくなることがわかっています。

そのため「虫歯になる→放置する→症状が進行し、痛みがひどくなる→歯医者で神経を抜いて治療する」という流れが常習化してしまうと、若いうちに自分の歯が何本もなくなり、将来お口の見た目や日常生活、歯科治療の費用で困る可能性が高くなるのです。

思春期や青年期は、何かと若いからなんとかなってしまう年代ですが、10代・20代の習慣はそのまま30代以降につながっていきます。将来のお口の健康を考えるなら、この頃から正しいデンタルケアを習慣づけておくべきなのです。

まとめ

良くも悪くも、子供の人生は親によってある程度左右されるものです。お口の健康を損なえば、見た目の美しさや日常生活の快適さだけでなく、単純に経済的な負担にもつながります。

「若い時の苦労は買ってでもせよ」とは言いますが、お口の健康に関する苦労はしなくてもいい苦労です。

将来の子供のQOLをいたずらに低下させることのないよう、今のうちからきちんとしたケアについて親子一緒に知っておいていただきたいと思います。

院長 奥田

お口のケアについてネットで調べるのも効果的ですが、ネットの情報は間違っていたり、古かったりします。迷ったらぜひ信頼できる歯医者に相談することをおすすめします。

診療内容

当院について

デンタルコラム

院長紹介

奥田 裕太

1982年生まれ。大阪十三で「おくだ歯科医院」を経営。大切にしているのは「患者様と一緒に悩み、一緒に成長し、笑える、二人三脚の治療」。

詳しく見る