デンタルコラム

「歯石を取らなくても歯周病にはならない」の“事実”と“誤解”

歯の汚れ

皆さん、こんにちは。大阪・十三のおくだ歯科医院、院長の奥田裕太です。

歯石は取らなくても大丈夫
「器具を使えば、歯石は自分でも取れる」
「だから虫歯がないなら歯医者は行かなくてもいい

インターネットやSNSでこんな情報を見たことがあるかもしれません。皆さんの中には「本当にそうなのかも」と思ってしまう人もいるのではないでしょうか。

長年、歯周病を専門分野としている私からすると、これらの情報は「ほんの少し本当で、ほとんど間違い」です。

今回のデンタルコラムでは、歯石と歯周病にまつわる誤解を解き、正しい知識をお伝えしたいと思います。

目次
  1. 【研究結果】「15年間歯石だらけ」でも歯周病にならない
  2. 「歯石を取らなくても歯周病にはならない」は“89%”間違い
  3. 「自分で歯石をとっているから大丈夫」の落とし穴
  4. 歯科医院での歯石除去が大切な理由
    1. おくだ歯科医院での歯石除去の流れ
  5. まとめ

【研究結果】「15年間歯石だらけ」でも歯周病にならない

世界的に有名な「スリランカスタディ」という研究があります。

1970年〜1985年の15年間、スリランカの茶畑で働く14〜46歳の男性労働者480人を対象に行われたもので、彼らには歯を磨くという習慣がなく、地域に歯科医師もゼロという環境でした。

当然、お口の中は歯垢と歯石だらけ

「歯石を放置すると歯周病になる(=お口の中がボロボロになる)」というセオリー通りなら、480人全員に重度の歯周病が発見されるはずです。

ところが、480人のうち11%の対象者は、15年経っても歯周病が全く進行しておらず、抜け落ちている歯もありませんでした。

つまり、この11%の対象者に関して言えば、「15年間歯石だらけ」でも歯周病にならない(なっていても進行しない)という事実が明らかになったのです。

「歯石を取らなくても歯周病にはならない」は“89%”間違い

しかしこれだけで、「歯石を取らなくても歯周病にはならない」とは言えません

なぜなら、残りの89%の対象者のうち、81%はゆっくりと歯周病が進行していき、残りの8%は急速に進行した結果、20歳代で歯が抜け始め、40歳代で1本も残っていないという人もいたからです。

つまり、「歯石を取らなくても歯周病にはならない」は“89%”間違い、なのです。

スリランカスタディが明らかにしたのは、あくまで「歯周病には個人差がある(例外的に歯周病を発症しにくい人もいる)」ということだけ。

残念ながら、現代の医学を持ってしても「どんな人が歯周病にならない(なる)のか」は解明されていません。

したがって、お口の健康を保ちたいのであれば、きちんとお口の中をメンテナンスし、歯垢や歯石を取り除いておく必要があるのです。

「自分で歯石をとっているから大丈夫」の落とし穴

「でも自分は、通販で買った専用器具で、1週間に1回は歯石をとっているから大丈夫」。

インターネットやSNS上にはまことしやかにこのようなことを発信する方もいます。

確かにオンラインショップなどでは「歯石取り用スケーラー」と呼ばれる器具が販売されており、試してみたくなる人もいるかもしれません。

「お口の中をきれいにしたい」という姿勢は素晴らしいのですが、これもやはりプロの立場からすると、「やめていただきたい」というのが本音です。

というのも、ご自身の手による歯石を取ろうとすると、以下のようなリスクがあるからです。

  • 歯ぐきを傷つけてしまい、歯肉炎や歯周炎の進行を早める可能性がある
  • 見えない部分に歯石が残り、知らない間に歯周病が進行してしまう可能性がある
  • 細菌を奥に押し込んでしまい、急性の腫れや膿(膿瘍)を引き起こすリスクが高まる
  • 歯の表面に傷をつけ、さらに歯石がつきやすくなる

このように、自分で行う歯石除去はむしろお口の中の状態を悪化させる可能性が高いのです。

歯科医院での歯石除去が大切な理由

プロとしての技術を持つ歯科医院での歯石除去であれば、こうしたリスクを最小限に抑えることができます。

なぜなら、歯科医師や歯科衛生士は、歯ぐきや歯の状態を確認しながら専用の器具を使って処置を行います。

肉眼や感覚だけに頼らず、必要に応じて拡大鏡なども使用するため、歯ぐきや歯を不用意に傷つけることがありません

また、歯石の微細な凸凹を専用の器具と指先で探り当て、1本1本丁寧にクリーニングしていきます。

そのため歯周ポケットの奥にある見えない歯石もきちんと取り除くことができますし、細菌を歯ぐきの奥に押し込んでしまうこともありません。

歯石除去は「ただ石を取る」だけの作業ではなく、歯ぐきや歯の健康を守りながら、安全に行うための専門的な医療行為なのです。

おくだ歯科医院での歯石除去の流れ

当院には、歯周病を専門的に学び、現場での経験を積んだ歯科衛生士が多数在籍しており、質の高い歯石除去を行える体制が整っています。

具体的には、以下のような流れで歯石の除去と予防を行っています。

1.診査・診断

まずはレントゲン撮影や歯ぐきの検査を通じて腫れ・出血の有無、歯周ポケットの深さを調べ、現在のお口の状態を正確に把握します。

2.歯石除去(スケーリング)

超音波スケーラーや専用の器具を組み合わせ、歯ぐきの上と下に付着した歯石を丁寧に取り除きます。

歯ぐきに隠れた部分の歯石も徹底的に除去することで、炎症の原因を断ちます

3.クリーニングと研磨

歯の表面を磨き上げ、プラークや着色を除去。ツルツルに仕上げることで、新しい歯石や汚れが再び付着するのを防ぎます

4.セルフケア指導(一番大切です!)

手を添えて歯磨き指導する歯科衛生士

歯石除去後の状態を維持するには、日常のセルフケアが欠かせません。

当院では患者様一人ひとりのお口の形態や生活習慣に合わせて、歯ブラシやフロスの使い方を具体的にアドバイスします。

院長 奥田

歯石除去の後は歯ぐきの炎症が落ち着き、口の中がすっきりするのを実感していただけるはずです。

まとめ

「歯石を取らなくても歯周病にはならない」のはごく一部の人だけ。

ほとんどの人は、きちんとお口の中をメンテナンスしなければ、徐々に(人によっては急速に)歯周病が進行します

だからといって、ご自身の手で歯石をとろうとすることもおすすめできません。むしろ逆効果になる可能性が高いからです。

したがって、歯石除去は歯科医院でプロの手に任せることが一番安全で確実

定期的に歯石を取り除くことで、歯ぐきの炎症を防ぎ、将来にわたって歯を守ることができます。

院長 奥田

大阪・十三・おくだ歯科医院では、専門的にトレーニングを積んだ歯科衛生士が、丁寧で痛みの少ない処置を心がけています。ぜひ「虫歯がなくても歯医者へ行く」習慣を身につけていただき、健康なお口を一緒に守っていきましょう。

診療内容

当院について

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院長紹介

奥田 裕太

1982年生まれ。大阪十三で「おくだ歯科医院」を経営。大切にしているのは「患者様と一緒に悩み、一緒に成長し、笑える、二人三脚の治療」。

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