デンタルコラム

歯ぎしり・食いしばりで口が臭くなる?朝の倦怠感と口臭の意外な関係

歯ぎしり・食いしばりで口が臭くなる?

「昨日の夜、すごい音を立てて歯ぎしりしていたよ」
「お父さん、なんか口におうよ」

一見すると無関係な、家族やパートナーからの2つの言葉。しかしお口の中を注意深く観察していると、この2つは決して無関係ではなく、地続きにつながっている可能性が見えてきます。

こんにちは。大阪・十三のおくだ歯科医院、院長の奥田裕太です。

歯ぎしり・食いしばり、口臭といういずれも自分で気づくのが難しいお口の悩み。今回はこの2つの関係と、両者をつなぐお口の病気についてお話しします。

目次
  1. 「歯ぎしりしていたよ」と言われない人のほうが、危ない?
  2. 歯ぎしり・食いしばりで口が臭くなる?
  3. 歯周病・インプラント治療の現場で感じていること
  4. 口臭を「対策グッズ」でごまかさないで
  5. まとめ

「歯ぎしりしていたよ」と言われない人のほうが、危ない?

歯ぎしり・食いしばりを専門用語でブラキシズム、睡眠中のブラキシズムを睡眠時ブラキシズムと呼びます。

調査方法や診断基準によって幅はあるものの、成人の1割強に「頻繁な睡眠時ブラキシズムの自覚がある」ということがわかっています。

問題はその時歯や顎にかかっている力の大きさです。起きているときに自分の意志で噛みしめる力には限界があります。痛めないよう無意識にブレーキがかかるためです。

しかし、睡眠中は中枢の抑制が弱まり、そのリミッターが外れてしまいます。

睡眠中の噛みしめは1回あたり平均7秒ほど続き、人によっては起きているときの全力を上回る力が出ることもあります。

試しに力一杯食いしばってみてください。その負荷が知らない間に歯や顎にかかっているのです。

歯ぎしり・食いしばりが厄介なのは、自覚するのが難しい点。

歯科医院を受診した方を対象にした海外の研究では、実際に歯ぎしりをしている人のうち、家族から指摘を受けたことがある人はわずか3.8%でした。

96%以上は、誰にも気づかれないまま続けていることになります。

実際、音の出ない「食いしばり(クレンチング)」であれば、隣で寝ているご家族でも気づくことは困難です。「家族に何も言われていないから大丈夫」とは、残念ながら言えないのです。

歯ぎしり・食いしばりで口が臭くなる?

「周りに迷惑かけていないなら、別に良いじゃないか」と思う人もいるかもしれません。

しかし、当院のデンタルブログでも繰り返し説明しているように歯ぎしり・食いしばりは、以下のような様々な症状の原因になります。

障害が起きる部位具体的な症状
歯の摩耗、歯の破折、歯がしみる、噛むと痛いなど
歯周組織歯肉炎、歯周疾患(歯周炎 = 歯槽膿漏)  顎関節痛、開口障害、カックン音など
顎関節顎関節痛、開口障害、カックン音など
全身顔面痛、頭痛、肩こり、腕のしびれ、腰痛など
その他舌痛症(舌に痛みが出る病気)、むちうち症状、倦怠感など

さらに重要なのは、ブラキシズムが歯周病の悪化に関わっている可能性がある、ということです。*

※歯科医学の世界的な合意(AAP/EFP 2017 World WorkshopにおけるFan & Catonのコンセンサスレビュー)においては、ブラキシズムが原因となってゼロから歯周病が発症することはないとされています。一方で、日本歯周病学会の「歯周病の検査・診断・治療計画の指針」によれば、すでに歯肉炎(歯茎の炎症で、歯周病の主な症状)がある場合に、歯ぎしり・食いしばりによる負荷が加わると、その症状が悪化することが多いとされています。

歯周病が進行すると、骨が溶かされ、歯ぐきとの境目に深い「歯周ポケット」が形成されます。深い歯周ポケットの中は空気が届きにくく、においの成分をつくる菌にとって好都合な環境です。

実際、歯周病のある方の口の中のにおい成分は、そうでない方の約8倍。ポケットが深いほどその濃度は高まることもわかっています。

これが歯ぎしり・食いしばりが口臭につながるメカニズムです。このプロセスが直接実験などによって証明されているわけではありませんが、病態生理学的には十分可能性はあります。

予備軍を含む歯周病患者は日本人の8割。ある程度進行したケースに絞っても約半分がかかっています。

にもかかわらず、実際に治療を受けている人はそのうち4〜5人に1人程度。他人事でいられる人の方が少ないのです。

歯周病・インプラント治療の現場で感じていること

おくだ歯科医院では、重度の歯周病に悩む患者さまや、インプラント治療を希望される患者さまが数多く来院されます。

中には歯周病の治療を繰り返しているにもかかわらず、一向に改善せず、遠方から当院を受診しに来られる方も少なくありません。

そうした患者さまのお口の中を精査すると、高い確率で犬歯のすり減りや、下顎の内側にできる骨の隆起、あるいは朝起きたときの強い顎の疲労感といったブラキシズムのサインが見つかります。

また、インプラントを埋め込んでもすぐに抜けてしまって困っている、という患者さまもいらっしゃいます。このようなケースでも、歯ぎしり・食いしばりのサインが見つかることは珍しくありません。

天然の歯と違ってインプラントにはクッション(歯根膜)がないため、強い歯ぎしり癖を放置したままでは、長期的な安定を維持するのが難しいのです。

細菌へのアプローチ」と「力(噛み合わせ)のコントロール」。この両輪が揃って初めて、歯やインプラントを長持ちさせることができる――それが、私が臨床現場で日々抱いている実感です。

口臭を「対策グッズ」でごまかさないで

このように、口臭の背景には歯周病の悪化、さらに歯ぎしり・食いしばりが隠れている可能性があります。

にもかかわらず、口臭に悩む人はマウスウォッシュやタブレットを選びがちです。実際、口臭で日常生活に支障を感じた人の約3人に1人が「口臭対策グッズ」を選んでいる、という調査もあります。

しかし、口臭対策グッズは文字通り臭いものに蓋をしているだけ。根本的な解決にはなりません。

洗口液で歯周病菌に対抗することはできませんし、市販のグッズで睡眠中に顎や歯にかかる負荷を適切に分散させることもできません。

一方で、歯科医院を受診していただければ、以下のようなアプローチができます。

  • 精密な歯周精密検査:歯周ポケットの深さ、出血の有無、骨の吸収状態を数値化し、炎症の有無を確認します。
  • 噛み合わせと摩耗のチェック:歯の噛み合わせのバランス、すり減り方、詰め物への負担を専門家の目で評価します。
  • 医療用マウスピース(ナイトガード)の作製:睡眠中の歯や骨にかかる過剰な力を分散・緩和させ、歯周組織と顎関節を保護します。

なお、歯ぎしりなどの治療を目的としたナイトガードの作製は、健康保険の適用対象

初診料や事前の検査・型取り・装着時の再診料を含めた患者さまの負担額(3割負担の場合)は、おおむね総額5,000円前後が目安となります(※お口全体の検査内容や処置によって前後します)。

市販のケアグッズをあれこれ買い続ける前に、一度歯科医院で原因をはっきりさせ、適切に対処をする方が、費用面でも時間面でもお得です。

院長 奥田

マウスピースの費用については、マウスピースの費用って、結局いくら?で詳しく説明しています。

まとめ

歯ぎしり・食いしばりと口臭。一見全く関係のない2つの症状ですが、もしかすると根っこは同じ問題かもしれません。

「どちらも指摘されたことがある」
「そう言えば、「朝起きたときの口のネバつきや、顎のだるさが続いている」

そう感じられたなら、一人で抱え込まず、どうぞお気軽にご相談ください。何が原因で、どこから整えていくべきか、お口全体の健康を見据えながら丁寧にお調べいたします。

院長 奥田

それ、食いしばり・歯ぎしりのサインかも!では、セルフチェックやセルフケアの方法をご紹介しています。いきなり歯医者に行くのは気が引ける、という方はまずはこちらからご覧いただくのもおすすめです。

診療内容

当院について

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院長紹介

奥田 裕太

1982年生まれ。大阪十三で「おくだ歯科医院」を経営。大切にしているのは「患者様と一緒に悩み、一緒に成長し、笑える、二人三脚の治療」。

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