皆さん、こんにちは。大阪・十三のおくだ歯科医院、院長の奥田裕太です。
7月19日・20日は福岡で開催された「OJ年次ミーティング」に参加するため、医院を休診とさせていただきました。ご協力いただいた患者様には、心より感謝申し上げます。
今回の学会は、「インプラント治療、もしもの対応、こんな時どうする?」というテーマのもと、治療後に起こり得るトラブルとその対応策に焦点が当てられていました。
中でも、世界的なインプラント治療の権威であるミシガン大学のDr. Hom-Lay Wang先生による講演は大きな学びとなりました。
この記事では学会で得た最新知見をもとに、「歯科医師はインプラント治療後のトラブルにどう向き合うべきか?」という視点から、治療の本質とその先にある選択肢についてご紹介します。
インプラントは「一生もの」ではありません
当院・おくだ歯科医院は、大阪・十三で40年以上、歯周病とインプラント治療に特化して診療を行ってきました。
これまでに多くのインプラント埋入の実績があり、プロフェッショナルとして術前の診査診断から術後のメンテナンスまで一貫した治療を提供しています。
インプラント治療は、失った歯の機能と見た目を回復する高度な治療法です。
チタン製の人工の歯の根っこを顎の骨に埋め込み、その上に人工歯を装着することで、天然歯に近い噛み心地を再現できます。
入れ歯が合わない方、ブリッジで健康な歯を削りたくない方にとって、有力な選択肢となります。
しかし、インプラントは“入れたら一生安心”というものではありません。
インプラント周囲炎や骨の吸収、被せ物の劣化など、時間の経過とともにトラブルが起こる可能性があります。
また、噛み合わせの変化や加齢による歯肉の後退も、見た目や機能に影響を与えることがあります。
以下ではインプラント治療後に発生する、主なトラブル例について、簡単にご紹介します。
インプラント治療後のトラブル例
インプラント周囲炎
インプラント周囲炎はその名の通り、インプラントの周辺の歯ぐきに炎症が起きることを指します。
原因はプラーク(細菌のかたまり)。これらが増殖することによる問題は、炎症が起きるだけではありません。
本来、ミクロの世界で破壊と再生を繰り返している歯(=骨)の破壊だけが活発化し、インプラントを支える骨が溶けてしまうこともあります。
痛みが出にくいため気づきにくく、定期的なメンテナンスが不可欠です。
インプラントが抜けてしまう
骨との結合がうまくいかなかったり、長年の使用によってインプラントが動いてしまったりすると、歯が抜け落ちるようにインプラントが抜けてしまうケースもあります。
原因となるのは噛み合わせや歯ぎしりによる負荷のほか、全身疾患(糖尿病や骨粗鬆症、心疾患など)もリスクになることがあります。
被せ物の割れ・劣化
人工の歯の根っこであるインプラントには、主にセラミックで作られた被せ物(人工歯)が装着されています。
特にセラミック製の被せ物は見た目が天然の歯に近く、とても丈夫で高い耐久性を誇りますが、一方で強い衝撃に弱いという性質があります。
また天然の歯には、歯根膜(しこんまく)と呼ばれるサスペンションのような構造が備わっています。
しかしインプラントにはこの歯根膜がないため、強い衝撃が加わるとダイレクトに受け止めることになります。
そのため、転んだり、固いものを思い切り噛んだりした時や、歯ぎしり・食いしばりといった強い力が加わると、割れたり欠けたりしてしまうことがあるのです。
見た目の変化
インプラント治療は、失った歯を補うだけでなく、見た目(審美性)の回復も重要な目的のひとつです。
しかし、治療後数年が経つと、当初は自然に見えていた部分に「違和感」や「変化」が生じることがあります。
代表例が、歯ぐき(歯肉)の後退やボリュームの変化です。
加齢や歯磨きによる圧力、土台となる顎の骨の吸収などが原因で歯ぐきが下がってしまうと、インプラントの根元部分(アバットメント)が見えてしまうことがあるのです。
また、隣の天然歯や歯ぐきと微妙な位置ズレや色味の違いが出てくることもあり、時間が経ってから「前よりインプラントが目立つ気がする」と感じる患者様もいらっしゃいます。
「OJ年次ミーティング2025」@福岡県TKPエルガーラホール

去る7月19日・20日、福岡県のTKPエルガーラホールにて開催された「OJ年次ミーティング」に参加してきました。
OJ(Osseointegration study club of Japan)は、インプラント治療に特化したスタディグループの全国組織で、国内の歯科医師約500名が所属する大きな学会です。
今回の年次ミーティングのテーマは「インプラント治療、もしもの対応、こんな時どうする?──審美・機能・インプラント周囲炎に関連して」。
まさに「インプラント治療が終わったあと」のトラブルとリカバリーにフォーカスした内容でした。
特に印象的だったのが、ミシガン大学のDr. Hom-Lay Wang先生による基調講演です。
世界的な研究者であり、歯やインプラント周辺の歯ぐき・骨といった組織を、維持・再生する治療の分野で600本以上の論文を執筆されている先生です。
インプラント周囲炎に対する国際的な視点からのアプローチは非常に学びが深く、活発な質疑応答が行われていました。
また、午後のセッションでは、日本を代表する臨床家の先生方による、
- 審美的な失敗にどう対処したか
- インプラントの脱落にどう対応したか など
実際のトラブル症例に基づくリカバリーの報告が続きましたが、共通していた教訓は、最初期の診査診断と適正な治療計画の重要性でした。
私自身がスタッフに日頃から伝え続けている、「最初期の診査診断と患者様自身の人生計画を踏まえた治療計画を考えなければならない」という考え方。
これと全く一致していたことに自信を深めるとともに、より多角的な視点から治療計画を検討する必要性を改めて確認することができました。
まとめ
大阪・十三のおくだ歯科医院では、患者様の人生計画まで見据えた診査診断と、長期的に安定したインプラント治療を何より大切にしています。
インプラント治療後のトラブルに対しても、適切な診断とリカバリーの選択肢を持っておくことが、患者様を守ることにつながります。
その重要性を、今回のOJ年次ミーティングであらためて強く実感しました。

今後も技術と知識を深めながら、「治療のその先」まで支える治療を追求してまいりますので、引き続きよろしくお願いいたします。


