「フロスか、歯間ブラシか」の落とし穴
皆さん、こんにちは。大阪・十三のおくだ歯科医院、院長の奥田裕太です。
毎日きちんと歯を磨いて、フロスや歯間ブラシも取り入れている。
それでもふと、「フロスと歯間ブラシ、どっちを使うのが良いんだろう?」と迷ったことはありませんか。
もしそうなら、あなたはお口の中のことをちゃんと考えている“意識の高い人”と言えます。
ただ、実はここにひとつ落とし穴があります。それは「フロスか、歯間ブラシか」という二択で考えてしまっている点です。
“正解”のケアは、歯1本1本で違う
なぜなら「フロスか、歯間ブラシか」の答えは、歯によっても変わりますし、1本の歯のどこを磨くかによっても変わるからです。
さらに言えば、歯ぐきの状態や治療歴によっても、最適な道具というのは変わるのです。
「じゃあ、どうやって使い分ければいいの?」
今回のデンタルブログは、そんな不安を感じた方にぜひ読んでほしい内容になっています。
毎日続けているケアだからこそ、「今のやり方は、本当に自分の口に合っているのか?」を一度立ち止まって考えてみませんか。
「自分にとっての“正解”のケア」は自分ではわからない

「いつもの歯磨き」は、あなたのお口に合っている?
同じ患者様のお口の中でも、
- 前歯と奥歯
- 歯の表側と裏側
- 同じ歯の噛み合わせ部分・歯間
によって、状態は少しずつ違います。
にもかかわらず、私たちは毎日のセルフケアをつい一括りで考えてしまいがち。
「毎朝毎晩、丁寧に歯ブラシで磨いているから大丈夫」
「定期的にフロスをしているから安心」
「歯間ブラシで歯の隙間も磨いているので歯医者は必要ない」
そうやって“とりあえず続けているケア”が、今の自分の口の中に本当に合っているかどうかを、改めて確認する機会は意外と多くありません。
だから歯科衛生士は「まずお口を見る」
正直なところ、これは無理もないことです。なぜなら“正解”のケアを見極めるには、
- 自分の歯ぐきが5年前・10年前と比べてどの程度下がっているのか?
- 歯周病にはかかっている?かかっているとしたら、重症度はどれくらい?
- 奥歯の歯間と前歯の歯間の違いは?
- 虫歯や歯周病などの過去のお口の治療歴と、今使っている道具は合っている?
といった専門的・客観的な判断が必要だから。これらをセルフチェックだけで正確に判断するのは、至難の業です。


だから歯科衛生士は、歯磨きについてお話しする時、「フロスか、歯間ブラシか」という道具の話に入る前に、まず口の中そのものを丁寧に見ます。
歯並び、歯ぐきの状態、治療歴、汚れの残りやすい場所──それらを総合的に確認したうえで、「どこに」「何を」「どう使うか」を考えていくのです。
歯科衛生士に聞いた、口臭ケアの大前提

今回は、おくだ歯科医院の歯科衛生士・太田めぐみにインタビューを実施。
日々多くの患者さまのお口の中を見ている歯科衛生士の視点から、
- “正解”のケアを見極める手順
- フロスと歯間ブラシの本当の違い、“使い分け”の考え方
- 患者様にありがちな思い違い
- おくだ歯科で大切にしている考え方
について話してもらいました。
毎日のケアと口臭は切っても切れません。最近お口の臭いが気になり始めた方も、「絶対に口臭はさせたくない」という方も、必見の内容です。
【インタビュー】口臭ケアの第一歩は「自分のお口」について知ることから

フロスが向いているケース・歯間ブラシが向いているケース
__多くの方が迷う「フロスと歯間ブラシ、どっちを使えばいいのか?」という疑問ですが、そもそもこの考え方は正しいのでしょうか?
太田:うーん……率直に言うと、大前提として「フロスか歯間ブラシか」ではなく、「フロスと歯間ブラシ両方を使い分ける」というのが基本ですね。
二択で決められるほど、お口の中は単純ではない、というのが実際です。
__ではどう使い分ければいいのでしょう?
太田:分かりやすく言うとフロスが向いているのは、
- 歯と歯の間が比較的せまい方
- 歯の間から虫歯になりやすい方
- 食べ物が「上から」挟まりやすい方
です。
__「上から挟まる」というのは?
太田:例えば、葉物野菜やえのきを噛んだ時に歯の間に入る感じですね。
そういう方は歯と歯が密接していることが多いので、フロスが有効なケースが多いです。
__では、歯間ブラシが向いているのはどんな方でしょうか。
太田:歯間ブラシが向いているのは、
- 歯と歯の隙間がやや広い方
- 食べ物が「横から」挟まる感じがする方
- 食後につい爪楊枝を使いたくなる方
ですね。

__ただし、あくまで「どちらかを使えば良い」という話ではない?
太田:そうですね。同じ人のお口の中で、場所によって、両方を使い分けると効率よく歯垢をお掃除することができます。
だから私たち歯科衛生士は、「どっちが正解か」を決めるのではなく「どこに、何を、どう使うか」を一緒に考える、という感覚で見ています。
面倒かもしれませんが、ここをしっかりと整理しておくことが、毎日のケアを無駄にしないためにとても大切なんです。
思っているより、口臭ケアってフクザツなんです

__実際、歯科衛生士さんはどんなところを見て、一人ひとりに合った提案をしているんですか?
太田:まず見るのは、歯周病の有無や重症度ですね。
それから、これまでどんな治療を受けてこられたか、虫歯の治療が多い方なのか、あまり歯医者と縁がなかった方なのか、などです。
あとはその方の生活習慣や性格も大切な要素です。
__治療歴まで関係してくるんですね。
太田:例えば、歯石がびっしりついている状態だと、歯石が邪魔をしてフロスや歯間ブラシが使えないこともあります。
歯周病が進行しているケースでは、歯茎が腫れているので歯ブラシなどが届かない場所が増えてしまうため、歯磨きの効率がガクッと落ちてしまいます。
そういう場合は、「歯磨きを頑張りましょう」という話以前に、まず歯科医院でのクリーニングや治療が必要になるわけです。
__なるほど……。家でどれだけ頑張っても限界があるケースもある、と。
太田:被せ物やブリッジ、インプラントが入っている方も注意が必要です。
歯の形がもともととは変わっているので、天然の歯と同じ感覚でケアをすると、どうしても汚れが残りやすくなります。
__その場合は、歯間ブラシが必要になる?
太田:はい。特にブリッジやインプラントの下などは、歯間ブラシでないと届かない場所が多いです。場合によっては、専用のフロスを併用することもあります。

フロアフロスの糸に硬いスレッド(糸通し)部分が一体化している。
ブリッジやインプラント、矯正器具の下など、特別なケアが必要な場所を「ラクに」「気持ちよく」清掃できる。
__「生活習慣や性格」というのは?
太田:例えばですが、毎日きっちり時間をかけてケアできる方なのか、それとも忙しくて「最低限で済ませたい」というタイプなのかで、提案の内容は変わります。
__道具そのものも変わるんですか?
太田:変わりますね。どんなに理想的なケア方法でも、続かなければ意味がありません。
なので「この方ならここまでできそうだな」「これは負担になりそうだな」というところも含めて考える必要があります。
お口の臭いを気にされる患者様は多いですが、口臭ケアの基本は毎日の歯磨きですから考え方は同じです。思っているより、口臭ケアってフクザツなんですよ。
「フロスは被せ物が取れそうで怖い」はカン違い

__ここまでのお話を聞いていると、そもそも“思い込み”で間違ったケアをしてしまっている方も多そうですね。
太田:とても多いです。しかも「何もしていない人」より、「ちゃんとケアしている人」のほうが、思い込みを抱えているケースも少なくありません。
__例えば、どんな思い込みでしょうか?
太田:よく聞くのは「フロスを使うと、被せ物が取れそうで怖い」という声ですね。
でも実際には、フロス程度で取れてしまう被せ物は、すでにどこかに問題がある状態です。
本来は「フロスが怖いから使わない」ではなく、「それなら一度歯医者さん診てもらった方がいい」というサインなんですね。
__なるほど……。
太田:あとは「歯間ブラシを使っていたら、歯の隙間が大きくなった気がする」という誤解。
これは正しいメンテナンスのおかげで、プラーク(歯垢)がとれたり、歯茎が引き締まったりした結果、「本来の歯の隙間」になっていることが大半です。
そしてもうひとつ多いのが、「一生懸命な人ほど陥りやすい」パターンですね。
一生懸命ケアをするほど、良くない結果を招くことも……
__それは、どんなケースでしょう?
太田:例えば、
- 「高価だから良いはず」と、ハイエンドモデルの電動歯ブラシを使っている。
- ネットで調べて、著名人がおすすめしている歯ブラシや、話題の商品を次々と試している。
といった場合です。
__心当たりがある方も多いのでは……?
太田:道具にはそれぞれ「こういう使い方をして欲しい」というコンセプトがあります。
どんなに良い道具でも、それがその人のお口の状態や、磨き方、生活習慣に合っていないと、効率が悪かったり、逆に歯や歯ぐきを傷つけてしまうこともあるんです。
__「歯ブラシなんてどれも同じ」というのが、多くの人の印象でしょうね。
太田:全然違うんですよ。
クラプロックス社の歯ブラシはグリップが八角形になっています。
細かく角度を調整することで、歯の形に合わせた磨き方ができる、というので一時話題になりました。
しかし実はこの歯ブラシは、本来同社が開催するセミナー「iTOP イントロダクトリーコース 予防歯科医院が勧めるTBI」を受けた歯科衛生士から歯磨き指導を受けなければ、使いこなせないというもの。
「話題だから」で買っても、その性能を最大限生かすことはできません。

__さらに言うと、道具の状態も関係してきますよね。
太田:その通りです。どんなに自分に合った道具でも、毛先が開いていたり、劣化したものを使い続けていては、やはり効率は落ちます。
毎日少しずつ劣化していくので、なかなか気づくのが難しいんです。
おくだ歯科医院が大切にしている「患者様のケア」との向き合い方
__歯科衛生士は、ここまで話してくれたような複雑なお口のケアについて、患者様に伝えていく立場でもありますよね。
日々患者様と接するうえで、大切にしていることは何でしょうか。
太田:やはり一番大切にしているのは、「正解」や「理想」を押し付けないことですね。
毎日のケアは、続かなければ意味がありませんし、「面倒だな」と感じた瞬間に、やらなくなってしまいますから。

__確かに、毎日のことですもんね。
太田:はい。なので私たちは、まず患者様のお話をしっかり聞くようにしています。
生活リズムやお仕事の状況、どこまでなら無理なくできそうか。
そのうえで、「この方の生活の中に、どんなケアが組み込めるか」を一緒に考える、というスタンスです。
__「頑張ってください」ではなく、「一緒に考える」。
太田:そうですね。
例えば、「夜はどうしても疲れてしまう」という方なら、時間帯を変えてみる提案をしたり、「これだけは続けましょう」とポイントを絞ったりします。
完璧を目指すよりも、続く形を作ることのほうがずっと大事だと思っています。
__太田さんにとって、歯科衛生士と患者様の理想的な関係とは、どんなものでしょうか。
太田:「何でも相談できる」「双方向の関係」ですね。
一方的に指導するのではなく、「これ、やりにくいです」「続かなかったです」と正直に言ってもらえる関係でいたいと思っています。
__実際に、そんなやりとりもあるんですか?
太田:ありますよ。「これ、正直めんどくさくて…」と笑いながら話してくださる方もいます。
そこから「じゃあ別のやり方を考えましょうか」と一緒に調整していく。そうやって少しずつ、自分に合ったケアを見つけていただくのが理想ですね。
__とはいえ、忙しい方にとっては、「痛みもないのに歯医者に行く」のはハードルが高い面もありますよね。
太田:本当にそうだと思います。
だからこそ、もっと気軽に相談できる場が必要だと感じていました。
__そこで立ち上げたのが、Dcare(ディーケア)なんですね。
歯科衛生士主体の「治療しないクリニック」Dcare

太田:はい。Dcareは「治療」ではなく、「お口の状態のチェック」や「相談」を目的に来ていただける、歯科衛生士主体の「治療しないクリニック」です。
日曜日や祝日にも営業しているので、お忙しい方でもご自身のお口について考える時間を作ってもらえるのではないかと思います。
お口のケアについて気になることがあれば、ご相談だけでも構いませんので、おくだ歯科医院までお電話ください。
電話口で「Dcareの予約がしたい」とおっしゃっていただければご案内いたします。
__素晴らしい取り組みだと思います。ぜひ広がっていけばいいですね。今日は忙しい中、時間をとっていただき、ありがとうございました。
太田:こちらこそ、ありがとうございました。

Dcareのより詳しい内容についてはDcare発足のお知らせから、Dcareの営業日については、公式Instagramのストーリーズハイライトからご覧いただけます。
まとめ
毎日の歯みがきに、フロスや歯間ブラシも取り入れている。
それだけでも、あなたは十分に“お口の健康を大切にしている人”です。
ただ、ここまでお伝えしてきたように、フロスや歯間ブラシは「使っているかどうか」よりも、「今のあなたのお口に合っているかどうか」が何より大切です。
歯ぐきの状態や治療歴、生活習慣が変われば、最適なケアも少しずつ変わっていきます。
だからこそ、歯科医院は「治療をする場所」だけでなく、「今のケアが合っているかを確認する場所」としても、ぜひ活用してください。
頑張りすぎず、自己判断で抱え込まず、プロと一緒に“ちょうどいいケア”を見つけていく。それが、長く健康なお口を保つ一番の近道だと、私たちは考えています。

皆さんからのご相談をスタッフ一同心よりお待ちしています。ぜひお気軽に、お電話にてお問い合わせください。


