どんな外科手術でも失敗のリスクがあるように、インプラント手術でも失敗のリスクは存在します。
インプラント手術における失敗とは「インプラントが抜け落ちる」「インプラントが折れる」のことです。
このような結果になれば、歯としての機能が果たせなくなるため、再治療が必要です。
しかし再治療は患者様の心身にも負担をかけるうえ、経済的な負担もかけることになります。
そのためおくだ歯科医院では「最低術後10年間再治療が必要にならない」を患者様への約束として掲げ、そのために最善の努力をしています。
ここではなぜ再治療が必要になるのかを解説するとともに、当院がこの約束を守るためにどのような取り組みをしているのかをご紹介します。
インプラントの再治療はなぜ必要になるのか?
インプラントの再治療が必要になる原因は、大きく3つのパターンがあります。
- 歯周病を治療せずにインプラントを埋め込んでしまった
- インプラント手術時に技術的なミスが起きてしまった
- メンテナンス不足により、インプラント周囲炎が発症してしまった
以下では各パターンについて、詳しく解説していきます。
歯周病を治療せずにインプラントを埋め込んでしまった
初期の歯周病の症状は歯茎から血が出たり、歯茎がむずがゆくなったりする程度。多くの人が「歯科医院に行くまでの状態ではない」と判断しがちです。
しかしこれを放置し続けると、歯の土台になっている骨がなくなっていき、最終的には歯が抜け落ちてしまいます。
「だからインプラントを埋め込むのでは?」と思うかもしれません。しかしインプラントを埋め込んでも、歯周病が治るわけではありません。
事前に歯周病の治療を行なっていなければ、インプラントの下で歯周病の症状が進行し、残っていた骨もどんどんなくなっていきます。
インプラントは骨を土台にして埋め込むので、骨がなくなれば抜け落ちることになります。その結果として、再治療が必要になるのです。
インプラント手術時に技術的なミスが起きてしまった
お口の中には、無数の神経が走っています。
そのためインプラント手術をする際に、インプラントを深く埋め込みすぎるなどして神経に当たると、慢性的な痛みや唇のマヒが起きて、日常生活に支障が出てしまうことがあります。
また私たち人間の頬の部分には「上顎洞(じょうがくどう)」と呼ばれる空洞があります。
この空洞は上顎の歯と隣接する位置にあるため、インプラントの埋め込み方次第では、上顎の骨を突き破ってしまう場合があります。
インプラントを固定するためには土台となる骨が必要ですから、空洞に突き出てしまうとすぐに抜け落ちてしまいますし、傷口が化膿すると上顎洞炎(蓄膿症)などを発症するおそれもあります。
このようなケースでも、やはり再治療が必要となります。
メンテナンス不足により、インプラント周囲炎が発症してしまった
「一度埋め込めば、インプラントは一生物」と考えている人もいるかもしれませんが、インプラントは天然の歯よりも細菌が繁殖しやすいため、定期的なメンテナンスが必要です。
もしメンテナンスを怠ると、歯ブラシでは届かないような場所で細菌が繁殖していくため、インプラント周囲炎を発症してしまいます。
インプラント周囲炎とは名前通りインプラントの周囲に発生する炎症のこと。放置しておくと歯周病と同じように骨がなくなってしまい、インプラントが抜け落ちてしまいます。
そうなればインプラント周囲炎の治療を含めて、再治療が必要になります。
インプラント手術は準備が肝心
ではどうすれば再治療を回避できるのでしょうか。
下表は3つの原因と、これらを解決するために歯科医師が行うべき準備をまとめたものです。
再治療の原因 | 手術前に必要な準備 |
---|---|
歯周病を治療せずにインプラントを埋め込んでしまった | 入念な検査による歯周病の発見、治療 |
インプラント手術時に技術的なミスが起きてしまった | 最新の設備を駆使した、綿密なシミュレーション |
メンテナンス不足により、インプラント周囲炎が発症してしまった | インプラントのメンテナンスについての患者様への丁寧な説明 |
以下ではこれらの準備が具体的にどのようなものを指すのか、おくだ歯科医院ではどのように対応しているのかについて見ていきましょう。
入念な検査による歯周病の発見、治療
歯周病の上からインプラントを埋め込んでしまうケースを防ぐためには、事前に入念な診査・診断を行い、歯周病を発見、治療しなければなりません。
インプラントを埋め込むのはそれからです。
このような観点から、おくだ歯科医院ではインプラント手術と歯周病は一体のものだと考え、インプラントを希望される患者様に対しても、必ず歯周病の治療を前提とした治療計画を提案しています。
綿密なシミュレーション
インプラントの埋め込みそのものに失敗してしまうケースを防ぐためには、最新の設備を活用した綿密なシミュレーションと、シミュレーション通りの手術を実現する歯科医師の技術と経験が必要です。
インプラント手術に関連する顎の骨や歯、上顎洞の形や位置、神経の配置は、患者様一人一人によって変わります。
そのためCT機器や専用のシミュレーションソフトなどを駆使しながら、できるだけ正確にお口の中の構造を把握し、そのうえでインプラントのサイズや埋め込みの位置、角度を決める必要があるのです。
以下は準備段階で行う作業の一部です。
- CTとレントゲンをもとに、現在の問題を解決するために最善の方法は何かを判断する。
- その方法がインプラントなのであれば、インプラント手術が可能かを判断する。
- 「先に歯周病を治療する」などインプラント手術本番までの治療計画を立てる。
- 型取りをして仮の歯の模型を作成する。
- 仮の歯のモデルを装着した状態でCTを撮り、模型通りにインプラント手術を行っても問題ないかを確認する。
- 専用のシミュレーションソフトを使い、上顎洞や神経に干渉しないよう、インプラントを埋め込む角度や深さを決定する。
- シミュレーションをもとに「ステント」「サージガイド」と呼ばれる模型をインプラントメーカーに発注する。
- 「ステント」「サージガイド」をもとに、手術本番のシミュレーションを行う。
- 手術の前に、1時間程度かけて器具や手術室の滅菌を行う。 など
しかしここまで準備をしていても、インプラント手術本番では何が起きるかわかりません。
以前に比べれば「ステント」「サージガイド」と呼ばれる模型も精密になりましたが、それでも実物の患者様のお口とは微妙に違う場合もあります。
したがって執刀医は模型を使ったシミュレーションに固執せず、自分の目と手で状況を把握しながら手術を行えなければなりません。
また1mm手元が狂うだけで神経に当たってしまうようなケースもあるので、正確な技術も要求されます。
綿密なシミュレーションと本番での確かな技術。この2つを満たしていなければ、技術的な失敗を防ぐことはできないのです。
患者様への丁寧な説明
一見、メンテナンス不足は手術後の問題のように思えます。
しかし根本的な原因は、担当の歯科医が術前術後にメインテナンスの重要性を説明していなかったり、患者様が重要性を理解できるように説明していなかったりするからです。
つまりメインテナンス不足も準備段階での問題なのです。
おくだ歯科医院では患者様一人一人にオーダーメイドでメンテナンスプランを設計し、定期的にメンテナンスに来ていただくよう、しっかりと時間をかけて説明をさせていただいています。
それが患者様のお口の健康にとって、絶対に必要なことだと信じているからです。
当院のインプラント生存率は25年間で98.5%
埋め込まれたインプラントのうち、正常に機能しているインプラントの割合を「生存率」と呼びます。
当院は1993年から2018年までの25年間で、千数百本のインプラントを埋め込む手術を行ってきましたが、生存率は98.5%を記録しています。
この千数百本のうち、もともとある本人の骨を土台にしてインプラントを埋め込むという最もシンプルな方法で埋め込めたのは25%だけ。
残りの75%は下顎や上顎に人工的に骨を作り出す手術などをしてからインプラントを埋め込む、複雑な手術を施しています。
なぜこんなにも複雑な手術の割合が多いのでしょうか。インプラントが正常に機能し、毎日の使用に耐えるためには、土台の骨が必要です。
しかし当院で手術をした75%の歯は、すでに自前の骨が薄くなっており、インプラントを十分に支えられない状態になっていました。
そこで当院では土台となる骨を人工的に作り出す手術を行い、それからインプラントを埋め込むという対応をとってきたのです。
実はこうした対応ができる歯科医院は多くありません。そのため、あちこちの歯科医院で「インプラントはできない」と断られて途方にくれた患者様が当院を訪れられるというケースもたくさんあります。
こうした複雑な手術が必要になれば、それだけ失敗する確率も高くなります。
にもかかわらず当院は生存率98.5%を維持し続けられているのは、治療に協力してくださる患者様の存在はもちろん、手術前の徹底的な検査・診断と綿密な治療計画を実行してきた賜物だと自負しています。
近年はインプラントそのものの進歩や、最新の設備の影響もあって、再治療が必要になるケースは減少傾向にあります。
そのため25年間では98.5%の生存率も、直近10年間で見た場合はより100%に近づくと考えられます。