皆さん、こんにちは。大阪・十三のおくだ歯科医院、院長の奥田裕太です。
歯の治療を終えたあと、「これでひと安心ですね」と言われて、「もう大丈夫」「治療は終わった」と感じた経験はないでしょうか。
確かにこう言われれば、ほっとして歯医者に通わなくなるのも無理はありません。実際、多くの方が「治療が終わった=一段落」と感じていると思います。
しかし、歯科医療の現場に長く関わっていると、治療直後には問題がなかった歯が、数年、あるいは十数年後にトラブルとして表面化するケースを少なからず目にします。
それは、治療が間違っていたから、あるいはどこかが特別に悪かったから、という単純な話ではありません。
歯科治療には、「その時うまくいったか」だけでは測れない、時間をかけて評価される側面があるからです。
近年、歯科の専門分野では、こうした考え方を 「LONGEVITY(永続性)」 と呼ぶことが増えてきました。
今回はこの「歯のLONGEVITY」という視点について、その重要性を改めて考える機会となった学会参加の経験を交えながら、少し整理してお話ししたいと思います。
「その歯が将来どうなっていくのか」を見据えた治療
歯科治療における LONGEVITY(ロンジェビティ) とは、簡単に言えば「治療後、長い年月にわたって安定した状態を保てているかどうか」という考え方です。
「何年もつか」という話だと思われるかもしれませんが、単に“長持ちする・しない”という意味ではありません。
- 痛みが出ない
- 見た目が崩れない
- 再治療が必要になるトラブルが起きにくい
そうした状態が、時間の経過の中でも維持されているかを評価する視点です。
歯科治療は、治療を終えた瞬間に結果が確定する医療ではありません。むしろ、数年、十数年と経過したあとに、「あの治療が“正解”だったのかどうか」が見えてきます。
その意味でLONGEVITYは、治療の“結果”というより、治療に対する“姿勢”と言ったほうが近いかもしれません。
短期的な改善だけでなく、その歯が将来どうなっていくのかまでを見据えて治療を考える。それが、歯科医療における「LONGEVITY」という視点なのです。
歯周病・インプラント治療で「結果の差」が出る理由
歯周病・インプラント治療は、この「LONGEVITY(永続性)」と深く関わる分野の一つです。
歯周病治療やインプラント治療は、いずれも「治療をしたら終わり」という性質のものではありません。
治療後しばらくは問題なく経過していても、時間が経つにつれて状態に差が出てくることがあるのです。
歯周病治療における経過の違い
歯周病治療では、腫れや出血が治まり、数値も改善すれば、「ひとまず落ち着いた」と感じる方が多いと思います。実際、多くのケースで治療後はいったん症状が改善します。
しかしその後、
- 数年たっても安定した状態が続くケース
- 徐々に歯ぐきの状態が悪化していくケース
に分かれていくことがあります。
この違いは、治療を受けた直後にはなかなか分かりません。経過を追う中で、少しずつ見えてくるものです。
インプラント治療は「入れたあと」が本当のスタート
インプラント治療も同様です。
インプラントは、失った歯を補う方法として非常に有効な治療ですが、「入れたら終わり」という治療ではありません。
治療後、長い年月にわたって安定しているケースがある一方で、数年経過したころから、
- インプラントの周囲に炎症が起きる
- 違和感や噛みにくさが出てくる
といったトラブルが見られることもあります。
こうした違いは、治療直後の見た目や噛み心地だけでは判断できません。インプラント治療もまた、入れた瞬間ではなくその後の経過の中で評価される治療だと言えます。
「歯の健康」の分かれ道はどこにある?
歯周病治療やインプラント治療で結果に差が出る理由は、特別な治療法を使っているかどうか、という単純な話ではなく、多くの場合、
- 初期の段階で、どこまで詳しく状態を評価していたか
- 治療の順序や進め方が整理されていたか
- 歯ぐきや骨、噛み合わせといった目に見えにくい部分まで考慮されていたか
といった、一つひとつの判断の積み重ねによって生まれます。
これらの判断は、治療を受けている患者様からは見えにくい部分でもありますし、治療直後に差として表れることもほとんどありません。
しかし、数年、十数年という時間の中で、その積み重ねが結果の違いとして現れてくることがあります。
だからこそ、歯周病治療やインプラント治療の「正解」は、治療を終えた時点では分かりません。
時間が経ったあとに、「長く安定した状態が保てているかどうか=LONGEVITY」で、初めて評価されるべきものなのです。
LONGEVITYの高い治療とは、偶然うまくいった結果ではなく、こうした判断を丁寧に積み重ねた先に、時間をかけて確認されていくものだと言えます。
第32回 JIADS 総会・学術⼤会「LONGEVITYを支えるこだわりと探究心」
こうした 「歯のLONGEVITY(永続性)」 という視点は、一部の歯科医師だけが考えている特別なものではありません。
12月6日・7日の2日間、私たちおくだ歯科医院のスタッフ一同で、JIADS総会・学術大会に参加してきました。

JIADSは、全国に支部を持つスタディクラブで、歯科医師・歯科衛生士が、治療技術の向上や新しい知識の共有を目的に学び続けている団体です。
JIADSで開催されている研修コースでは、「歯科治療という科学を理解し、どの歯科医師でも実践でき、同じ治療結果を出せること」を目的に掲げ、今まで8000人以上の歯科医師、3500人以上の歯科衛生士が受講しています。
今年の総会のテーマは、「LONGEVITY(永続性)を支えるこだわりと探究心」。
これまでお話ししてきたような、
- 治療後、長い年月にわたって安定した状態を保つには何が必要なのか
- なぜ同じ治療でも、長期的な結果に差が出るのか
- どのような考え方・判断がLONGEVITYを左右するのか
といった点について、歯周病、インプラント、補綴、外科など、さまざまな分野の先生方が講演を行う学会でした。
おくだ歯科医院、師弟の登壇にスタッフ大興奮!

私は登壇こそありませんでしたが、初日の司会進行と座長を務めさせていただき、慣れない仕事に久しぶりに緊張を感じました。
学会を運営する立場として関わることで、このテーマがどれだけ重く、真剣に議論されているかを改めて実感しました。
また、学会の最後には「長期症例に学ぶ ――LONGEVITY達成のための条件」というセッションでは、前院長であり、父でもある奥田裕司が登壇。
父も含め、このセッションに登壇されたのは、いずれも臨床歴40年以上の先生方です。
中には、治療後 30年以上にわたって大きな変化のない症例も提示され、長い年月をかけて積み重ねられてきた臨床の重みを、強く感じさせられる内容でした。
また、このセッションの座長を務められたのは、おくだ歯科医院のOBであり、現在も3か月に一度、合同勉強会を続けている大川敏夫先生(神戸大川歯科医院・岡本)。

師弟関係にある先生方が、このような大きな舞台で並び立つ姿は、スタッフにとっても非常に印象的な光景でした。
改めて感じた「LONGEVITY」の本当の意味
今回の学会を通して改めて感じたのは、
LONGEVITYとは、特別な治療法や一時的な成果によって得られるものではなく、考え方や姿勢を、長い時間をかけて引き継ぎ、積み重ねていくことなのだ
ということです。
先達の先生方が積み重ねてきた症例を、今後引き継いでいくものとして、身の引き締まる2日間となりました。
まとめ
LONGEVITY(永続性)に立つならば、厳密には「歯科治療に終わりはない」と言うことができます。
数年、十数年という時間を経て、その歯がどれだけ安定した状態を保てているか。そこで初めて、「それまでの判断が正解だったかどうか」が見えてきます。
これは今受けている治療が悪い、あるいは間違っている、という話ではありません。
ただ、歯の治療には「長期的に評価する」という視点があり、一度立ち止まって考えてみること自体が、とても自然で大切な行為だと考えています。
もしご自身のお口の健康をLONGEVITYの観点から見つめ直してみたい、という方は一度セカンドオピニオンを受けてみるのがおすすめです。
そうすることで、お口の健康との新しい付き合い方が見えてくるかもしれません。

患者様にはお休みを頂きご迷惑をお掛けしましたが、今後もLONGEVITYを軸にした治療を行い、皆さんに還元できるように頑張っていきたいと思います。


