デンタルコラム

再生療法は「魔法」の治療法なのか?

プロがおこなう歯石除去でも解説したように、近年の歯周外科処置には「再生療法」という、失った歯や骨を再生させる技術があります。

失ったはずの歯などが再生し、元どおりになる……このように書くと、再生療法がまるで魔法のように思えてくるかもしれません。

しかし当然ですが、再生療法は魔法などではありません。

むしろ再生療法には大きく3つのデメリットがあり、成功させるためにはそれらをクリアしなくてはならないため、従来の切除療法に比べて難しい処置と言えます。

以下では「再生療法を実践できる歯科医師は少ない」「再生療法の効果は限定的」「患者様との信頼関係がなければ再生療法は成立しない」の3点について解説していきます。

目次
  1. 再生療法を実践できる歯科医師は少ない
  2. 再生療法の効果は限定的
  3. 患者様との信頼関係がなければ再生療法は成立しない
  4. まとめ

再生療法を実践できる歯科医師は少ない

第一のデメリットは、再生療法を実践できる歯科医師が少ない点です。

再生療法は、薬剤や器材があればどんな歯科医師でもできるという技術ではありません。

実際の治療に取り入れるには、専門の研修に時間と費用をかけて知識を習得し、現場で経験を積んでいく必要があります。

例えばおくだ歯科医院では、厚生労働省が1992年に再生療法に使われる特殊な保護膜「ゴアテックスGTRメンブレン」を認可する以前、1990年の時点で海外の再生療法の研修に参加。

認可が下りてすぐの頃から現在に至るまで、多くの症例と長期の観察結果を積み重ねています。

また広範囲の歯周病にも対応できる「エムドゲイン 」という液体ジェルを用いた再生療法が開発された際にも、いち早く研修に参加し、臨床に応用してきました。

研修の中には、1回あたり数十万円かかるものも少なくありません。海外に行くとなれば、「週末だけ研修に参加して終わり」というわけにもいきません。

再生療法を実践するためには、そこまでの時間と労力とコストをかける必要があるのです。

歯科医師免許には更新制度がないので、勉強熱心な歯科医師もいれば、免許を取得してそのままという歯科医師もいます。

そして残念ながら、大半を占めるのは後者の歯科医師です。そのため、再生療法実践できる歯科医師の数は、まだまだ少ないのが現状です。

院長 奥田

なので、再生療法を受けるためには、まず「再生療法の実績がある歯科医師」を見つけることから始めなければなりません。

再生療法の効果は限定的

第二のデメリットは、再生療法が全ての患者様に有効な治療というわけではないという点です。

再生療法の主な適応症(この治療法が適しているとされている症状)は以下の通りです。

  • 歯磨き指導、歯周ポケット内の歯石除去など、歯周病の基本治療が終わっている。
  • 4mm以上の深い歯周ポケットが残っている。
  • 歯の根元の骨(歯槽骨)が垂直方向に溶けてしまっている(垂直性骨欠損)、あるいは歯の根元の分岐しているところに歯石がついてしまっている(根分岐部病変)。

治療方法によって適応症は変わりますし、症状によっては効果があっても「完璧に元どおり」とまではいかないケースもあります。

また、再生療法以外の治療の方が効果的な場合もあります。

例えば垂直性骨欠損ではなく、水平に歯槽骨が溶ける「水平性骨欠損」が起きている場合は、歯石除去だけでも症状を改善することが可能です。

大切なのは再生療法ありきで治療を考えるのではなく、最終的な患者様のお口の健康を見据えて、適切な治療を選択することです。

そのためには極めて慎重で、正確な検査が必要になります。

院長 奥田

せっかく再生療法の実績がある歯科医師を見つけても、患者様の症状次第では別の治療法を模索しなければならないということです。

適切な治療法の提案には、歯科医師側の知識と技術、経験が必要です。

患者様との信頼関係がなければ再生療法は成立しない

第三のデメリットは患者様との信頼関係がなければ再生療法は成立しないという点です。

歯周外科処置を行うほど歯周病が進行している患者様は、大なり小なり全ての歯が病気にかかっています。

再生療法を施すには、その前に歯周病の治療をしなければなりませんが、全ての歯の治療を終えるには相応の時間と費用がかかります。

例えば3本の歯にゴアテックスGTRメンブレンを用いた再生療法を施す場合、初診から施術が終わるまでの間に、おおよそ6ヶ月と15万円程度がかかります(あくまでも目安です)。

しかも再生療法後に実際に歯などが再生するまでは、さらに時間と費用が必要です。したがって患者様には長年にわたって、通院してもらわなければなりません。

そのためには「この歯科医師は患者のために、誠実に治療に向き合ってくれる」という患者様からの信頼と、「この患者様は真摯に治療と向き合い、通院し続けてくれる」という歯科医師からの信頼が不可欠です。

さもなければ、再生療法を最後まで全うすることはできないのです。

院長 奥田

残念ながら、短期的な対症療法としての治療を施す歯科医師は少なくありません。そうした歯科医師では、再生療法を完遂するのは難しいんです。

まとめ

適切な歯周病治療を行うためには、知識や技術だけでなく、歯科医師としての姿勢も重要になります。

お口全体の健康を考えたうえで治療方針を決められる歯科医師でなければ、いたずらに患者様のお口の健康を脅かすことにもなりかねません。

歯周病治療を受ける際は、プロとしての責任を持って、お口の健康と向き合ってくれる歯科医師に診てもらうようにしてください。

院長 奥田

元来、歯科治療というのは歯科医師と患者様の二人三脚ですが、再生療法においてはその性質がより色濃くなります。

そのため、より慎重に歯科医院を選ぶことをおすすめします。

診療内容

当院について

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院長紹介

奥田 裕太

1982年生まれ。大阪十三で「おくだ歯科医院」を経営。大切にしているのは「患者様と一緒に悩み、一緒に成長し、笑える、二人三脚の治療」。

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