デンタルコラム

インプラント治療の歴史

インプラント治療について

みなさんは日本のインプラントの歴史が始まったのはいつ頃か知っているでしょうか。

戦後?それとも高度経済成長期?いずれも間違いです。答えは1983〜1990年頃。2019年現在で、30年程度の歴史しかありません。

そのため教育面で日本のインプラント治療は遅れており、歯科医師から見ても患者様側のリスクが高くなってしまっています。

だからこそ、歯科医院選びは患者様自身がお口の健康を守るためのカギとなるのです。

ここでは世界と日本のインプラントの歴史を通じて、なぜ歯科医院選びがそこまで重要になるのかを解説したいと思います。

目次
  1. 欧米のインプラントの歴史
  2. 日本のインプラントの歴史
  3. まだまだ未熟な日本のインプラント教育
  4. インプラントをする際は歯科医院・医師の実績をよく見てください

欧米のインプラントの歴史

現在インプラント治療に使われるインプラントは、チタン製のものが主流になっています。

しかしチタン製インプラントが一般的になったのは、実は1965年頃から。しかも「歯のインプラント治療にはチタンが適している」とわかったのは、偶然がきっかけでした。

1952年、スウェーデンの整形外科医であったペル・イングヴァール・ブローネマルク博士はスウェーデンのルンド大学医学部でとある実験をしていました。

ウサギのすねにチタン製の生体顕微鏡をとりつけ、骨の治癒過程で骨髄がどのような役割を果たしているかを観察するという実験です。

観察が終わり、博士がこの生体顕微鏡を取りはずそうとしたときのことです。なんとチタンと骨ががっちりとくっついていて、外せなくなっていたのです。

それまで他の金属で同じような現象は起きませんでした。博士はその後もチタンと骨の関係について興味を持ち、検証を繰り返します。

結果、チタンと骨が結合する現象「オッセオインテグレーション」を発見。歯のインプラント治療に革命を起こしたのです。

最初にチタン製のインプラント手術を受けたのは、ブローネマルク博士の友人でした。

1965年に埋め込まれたそのインプラントは、2006年までの約40年間、問題なく機能したとされています。

院長 奥田

当時の技術で40年間機能したというのは、本当にすごいことです。

日本のインプラントの歴史

一方、日本のインプラントの歴史はブローネマルク博士の発見から13年後の1978年にようやくスタートします。

パイオニアとなったのは大阪歯科大学の川原春幸教授らでした。

しかしこのとき使用されたインプラントは人工サファイア製。チタンのように骨と結合させることはできませんでした。

そのため、周囲の歯にインプラントを固定しなければならなかったり、インプラントが折れてしまったりと、「インプラントは危ない」という悪いイメージを広めてしまうこととなります。

ブローネマルク博士のチタン製インプラントが日本に普及し始めるのは、1983年以降。

当時東京歯科大学の助教授であった小宮山弥太郎先生が、スウェーデンのブローネマルク博士のところに留学し、日本に現在のインプラントの考え方や手術の方法を持ち帰ってからのことです。

とはいえ、そこからチタン製インプラントが一般化するまでの道のりも平坦ではありませんでした。

なぜなら人工サファイア製インプラントによるマイナスイメージにより、当時の大学はインプラントに否定的だったからです。

そこで小宮山先生は大学病院を辞職し、1990年に自ら日本初のインプラントセンター「ブローネマルク・インテグレイション・センター」を開業。

チタン製インプラントの普及のため、現在にいたるまで力を尽くされています。

まだまだ未熟な日本のインプラント教育

日本におけるチタン製インプラントの歴史がスタートしてから30年。インプラント手術もかなり普及してきました。

しかし1992年から(※)30年弱インプラント治療を手がけてきた当院から見ると、今の日本のインプラント治療には大きなリスクを抱えていると言わざるを得ません。

たしかにチタン製インプラントは一般の歯科医院にも広がりを見せ、多くの治療例や長期間の経過も報告されるようになりました。

インプラントの発祥国であるスウェーデンをはじめ、諸外国での手術成功率と日本での手術成功率に差がないことも明らかになっています。

しかしインプラント教育に関しては、あまりにも未熟です。

大学での講義自体は2000年初め頃からスタートしていますが、実習レベルのカリキュラムが取り入れられたのは2010年以降。

つまり2019年現在で30代の若い歯科医師でさえ、大学で実習レベルのインプラントの研修を受けていないのです。

40代以上の歯科医師になると、座学すら受講していない可能性もあります。

ではどこでインプラントの知識や技術を学ぶのかというと、インプラントを販売するメーカーや歯科の先生が主催する勉強会です。

ところがこの勉強会が文字通り玉石混交で、半年から1年間みっちり研修を受けなければ認定を受けられないものもあれば、1〜2日間程度で認定が出るものもあるのです。

どちらが正しいスキルを身につけられるかは、言うまでもありません。

院長 奥田

私の父、奥田裕司前院長は1992年に小宮山先生の講座を受講。認定を取得しています。

インプラントをする際は歯科医院・医師の実績をよく見てください

今の日本のインプラント教育では「週末にインプラントの講座を受けて、休み明けから早速手術を担当する」といったケースも十分起こり得ますし、実際に起きています。

これではインプラントの失敗例が増えるのもしかたありません。

しかし歯科医院の看板を見ただけでは、その歯科医院や歯科医師がどんな勉強をしてきて、どんな実績を積んできたのかはわかりません。

したがって、自分のお口の健康を守るためには、患者様自身で歯科医院と歯科医師本人の実績をあらかじめよく調べ、信頼に値するのかどうかを慎重に検討してもらうしかないのです。

私たち人間は基本的に死ぬまで口から食べ物を食べなければなりません。そのためお口の健康は人生の質を大きく左右します。

そして一生付き合っていくお口の健康を任せる相手こそが、歯科医院であり歯科医師です。

とりわけインプラント手術はコストもリスクも高く、術後のメンテナンスも非常に重要な治療です。

歯科医院選びはまさに生涯のパートナー選びと同じだと思って、慎重に行っていただければと思います。

診療内容

当院について

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院長紹介

奥田 裕太

1982年生まれ。大阪十三で「おくだ歯科医院」を経営。大切にしているのは「患者様と一緒に悩み、一緒に成長し、笑える、二人三脚の治療」。

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