みなさん、こんにちは。大阪・十三のおくだ歯科医院、院長の奥田裕太です。
4月29日、大阪の千里ライフサイエンスセンターで開催された「2024年度 第1回 JACP(日本臨床歯周病学会)関西支部教育研修会プログラム」に、スタッフ一同で参加してきました。
早いもので、私が臨床歯周病学会の認定医を取得して5年。今回の研修会のタイミングで、初の更新を迎えました。
歯周病を専門分野としているので当然ではありますが、認定医資格の更新には、継続して研修会に参加し、歯科医師として知識と技術を磨き続けている必要があります。
今回の研修会は、私と同世代の先生方の発表も多く、資格更新のタイミングであったことも重なり、たくさんの刺激を受けることができました。
研修会で主なトピックとなったのは、
- 歯科衛生士による歯周治療
- 歯周組織再生療法
- 咬合再構成
の3つです。
以下では研修会の内容に触れながら、これらのトピックについて、当デンタルコラムをお読みの患者様にもわかりやすくご紹介したいと思います。
「歯科衛生士による歯周治療」の可能性
先日の関西支部教育研修会プログラムでは、大阪・中之島のDUOデンタルクリニックで歯科衛生士を務める山下優子さんが、「全顎的な歯肉増殖を伴う重度歯周炎に罹患した 青年期患者に対し歯周治療を行った一症例」というテーマでプレゼンをされていました。
「全顎的な歯肉増殖」とは、お口の中全体で、歯肉=歯茎が盛り上がっている状態を指します。
原因はいくつかありますが、そのうちの一つが重度の歯周炎。歯と歯茎の間にある歯周ポケットで歯周病菌が繁殖し、炎症を引き起こすことで、歯茎がパンパンに腫れてしまうのです。
患者様のお口の状態にもよりますが、このようなケースでは歯科衛生士が治療の主役になる場合が少なくありません。
なぜなら、丁寧に歯石を取り除き、きちんと歯磨きができるよう指導をすれば、歯周病による炎症は治っていくからです。
歯科衛生士の仕事は、単なる「歯科医師のお手伝い」だけではない。技術を磨けば治療の主役にもなれる。
山下さんのプレゼンテーションは、そんな歯科衛生士の可能性を改めて感じさせていただけるものでした。
歯周組織再生療法について
歯周組織再生療法とは、中等度・重度の歯周病によって失われた歯を支える骨などの組織を再生させる治療方法です。
私たちの体内の骨は、毎日のように生まれ変わっています。
これは破骨細胞という骨を破壊する細胞と、骨芽細胞という骨を作る細胞がバランスよく活動しているからです。歯や歯を支える骨(歯槽骨)も同じです。
しかし歯周病が進行すると、何らかのメカニズムでこのバランスが崩れ、破骨細胞が優勢になります。
作られる骨の量より、壊される骨の量が多くなるため、結果として歯槽骨が溶けていき、歯が抜け落ちる原因となるのです。再生療法では、失われた組織を人工的に再現し、歯を支える機能を回復させます。
先日の関西支部教育研修会プログラムでは、のぶとう歯科医院の宮谷史太郎先生が「骨外科処置の重要性を考えさせられた一症例」というテーマで、宮前歯科クリニック/千里ペリオインプラントセンターの中村弘幸先生が「病態に応じた垂直性骨欠損へのアプローチ」というテーマで、歯周組織再生療法に関するプレゼンをされていました。
いずれもとても勉強になるプレゼンテーションで、興味深く拝聴させていただきました。
咬合再構成とデジタル技術
先日の関西支部教育研修会プログラムで、教育講演として行われたのが、タニオ歯科クリニックの谷尾和正先生による「咬合再構成におけるデジタルの活用法 -歯周治療での活用、優位性-」でした。
咬合再構成とは、歯の噛み合わせ(咬合)を改善するための総合的な歯科治療です。
歯ぎしりや食いしばりなどによって歯が摩り減ってしまった患者様や、上下の噛み合わせが悪い(不正咬合)患者様、虫歯や歯周病、事故などが原因で歯が抜け落ちたり、欠けたりしている患者様に対して行われる治療の一つが咬合再構成です。
噛み合わせを改善する治療方法というと、一般的には歯列矯正のイメージが強いかもしれません。しかし咬合再構成では歯列矯正以外に、以下のような治療も組み合わせていきます。
- 歯冠修復:歯の形態を回復するために、被せ物(クラウン)や詰め物(インレー・アンレー)を装着します。
- 補綴治療:欠損歯を人工歯(インプラント、ブリッジ、入れ歯)で補います。
- 歯周治療:歯周病によって失われた骨や歯肉を回復させます。
谷尾和正先生の講演では、この咬合再構成にデジタル技術を組み合わせた診療方法が紹介されていました。
診療のデジタル化に関しては、おくだ歯科医院も積極的に実施してきた取り組みですから、谷尾和正先生のお話も大変勉強させていただきました。
と同時に、歯周病学会でもついにデジタルの話をしないといけない時代になったのだな、と考えさせられた1時間でもありました。
まとめ
歯科に限らず、医療従事者の仕事というのは「生涯、勉強」です。
そもそも日々の治療の現場が勉強の連続であり、私に関して言えば毎月のように学会や研修会、勉強会があり、その都度診療の合間を縫って、準備や勉強を積み重ねています。
6月15日と16日には臨床歯周病学会の第42回年次大会が大阪の国際会議場で開催されるため、関西支部では準備に追われています。
当院のスタッフで臨床歯周病学会の指導衛生士である太田も実行委員を務めており、毎月遅くまで会議に参加するなど頑張っています。
大会のテーマは「大阪・関西Perio万博2024年 未来へと繋ぐペリオ・インプラントの最前線」。
スペシャルゲストにはフリーアナウンサーの森たかしさんと元阪神タイガースの投手、藪恵壹さんを迎える予定です。
16日には、一般の方も参加できる市民フォーラム「知らないと損!歯周病とからだの病気の意外な関係」も開催。

かすもり・おしむら歯科の押村憲昭先生が歯科医師からの視点を、糖尿病専門医である南晶江クリニックの前田泰孝先生が内科医からの視点でお話をされます。
時間は14時から2時間。先着350名限定となっています。参加は無料ですので、興味のある方は、ぜひともご参加ください。

学会の際は、たびたびお休みをいただき、ご迷惑をおかけしております。毎月の学会、日々の治療の現場で学んだ知識・技術は、コツコツと積み重ね、整理をして、患者様に還元させていただいておりますので、ご理解いただけましたら幸いです。